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間違いなく購入検討リスト入り。ルノー・メガーヌRSに試乗する

2015/11/14

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ルノー・メガーヌRSに試乗。
なお「RS」はレーシング・スポーツではなくルノー・スポールの略(RSではなくR.S.が正しい表記)です。

車体サイズは全長4320、全幅1850、全高1435ミリ。
重量は1430キロ、エンジンは2Lターボで265馬力を発生。
価格は396万円です。

トランスミッションは6MTのみという硬派な車で、新型シビック・タイプRが登場するまでは「FFでニュルブルックリンク最速」の座を保有していたことでも有名(正確に言うと記録を保持してたのは275馬力で軽量バージョンであるメガーヌRS”トロフフィーR”)。

なお現行のルノー・メガーヌRSが登場したときに(2011年)ぼくは一度試乗していますが、そのときの印象はさほど良くありません。
正確に言うならば、そのポテンシャルは非常に高いことがわかるものの、日常性をやや欠く部分がある、操作系や細部の仕上げにちょっと納得が行かない部分がある、というものでした。

今回は二度目のメガーヌRSの試乗となりますが、結論から言うと「購入検討リストに確実に入る」という印象の良さで、以前に感じたネガティブな部分が完全に消え去り、第一級のパフォーマンスと日常性、そしてドイツ車並みの品質を備えた車に成長していると断言できます。

ルックスに関しては大きな変化は無いもののルノー最新のデザインに変わり、ヘッドライト内部構造がちょっと変わたり内部にF1エアインテークブレードと同様のデザインを持つパーツが装着されていたり、とデザイン性がかなり高くなっているように思います。
なおルノーは世代ごと、もしくは同一世代でも途中で大きくデザインを変えてくる傾向があり、メガーヌやルーテシアといった主力モデルでも世代ごとにかなり印象(ときにはターゲットも)が異なるのが特徴。

メガーヌは本国や欧州ではシロッコと比較されることが多いそうですが、シロッコのロングルーフ(180センチある)に対してこちらはショートルーフ。
しかしながらルーフエンドのスポイラーはさほど大きくないのに40キロものダウンフォースを発生するとのこと(ボルテックス・ジェネレーターもついている)。
なお40キロというのはかなり大きな数字で、これは通常だと「ウイング」でないと発生できない数値でもあり、しかしスポイラーでこれを発生するというのはF1に参戦するルノーならではですね。

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なおエアロダイナミクスという点においてはアンダーボディも非常に高い機能を誇っており、フロア下に入った空気をより多く排出するために(裏面を覗くと)リアアクスルあたりから段差がつけられディフューザーに連続(もちろんフラットボトム)。
これもF1参戦チームならではの設計で、一見ディフューザー形状をしていてもフロア下がフラットでなかったり、パネルが取り付けられていても空気の流れが連続しない構造になっているような「ファッションとしての」デフューザーとは一線を画しています。
そう考えるとサイドの入り組んだ形状も何か意味があるのかもしれません。

ドアを開けると、異様に低いレカロのシートが目に入ります。
乗り込んで腰を下ろすと他では見ないレベルに「寝かされた」メーターが目に入り、カーボン(風?)の加飾や赤いステッチなど、通常のメガーヌとは異なるフィニッシュが見られ、やはりこのモデルは「通常モデルとは異なる」ということが直感的にわかるようになっていますね。
ステアリングのセンターにもアクセントがありますが、これはポルシェのような「別生地」ではなく刺繍によって入れられており、そのシンプルさが好印象。

なおメガーヌRSは上述の通り「ルノー・スポール」を表すわけですが、ルノー・スポールはルノーのモータースポーツ部門であり、F1参戦はもちろん、メガーヌRSのようなスポーツモデルの生産も行っています。
つまりルノー・メガーヌは通常のルノーの乗用車向け生産ラインで作られた車ではなく、モータースポーツ部門が製造した車であり、メガーヌのスポーティーバージョンではなく、「メガーヌRS」という独立した車種だと捉えて良いかもしれませんね。

エンジンを始動させますが、これは意外と静か。
アイドリングにおいても室内にはほぼ音は入ってこず、しかし心地良い振動を感じます。
ぼく的に関心したのはこの「心地良い振動」で、エンジンの鼓動を室内に伝えれば気持ちよくなるものではない、ということ。
車体剛性やエンジン取り付け部の剛性が低いとブルブルと車体全体が振動したり共振したりして「ビート」が感じられないわけです。
ですがメガーヌRSに関しては、シリンダーの中のピストンの動きが感じられるほどに正確なリズムかつ共振もビビリもない鼓動を伝えており、エンジンの鼓動は感じるのに車体自体は微塵も震えているように感じないという印象で、こういった車はちょっと他には思いつきません。

クラッチを踏んでギアを入れますが、クラッチはけっこうストロークがあり重い部類。
ただし剛性感は高くミートするポイントもはっきりわかります。
アイドリング状態でもエンストすること無く車がスタートするので、かなり実用性の高いエンジンと言えます。
クラッチが繋がったとたんに車がぐっと前に出るので(ガツンと繋がる)、かなり圧着力は高い様子。

ステアリングも現在の車、たとえば現行のポルシェやアウディ、ランボルギーニと比べると重い部類で、全ての操作系の重厚さが逆に「他の車にはない感覚」を出しているのも事実です。

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サスペンションはかなり硬いですが突き上げがきついという印象はなく、しなやかと言っても良いでしょう。
ただしストロークは短くダンピングはかなりハード。
試乗中も路面に吸い付く印象がありながらも時折跳ねるほどの硬さです(メガーヌRSのサスペンションは本国では二種類あるが、日本仕様は硬い方の”カップ”サスペンションが装着)。

それでも全く不快感を感じずに安心して運転できるのはさすがにルノー・スポールならではですが、これにはレカロのシートも大きく貢献していると考えられます。
ルノー・スポールはサスペンションとシートを同時設計することで知られますが、つまり「ドライバーに与えるインフォーメーション」をコントロールしているということになりますね。
クラッチやシフトも重い操作感ではありますが、シートの構造や硬さがそれに対応しており、確実な操作が可能に。

ベース車のサスペンションを交換してシートを交換すると色々なところがチグハグになったりするわけですが、サスペンションやトランスミッション、シートの開発を統合して行い、そして車両そのものの製造すら行うというルノー・スポールだからこそ実現できたこととも言え、そう考えると396万円という価格は安いのかもしれない、と思います。

なおブレーキはブレンボですが、これは曙ブレーキのライセンス生産による「左右合わせ式」ではなくモノブロックのキャリパー。
よって効きは抜群であり、かなり扱いやすい制動力を持っています(カックンではなく踏力によってコントロールでき、停まりたいところに車を停めることが可能)。

結構な速度で、かついろいろな状況で試乗させていただきましたが、どんな状況でも相当に高いスタビリティと安心感を持つ車で、アクセルを床まで踏み込んでの加速や急ブレーキでも姿勢は乱れず、カーブの連続する場面でも姿勢はビタリと安定しています。
このあたりエンジン始動時に感じた高いボディ剛性が寄与しているのだと思いますが、高い速度域になればなるほど安心感も増すような印象であり、タイムを詰めるにも楽しみながら(プレッシャーと戦うのではなく)走行できる車と言えますね。

最近の車は非常に高い制御技術のおかげで高い性能を誇り、かつ安全性、環境性能も高くなっています。
反面、アクセルはエンジンに、ステアリングはフロントタイヤに直結しているという印象が希薄になっており、まるでゲームのように「要求された操作=入力に対するアウトプットを忠実に行う」能力には優れますが、そのぶん楽しさは減ってきているのかもしれない、と感じることがあります。
アクセルを踏めば加速して、ステアリングを切れば曲がるのですが、それが現実味を欠いている(自分の操作によってではなく、ステアリングやアクセルといった”スイッチ”に反応して車が加速し、曲がっているような。うまく表現できませんが)感覚もあるのですね。
よってどこがギリギリなのか把握するのが難しいときがあり、それを超えたときの制御も難しくなっているのではないかと考えたりします。

しかしながらメガーヌRSは車の動きが自分の体の延長のように感じられ、意のままに操れる、そして確実なフィードバックを返してくれる車であり、車と「対話」しながら運転でき、自分のスキルを忠実に反映してくれる車と言えますね。

まだスキルが発展途上である人でも運転を楽しめ、スキルが十分に高い人でも同じように楽しめる車ではないか、という印象です(初期モデルはスキルが高くないと楽しめない印象があった)。

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なおエンジンのトルクは非常に強大で、そのため神経質さは感じられず、ズボラに運転しようと思えば2-3速に入れておけば街中ではたいていの状況に対応できます。
3速から(シフトダウンせずに)加速して追い抜きも可能ですし、2速でもガクガクすることなくスムーズに走ります。

試乗中にけっこう欲しくなってしまい、中古だとどれくらいで購入できるのかを調べてみましたが、2014年モデルだと諸費用込みで新車の車両本体価格と同じくらい、と結構高いようですね。
当時登場したばかりの2011年モデルだと260万円くらいの個体もありますが、これまでの熟成を考えると、やはり高年式を選びたいところ。

MTのみというところ、ドライバーの技量をそのまま反映させるというところ(ドライビングモードの変更などハイテクデバイスもない)、操作系が重いというところなど、もしかすると世代としては「旧い」考え方なのかもしれませんが、非常に高い魅力、そして最新モデルにはない楽しさを持つ車であることは間違いありません。
なおルーテシアはメガーヌのあとにフルモデルチェンジを受けて登場していますが、その(最新の設計と技術が反映された)ルーテシアRSがどのような挙動を見せるのかというのは非常に気になるところで、こちらも要試乗ですね。

これまでの試乗レポートは下記のとおり。
最新の試乗レポートはこちらにあります。

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