
Image:Alpine
| アルピーヌはEVの「不人気」を尻目に「電気の未来」を信じる |
アルピーヌならではの軽量化技術に期待がかかる
フランスのプレミアムスポーツブランド「アルピーヌ(Alpine)」。
今回、ブランドの象徴であるライトウェイトスポーツ「A110」の次世代ピュアEV(電気自動車)モデルのデビューに向けて重要な一歩を踏み出しており、2026年7月、アルピーヌは今夏開催される世界最高峰の自動車の祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」において、第3世代となる次期型A110の開発車両(ミュールカー)『A110 FUTURE(エーワンテン・フューチャー)』を初公開すると発表することに。
現在の内燃機関(ガソリンエンジン)を搭載したA110は圧倒的な軽さと俊敏さで世界中から絶賛されていますが、次世代モデルでは「世界初の本格EVスポーツカー」へと生まれ変わることが決定していて、「EVになると重くなってアルピーヌらしさが失われるのでは」「そうなればA110の意味がないのでは」というファンの不安を払拭すべく開発された”最新テクノロジー”を見てみましょう。
この記事の要約(30秒チェック)
- 未来を占うテストカー: 次期型(第3世代)A110の技術テスト車両「A110 FUTURE」がグッドウッド(7月9日〜12日)で毎日デモランを実施
- 新開発プラットフォーム: アルピーヌ専用の軽量アルミ骨格「APP(アルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム)」を初採用
- 理想の重量配分を維持: バッテリーを前後に分割配置し、ミッドシップスポーツの黄金比である「前後40:60」の重量バランスをEVで実現
- 驚異の800Vテクノロジー: 超高エネルギー密度の「セル・トゥ・パック」技術と800Vシステムにより、軽量化と超急速充電を両立
- 豪華なF1ドライバー陣: グッドウッドには、BWTアルピーヌF1チームからピエール・ガスリーやフランコ・コラピントら5名のドライバーが集結
グッドウッドの「主役」として4日間毎日激走
今回発表された「A110 FUTURE」は、単なるデザインコンセプトではなく、実際に走ることが可能な「実験室」。
2026年7月9日から12日までイギリスで開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、4日間の開催期間中において”毎日”ヒルクライムコースを激走し、その高いダイナミクス性能を観衆の前で証明することが決まっています。
なお、アルピーヌにとって今年のグッドウッドは過去最大規模の出展となり、7月9日(木)には「アルピーヌ・モーメント(Alpine Moment)」と題したブランドパレードが予定されており、この「A110 FUTURE」を筆頭としてラリーのアイコンとして名を馳せた初代A110から現代に続く歴代の名車たちが一堂に会することとなるもよう。
さらに、F1マシン「E20」のデモランがフィナーレを飾るなど、ブランドの輝かしいヘリテージと未来への挑戦が融合する記念すべき瞬間となることが予想されています。
「A110 FUTURE」に投入された次世代EV技術スペック
そしてアルピーヌが「現代の最高峰ガソリンスポーツカーを超える」と豪語する、新開発のコアテクノロジーの詳細は以下の通り。
| 注目技術・コンポーネント | 構造およびパフォーマンスの特徴 |
| シャシー基盤 | APP(Alpine Performance Platform):EV専用に完全新設計された高度なアルミニウム・アーキテクチャ。アルピーヌ伝統の俊敏なハンドリングを担保する。 |
| バッテリー配置 | 2つのパックに分割し、車体の前後に配置。ミッドシップ車と同様の前後重量配分「40:60」を徹底追求。 |
| バッテリー技術 | 800V Cell-to-Pack技術:モジュールを挟まない高密度設計により、バッテリー自体の重量を劇的に削減し、超急速充電に対応。 |
| パワートレイン | リア・デュアルeモーター(3-in-1 e-axle):後輪に2基のモーターを配した新世代アクスル。SiC(シリコンカーバイド)インバーターとの組み合わせで、緻密かつ超高速のトルクベクタリング(左右の駆動力制御)を実現。 |
| 足回り・制御系 | オールアルミニウム製サスペンション、新開発の統合型ブレーキおよびステアリングシステムを搭載。 |
| ブランドの電動ラインナップ | 市販EVホットハッチ「A290」、470馬力を誇る5人乗りスポーツファストバック「A390」もブースに並ぶ。 |
「重さ」というEVスポーツ最大の難問に対するアルピーヌの回答
現在、多くの自動車メーカーがEVスポーツカーの開発に苦戦していることは御存知の通りではありますが、、その最大の理由は「バッテリー搭載による車重の増加、重心コントロールの難しさ」。
一般的なEVでは床下一面に重いバッテリーを敷き詰めることとなり、これによってシートポジションが高くなったり全高が増えてしまったり、そしてなにより「車体重量が嵩んで」しまうことになりますが、これらはスポーツカーにとっては致命的で、前面投影面積が増えたり、シャープなコーナリングや「軽快さ」が失われてしまうことに。

Image:Alpine
これに対するアルピーヌの回答は非常にユニークかつ合理的で、床下にバッテリー敷き詰めるのではなく、バッテリーをあえて「前後に分割」して配置しており、これによってポルシェ911や現行A110のような「リア寄りのミッドシップらしい動き」をEVで再現することに成功しています。
さらにはモーター、インバーター、ギアボックスを一体化させた「3-in-1 e-axle」をリアに2基搭載することで左右のタイヤの回転数を独立して超高速制御できるといい、これはガソリン車の機械式LSD(限度滑り差動装置)を遥かに凌ぐスピードでコーナリング姿勢を制御できることを意味していて、「EVだからこそ、これまでのガソリン車以上に曲がる楽しさを味わえる」という、新しいスポーツカーの価値を提示しているというわけですね(そして4日連続で走らせるということは、その耐久性やドライビングプレジャー、なにより傍から見てわかる速さに自信があるということなのだろう)。
加速する「プレミアムEVスポーツ」三つ巴の戦い
現在の状況において、このアルピーヌの動きが業界内でどのような位置付けにあるのか、競合他社の動向を知ることで今後の市場予測がより鮮明に見えてくるようにも思われ・・・。
- ポルシェ(Porsche):絶対王者であるポルシェは、次世代の「718ケイマン / ボクスター」をピュアEVとして開発中であり「まもなく」市場に投入予定。プレミアムEVスポーツの基準セッティングを狙うポルシェに対し、アルピーヌは「APP」という独自プラットフォームで真っ向勝負を挑むことになり、これまで同様に軽量性を武器に戦う
- ロータス(Lotus):かつてライトウェイトの双璧をなしたロータスは、すでにハイパーEV「エヴァイヤ」や電動SUV「エレトレ」へとシフトし、より大型でハイパワーな路線へと舵を切ることに。一方、予定していたピュアエレクトリックスポーツカー計画は「撤回」し、既存のエミーラをハイブリッド化する方針を公開済み
- アルピーヌの独自性:「手頃なサイズ感とパワー、ヒラヒラと舞うような軽快さ」というライトウェイトの精神をEV時代に受け継ごうとしているのは事実上このアルピーヌA110の次世代型だけ。アウディも次世代スポーツ「コンセプトC」市販モデルにてこの市場を狙っているものの、やはり軽量性においてはアルピーヌに分があるものと考えられ、アルピーヌが一歩先んじて実走テストカーを公開した意味は極めて大きい
-
-
ポルシェの新戦略は「売る台数を減らして、より稼ぐ」。ガソリン&EVで復活する新型718ケイマン / ボクスター、迷走するフラッグシップSUV開発の舞台裏
Life in the FAST LANE. | ポルシェは「販売台数の減少」を変えようがない事実として受け入れるようだ | 実際のところ、失った中国市場でのシェアを回復させることは容易ではないだろう ...
続きを見る
-
-
アウディ、新型「コンセプトC」を市販化決定。TTの後継ではなく“スピード、デザイン、感性の象徴であり、ブランドの魅力を高める存在”へ
Audi | 生産規模は「大きくはなく」、しかしR8を製造していた工場にて慎重に行われる | TTの再来ではなく、新時代のシンボルへ さて、アウディは昨日「衝撃の」コンセプトCを発表していますが、これ ...
続きを見る
結論
アルピーヌがグッドウッドでお披露目する「A110 FUTURE」は、単に電動化への移行を示すためのプロトタイプではなく、「EVになっても、アルピーヌは絶対に走る歓びを諦めない」という、世界中のクルマ好きに対する力強いマニフェスト(宣言)。
アルミニウムを多用した超軽量骨格、黄金比である40:60の重量配分、そしてリアのツインモーターによる新次元のハンドリング。これらはぼくらが愛してやまない「軽くてキビキビ走るA110」の DNAが100%電気の力になっても高い次元で息づいていることを確信させてくれるもので、ピエール・ガスリーらF1ドライバーたちも絶賛するであろうこのフレンチスポーツの未来の姿、そして7月9日からのグッドウッドのヒルクライムにて静かに、しかし強烈な白煙を上げて駆け上がる「A110 FUTURE」の走りには注目したいと思います。
合わせて読みたい、アルピーヌ関連投稿
-
-
やっぱりおフランスは一味違うな。ラコステ×アルピーヌが魅せる究極のフレンチコラボ、100%電動ラリーカー”A290 Rallye”が「白いワニ」仕様に
Image:Alpine | いつの世も過激なのはやはりフランス人である | フランスの自動車ブランドは「ファッションブランドとのコラボ」が少なくはない テニスコートで革命を起こしたルネ・ラコステ。 ...
続きを見る
-
-
驚異の275g、アルピーヌがル・マンにて「世界最軽量」レーシングスーツを導入。「iPhone 17 Pro maxとアップルウォッチを足したのと同じくらい」の重量に
Image:Alpine | サベルトの最新技術×現代アートが紡ぐ60年のヘリテージ | コンマ一秒を削るサーキットに、アートと超軽量テクノロジーが融合した理由 モータースポーツの頂点、そして世界で最 ...
続きを見る
-
-
次世代アルピーヌA110の概要とプラットフォームが公開(着座スタイルがほぼレーシングカー)、「EVのみ戦略」を撤回しガソリン車存続へ向けた秘策が明らかに
Image:Alpine | EVの加速とエンジンの魂。アルピーヌが選んだ「二刀流」の未来とは | アルピーヌは次世代スポーツカーを「EVのみ」としていたが アルピーヌが次世代A110および将来のモデ ...
続きを見る
参照:ALPINE











