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BMWジャパン衝撃の事実。ディーラーへの過剰なノルマ、販売の4割は自社登録、そして正規販売店契約の一方的な解除が明るみに

2020/01/06

| わかっていたけど想像よりも事は重大だった |

ちょっとショッキングな記事が「フライデー・デジタル」に掲載。
その内容を要約すると、「BMWと30年間正規ディーラー契約を結び続けてきた販売店が、ずっと過剰なノルマに苦しめられた上、5億円を支出して店舗の建て替えを迫られ、これを拒否すると一方的にディーラー契約を打ち切られた」というもの。
「まあこういった事実もあるんだろうな」とはうっすら理解していましたが、今回その「元」ディーラーの代表は実名でこれを語り、さらには3億円の民事訴訟をBMWに対して起こす準備を行っていると激白。
その「闇の深さ」が改めて感じさせられるものとなっています。

BMWは2013年から強烈なノルマを課しはじめる

この「元」BMW正規ディーラーを経営していた株式会社東立の横山健治代表によると、1986年に「BMWに請われる形で」BMWと正規ディーラー契約を締結。
その後は順調に業務を展開してきたようですが、2013年頃からBMWの方針が変わり、メルセデス・ベンツに対抗するため、「強制ノルマ」が課されることに。

同氏によると、BMWが「本来」顧客に無理なく売れる台数は35,000台ほどであるのに対し、BMW本社側は日本全国で58,000台のノルマを課していて、これを個別に達成できないディーラーは「BMWジャパンから恫喝される」「BMWの正規ディーラー権を取り上げられる」という恐怖にさらされる、とのこと。

そして、このノルマ達成のために行うのがたびたび報じられる「自社登録」。
輸入車の販売台数とはつまり「イコール登録台数」であり、ディーラーがBMWジャパンから新車を仕入れただけではノルマを達成できず、仕入れたクルマを「登録」してはじめてノルマ達成手段としてカウントされるわけですね。

よって、各BMWディーラーはノルマ達成のため、顧客にプッシュするのはもちろん自社登録(ディーラー名義で登録し、”売った”ことにする)を行うことでノルマを達成しようとすることになりますが、ノルマ達成は上述のような「恐怖」から逃れることのほか、「ノルマ達成によるボーナス」を当てにしているため。

自社登録車は大きな損失

自社登録したクルマは「顧客に売ったわけではないので」利益にはならず、自社の在庫を積み増ししただけに過ぎないためにディーラーの経営を圧迫することになり、これを中古車として販売したとしても「(走行していなくても登録済みなので)新車から大きく価格を下げた値付けを行う必要がある」ことから利益が取れない状態。

そのために「ボーナス」がなければとうていディーラーの経営など成り立たない、と横山氏は述べています。

なお、ノルマのキツさを表す数字として、昨年前半にぼくが調べた数字を再掲するとこんな感じ。
メルセデス・ベンツ、BMWは毎月の昨対が「100%前後」で、これはどうみても”無理やり”数字を作ろうとしているようにも見えますよね。
対してアウディは毎月の(昨対比)数字がバラバラであり、無理なノルマを強いていないであろうことがわかります。

2019年メルセデス・ベンツBMWアウディ
1月103%109.5%69.7%
2月101.4%100.4%61.4%
3月90.6%95.2%64.6%
4月100.7%116.6%150.2%
5月95.2%99.5%90.2%
6月100.9%94.6&77.7%

ノルマの副産物で自社登録車両があふれかえることに

なお、この「自社登録」したクルマは新古車として自社の中古車販売網にて売りに出されることになりますが、これはもちろん「在庫をお金に変えないと、ディーラーの運転資金を捻出できないため」。
ちょっとクルマやその販売の裏側を知っている人であれば、こういった「新古車」を狙って買うことが多く、というのも「そのほうが断然安く買えるから」。

これはもちろん新車販売を減少させる理由にもなり、さらには中古相場を大きく下げることにもなって、「BMWは売却時に安くなるから買いたくない」という消費者心理を招き、これによってさらに新車販売をスポイルすることにも。

実際のところ、ぼくは「BMWを新車で買う気はない」と考えていますし、「BMWはナンバーを付けた瞬間に売却価格が半分になる」とも考えているわけですね。※BMWの作るクルマ自体は魅力的だと考えている

ちなみに新古車の価格がどれくらいかと言うと、これも昨年に調べたところ、2シリーズ・アクティブツアラーで新車価格から41%引き、5シリーズで28%引き。

BMW、メルセデス・ベンツの新車を買うのはちょっと待った!走行距離10キロ台の新古車が40%オフで売られるナゾ

BMWが課すノルマ、そして「本来販売できる台数」との差を考慮すると、じつにBMWの40%が自社登録ということになり、これらが新古車として市場に出てくるということにもなりますが、これが回り回ってBMW本社の首を締めることになって、しかしBMW本社の本社はこのツケをディーラーにずっと回し続けているのが現状なのかもしれません。

なお、この状況は日本だけでは無いようで、米国においても同様の事例があるようですね。

米にて「一年以内に売られる車」「もっとも値下がりする車」ランキング。なぜBMWが上位独占?

ちなみにこういった「ノルマ」を課す会社は少なくなく、そして中国でもこれは問題視されており、「強制的なノルマを課してはダメ」という法律が施行されています(そしてノルマがなくなると販売台数が激減している)。

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そして最後は一方的にディーラー解約解除

それでも横山氏はなんとかBMWディーラーを経営し続けてきたものの、2015年にはBMWジャパンから「5億円をかけてショールームをリニューアルするように」というお達しが。

もちろんBMWジャパンからのボーナス無しでは経営が成り立たないほどの自転車操業なので建て替えができず、翌2016年1月、一方的にBMWジャパンから契約解除つまり看板を取り上げられたというのが事の顛末のようですね。

ちなみにこちらがその書面。

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なお、BMWは徹底して「効率」を優先していて、新型3シリーズで用意されるボディカラーは「3色のみ」。
加えて2018年末あたりから全シリーズのグレード構成を見直していて、ラインアップが簡略化されています。

ぶっちゃけて言ってしまうと、本社の利益のために販社に圧力をかけ、消費者の選択肢を狭めているのがBMWという会社だということになり、ここはぼくが「ちょっとなあ」と思うところ。
方向性としては「下請けを犠牲にし、ニューモデルも出さないことでコストを抑える」日産ともよく似ている、とも思います。

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たしかに現代における企業の生存競争は厳しく、しかし消費者を顧みないと必ずやしっぺ返しを食らうことになり、メルセデス・ベンツに対抗するには、まず「台数」ではなく、ブランド価値を向上させる努力を本社が率先して行うべきなのかもしれません。

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