| ハイブリッドシステムとマニュアル・トランスミッションとは、その思想、ロジックともに「非常に相性が悪い」とされてきた |
トヨタはどんな時代であろうとも自動車愛好家を魅了し続ける
さて、将来的に自動車がEVへとシフトすればマニュアル・トランスミッションが絶滅すると見られており、それは「エレクトリックモーターの出力は回転数に依存せず、そもそもトランスミッションそのものが不要」であるため。
ただしハイブリッドカーであればガソリンエンジンを搭載し、これを主な動力源としているためにトランスミッションは基本的に「必要な構成パーツ」でもあります。
しかしその場合であっても「マニュアル」である必要はなく、さらに言えばオートマチック・トランスミッションでないと制御が非常に難しくなり、むしろマニュアル・トランスミッションを組み合わせることは技術的に極度に困難だとされています。
ただしトヨタはハイブリッドにもマニュアル・トランスミッションを?
しかしながら今回報じられているのが「トヨタがハイブリッド車向けのマニュアル・トランスミッションに関する特許を出願した」という事実。
なお、トヨタはエレクトリックモーターの制御にマニュアル・トランスミッション風の制御を取り入れ、ガソリンエンジンのトルク / パワー特性を再現した擬似トランスミッションに関する特許を出願していますが、今回の「ハイブリッド車向けのマニュアル・トランスミッション」は、”内燃機関とエレクトリックモーターの相互作用と、トランスミッションへの要求事項を管理するもの”だとされ、つまるところフェイクではなく実際にクラッチとギアを備える変速機です。
トヨタのハイブリッド車用マニュアル・トランスミッションはこう動作する
今回の特許を見てみると、これはシャトルバルブと複数のクラッチシリンダーからなる”かなり”複雑なトランスミッションで、ドライバーはマニュアルミッションとほぼ同じ感覚でギアを選択することが可能になるとされています。
なお、オートマチック・トランスミッションは「クルマ(コンピューター)がギアを選ぶ」ものですが、マニュアル・トランスミッションは「人がギアを選ぶ」ものであり、従来のハイブリッド車(当然オートマチック)はクルマ側が状況に応じてトランスミッションを制御していたもの。
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これによってエンジン出力に合わせたエレクトリックモーターの介入(あるいはその逆)を電子的に制御していたわけですが、マニュアル・トランスミッションだと制御の起点が「人の選ぶギア」となってしまうので、そこにどうエレクトリックモーターの介入を合わせるかが課題となります。
今回の特許であれば、クラッチとECUとが接続されており、これがガソリンエンジンとエレクトリックモーターとのシームレスな切り替えをサポートすることになるのですが、惰性で走行しているとき、あるいは発進するときに、コンピューターがクラッチを効果的に踏み、必要なときにエレクトリックモーターが介入できるようにするというロジックを持っています。
ただし「マニュアル・トランスミッション」というからにはドライバーは「常に」クラッチ操作を行うことができ、クラッチの断続やエンジン出力にあわせてエレクトリックモーターが介入を行うことに。
この状態だと、「最適な燃費と効率を達成するため」にハイブリッドシステムが働くのではなく、ドライバーが選んだギア、およびその時のエンジン出力に対応してエレクトリックモーターがアシストするという状況となり、言うなればエレクトリックモーターはターボチャージャーのような「過給機的」な役割となるのかも。
なお、クラッチをECUと切り離し、トランスミッションがクラッチペダルのみに接続されるドライビングモードも選択できるそうですが、今後はスポーツカーといえどもハイブリッド化の道を避けることはできず、よって「GR86がハイブリッド化された暁には」この特許を実現したシステムが搭載されることになるのかも。
現在トヨタは社長が交代したところではありますが、豊田章男氏が社長職を離れたことで、むしろ(豊田章男氏が)自由にGRブランドと関わることができ、それによってさらなるGRモデルが登場するという報道も見られ、トヨタは「トヨタの考える」独自の方法によって、自動車がどう変わってゆこうとも自動車愛好家を魅了し続けたいと考えているようですね。
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