
| なお「生産枠」は2027年分までビッチリ埋まることに |
フェラーリほど理想的な成長を見せる自動車メーカーも数少ない
高級スーパーカーの代名詞であるイタリアのフェラーリ(Ferrari N.V.)が2026年第2四半期(Q2)の財務成績を発表することに。
世界的な経済の不透明感や一部地域での市場減速が叫ばれる中、フェラーリは「出荷台数を減らしながらも売上と利益を大きく伸ばす」という、一般的な自動車メーカーでは考えられない脅威のビジネスモデルを見せつけており、株価はこれに反応して12.04%上昇しています。
なぜフェラーリは台数が売れなくても利益を伸ばし続けることができるのか?その裏側にあるパーソナライゼーション戦略や製品ミックスの最新動向、そして2026年通期の見通しについて見てみましょう。
【この記事の要約】
- Q2純売上高は8.4%増の19億3,800万ユーロ:2026年第2四半期(4〜6月)の売上高は前年同期比8.4%増(固定為替レートベースでは10.6%増)の19億3,800万ユーロ(約3,100億円)に達し、力強い成長を維持。
- 出荷台数は微減も営業利益率は31.2%を記録:新モデルへの切り替え期に伴い出荷台数は3,366台(前年同期比128台減)とやや減少したものの、営業利益(EBIT)は6億500万ユーロ(前年比10%増)へ拡大し、業界常識を覆す超高収益体質を証明。
- パーソナライゼーション(カスタム)が収益を牽引:車両・スペアパーツ売上の20%以上を特注(テーラーメイド)やビスポークオプションが占め、台数を追わずに1台あたりの粗利を極限まで高める戦略が爆発的な成果を結実。
- 2026年通期見通しを上方修正:オーダーブック(受注残)はすでに2027年分まで埋まっており、圧倒的な需要と収益力の強さから2026年通期の業績予想(ガイダンス)を引き上げ。

「台数頼み」脱却の究極形:パーソナライゼーションと車種ミックスのシナジー
フェラーリが発表した2026年第2四半期決算のハイライトにおいて、最も注目すべきは「出荷台数と売上・利益の逆転現象」で、当四半期の総出荷台数は3,366台となり、前年同期の3,494台から128台(約3.7%)減少しています。
これは『SF90 ストラダーレ』や『812 スーパーファスト』などのモデルチェンジに伴う計画的な端境期(生産移行期間)によるものだとされていますが、フェラーリはこの2年ほどで生産台数の伸びが(それまでに比較して)ほぼゼロに近いレベルにとおどまっており、しかしオーダーブックが「満杯」であることを考慮すると、フェラーリは「意図的に販売台数を絞り、今後もその傾向を強めてゆく」ものになるのだと考えられます。
そしてこの「販売台数減少」につき、通常であれば減収減益に直結する局面ではありますが、しかしフェラーリは営業利益(EBIT)で前年同期比10%増となる6億500万ユーロを叩き出し、EBITマージン(営業利益率)は驚異の31.2%を達成した、と発表しているわけですね。
【Q2出荷台数】 3,366台(前年同期比 -3.7%)
【Q2純売上高】 19億3,800万ユーロ(前年同期比 +8.4%)
【Q2営業利益】 6億500万ユーロ(前年同期比 +10.0%)
この驚異的な業績を引き揚げた主因は、オーナーが自身のフェラーリを唯一無二の1台に仕立て上げる「パーソナライゼーション(カスタムプログラム)」の爆発的な需要だといい、車両・スペアパーツ売上の20%以上をこのパーソナライゼーション(テーラーメイド)が占めていて、これが1台あたりの平均単価を押し上げているということに。

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参考までに、ランボルギーニがつい先日発表した2026年「上半期」の決算概要は以下の通りで、期間の相違はあれど、フェラーリのほうが「約10%も」利益率が高いことには驚かされます。※ランボルギーニの数字もずば抜けて優秀である
- 売上高:17.4億ユーロ(前年同期比 +7.4% / 過去最高)
- 営業利益:3億9,500万ユーロ(営業利益率 22.7%)
- 世界納車台数:5,422台(前年同期比 -4.6%)
- 受注状況:全ラインナップを通じて平均約1年先までのバックオーダーを保有
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財務実績:概要
フェラーリ 2026年第2四半期 財務実績サマリー
主要財務ハイライト(2026年Q2)
| 項目 | 2026年Q2実績 | 前年同期比(YoY) | 備考 |
| 出荷台数 | 3,366 台 | -3.7% | モデルチェンジに伴う計画的減算 |
| 純売上高 | 19億3,800万ユーロ | +8.4% | 為替一定ベースでは +10.6% |
| EBITDA | 7億5,500万ユーロ | +7.0% | EBITDAマージン 39.0% |
| 営業利益(EBIT) | 6億500万ユーロ | +10.0% | EBITマージン 31.2% |
| 純利益 | 4億6,300万ユーロ | +8.9% | 希薄化後EPS 2.62ユーロ |
| フリーキャッシュフロー | 2億7,600万ユーロ | +39.2% | 産業用FCF |
地域別および主要モデルの貢献度
- 地域別:欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域でのデリバリーが堅調に推移し、成長を牽引。
- 貢献モデル:V12フラッグシップ『12Cilindri(ドーディチ・チリンドリ)』の納車が軌道に乗り始めたほか、『Purosangue(プロサングエ)』や特別限定モデル『296 Speciale』ファミリーの好調が収益性を強烈に押し上げる。

他のラグジュアリーブランドとの比較
多くの量産自動車メーカーがEV需要の減速や価格競争、関税リスクに苦しむ中、フェラーリの「供給制限とブランド価値の最大化」を徹底するビジネスモデルは他社とは一線を画すもの。
一般的なプレミアムカーブランドの営業利益率が5〜10%程度、超高級カーブランドでも15〜20%前後であるのに対し、フェラーリの31.2%という利益率は、もはや「自動車メーカー」というよりも「ハイエンド・ラグジュアリーメゾン(ルイ・ヴィトンやエルメスなど)」に近い領域ともいえるレベルにありますが、上で比較対象として挙げたランボルギーニも(フェラーリに劣るといえど)自動車メーカーとしては突出した存在です。※ランボルギーニは自社を”自動車メーカー”ではなく”ハイエンド・ラグジュアリーメゾン”と同等の存在だと強調
両者に共通するのは「販売(生産)台数を意図的に制限しても売上高を伸ばし、利益率を向上させることができ、さらにオーダーブックが1年以上先まで埋まっている」ということで、これができるのは自動車業界広しといえどフェラーリとランボルギーニくらいのものなのかもしれません(ケーニグセグやパガーニもオーダーブックがずっと先まで埋まっているが、それは意図的な生産制限というよりは生産能力に起因するものである)。
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フェラーリ「私たちは会社を成長させたいと思っていますが、それは販売台数を増やすという意味ではありません」。あくまでもフェラーリは1台あたりの利益向上を目指している
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参考までにですが、一昨年末にフェラーリ本社を訪問したところ、工場では「プリプロダクションモデル以外は」生産しておらず、つまり工場はほぼ稼働していない状態だったのですが、そのときぼくが思ったのが「意図的に生産を休止しており、出荷台数を絞っている」ということ。

フェラーリは特殊な自動車メーカーであり、通常であれば「販売台数が増える」のは喜ばしいことではあるものの、フェラーリの場合は「販売台数が増えると」希少性が損なわれるとして投資家から非難される傾向にあり、よって「年末に(その年の)集荷台数を調整すべく」生産を行っていなかったんじゃないかとも考えているわけですね(つまり、作ろうと思えばもっと作ることができたはずであるが、生産台数を増やすとむしろ株価にマイナスとなるために意図的に工場を動かしていない)。
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2027年まで埋まる受注残と「フェラーリ初のEV」への期待
フェラーリの強みは、当期の業績だけでなく「将来の利益が約束されている」点にあり、今回の発表によると同社のオーダーブック(受注残)は2027年通年分までほぼ完全に埋まっている状態です。
これにより、短期的な世界経済の変動に対しても極めて高い耐性を備えていると言え、それはコロナ禍においても、他社のように業績が悪化しなかったことからも理解ができようというものですね(そしてこれはランボルギーニも同様であった)。
フェラーリは「100%受注生産」なのでこういった”並外れた”体力の強さを誇ることができるのですが、それはいかなる状況になろうとも「買い控えが影響しない」という事実を意味します(他の自動車メーカーだと、景気が悪くなると買い控えが発生するものの、フェラーリの場合はそうではなく、将来の販売が確約されている)。※リーマンショックの際にはけっこうキャンセルが生じたと聞いているが、コロナ禍ではキャンセルが出なかったといい、顧客の体力もより強くなっているのかもしれない

さらに今後の注視ポイントとして、フェラーリは伝統のV8/V12内燃機関やハイブリッド(PHEV)に加え、同社初となるフル電気自動車(BEV)、ルーチェの市場投入に向けた準備を着々と進めているといった状況で、電動化時代においても「フェラーリらしいエモーショナルな走り」と「圧倒的な排他性(希少価値)」を両立できるのかどうかに世界中のコレクターや投資家から熱い視線が注がれている、というのが現在の状況となっています。
結論
フェラーリが示した2026年第2四半期の決算は、単なる業績好調にとどまらず、高級車ビジネスにおける「希少性とカスタマイズが生み出す価値」の凄まじさを改めて世界に見せつける結果となり、台数を追うことなく、オーナー独自の特別仕様(パーソナライゼーション=テーラーメイド)に情熱を注ぐことで利益率を最大化させるという戦略が完全に勝利を収めたことが明らかに。
2026年の通期業績見通しの上方修正、そして2027年まで続く強固な注文残を背景とし、躍進を続ける跳ね馬の勢いはしばらく止まる気配がなさそうですね。
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参照:Ferrari











