| とにかくGRスープラの「価格が高い」ということに尽きると思う |
トヨタはBMWとの共同開発を行うべきではなかった
さて、トヨタの北米法人が2024年第1四半期の販売状況について公開していますが、その中で明確になっているのがプリウスを筆頭とするハイブリッド勢の躍進。
一方でGRスープラの不振が大きく目立っており、前年同期比で44.1%減(484台)というレベルにまで落ち込んでいます。
なお、GRスープラはそのデビュー当初大きな話題を呼び、日本でも中古市場においてプレミア価格とともに取引されていたことが記憶に新しく、しかし2021年の年間販売台数(6,830台)をピークに2022年では4,952台、2023年では2,652台へと大きく下がり続け、このペースだと今年は2,000台を割る可能性も見えてきます。
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一方のフェアレディZはGRスープラの販売を上回る
一方でこういった状況を尻目に、新型フェアレディZの販売は2023年第1四半期の466台から2024年第1四半期では671台へと44.4%増加し、「はじめて」スープラの販売を上回ることに。
フェアレディZのデリバリーは様々な事情によって思うように進んでいないと聞きますが、その状況でスープラを凌駕するということは「今後に期待が持てる」可能性も見えてきます。
こういった明暗が分かれた要因は「価格」だと見られており、フェアレディZは400馬力を発生する3リッターV6ターボエンジンを搭載し現地価格は43,450ドルから、しかしGRスープラは(ベースモデルだと)2リッター4気筒エンジン(255馬力)を搭載し価格は47,535ドル。
つまりスペック的にはフェアレディZのほうがずっと上、しかし価格はフェアレディZのほうが4,000ドル(約60万円)も安いため、やはりフェアレディZに人気が集まるのも無理はないのかもしれません。
いったいなぜGRスープラは「期待外れ」となったのか
こういった事情につき、「GRスープラは期待外れであった」と言わざるを得ませんが、そうなった理由としてはやはり「(ぼくも世間一般と同じく)価格が高かった」というひとことに尽きるのだと考えています。
発売当初からその価格の高さが指摘されており、とくにアメリカだとフォード・マスタングやシボレー・カマロ、ダッジ・チャレンジャーなどのアメリカンマッスルに比較しても割高で、「いったい誰が買うのか」という話もよく聞かれたわけですね。
ただ、この価格の高さについては、トヨタが「ぼったくっている」わけではなく、BMWとの共同開発というところに理由があり、つまりは「BMW品質で」開発や設計、製造が行われているために(実際の製造はマグナ・シュタイヤーですが)どうしても価格が高くなってしまったという実情も。
当時トヨタは直6エンジンを時前で用意できず、しかし「スープラ」は直6エンジン搭載でなければならないという理由から(直6エンジンを持つ)BMWとの共同開発に至ったという経緯がありますが、これが結果的にうまく機能しなかったと考えていいのかもしれません。
そしてトヨタはGRスープラ発売直後からこの問題を認識していたと見え、よって当初は「北米市場には導入の予定がない」とされていた(価格を抑えた)4気筒モデルを北米市場に投入したり、6気筒モデルの出力を大きく向上させたり、マニュアル・トランスミッションを追加したりしつつも根本的な改善策には至らず、つまりコストパフォーマンスを改善できなかったということに。
一方のフェアレディZについては、その外観こそ刷新されているものの、日産はZ34をベースに新型フェアレディZを開発しており(よって形式も同じZ34であり、実質的に新型フェアレディZはZ34のマイナーチェンジ版である)、つまりはコストを抑えて「見栄えが良く(古い世代にも新しい世代にもアピールできる)、パワフルで、しかも割安な」クルマを作ることに成功していて、ここが運命の分かれ道であったのかもしれません。
当時「スープラには直6」という絶対条件があったことは理解できるものの、結果的に4気筒モデルを導入したことを鑑みるに、そしてほとんどの人は直6エンジンにこだわりを持っているわけではないと思うので(こだわりがあるとすれば、直6ではなく”2JZ”に対してであろう)、トヨタは当初から直6という絶対条件を排除し、より手頃なスポーツカーを開発することにプライオリティを置いたほうが良かったのではないか、と考えています。
実際のところ、むしろBMWとの共同開発によって「直6を守った」というポジティブ評価よりも、「BMWに開発を委託してBMWに魂を売った」というネガティブ評価がなされることが多く、やはりBMWとのジョイントは「失敗だった」のかもしれませんね。
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参照:Toyota