さて、2017年も半分が過ぎた状態。
ぼくは年間で「本20冊、映画150本、試乗50台」という目標を掲げていますが、このうち「試乗50台」については軽くクリアし、おそらく今年は70台くらい乗りそうな勢い。
現時点ですでに40台近く試乗しているので、ここで印象に残った車を振り返ってみたいと思います。
これは目からウロコというか、「こういった考え方があったか」という車。
V12/5.2リッターツインターボ、608馬力というトンデモナイ心臓を持つ車ですね。
一方で0-100キロ加速は「3.9秒」とあまり速くありません。
このくらいの馬力であれば現代において「3秒ちょっと、もしくは3秒以下」が普通となっており、「なぜだッ!」とぼくは常々考えていたものの、実際に試乗してその謎が氷解。
なぜこのタイムかというと、「速く走ることより重要なものがあるから」。
イギリスはそのジェントルなイメージとは裏腹に、「軽量な車にハイパワーエンジン」という伝統があり、そこには単純な速さよりも「馬を操る楽しさ」という乗馬文化的な思想があるのだと思われ、「操る楽しさ」を重視しているためと思われます(無駄を愛する、と言い換えてもいい。反面ドイツは質実剛健)。
そのためアクセルをドンと踏むとテールが暴れるのなんの(踏む前に教えてよ・・・)。
これが相当に楽しく、「ハッハー!カモーン!」状態になるわけですね。
その他、スーパースポーツなのにアームレストが電動で開いたり(まさに007映画のようで、ここに銃が入っていれば完璧)と無駄に驚かされる(=満足感と言っていい)装備があるなど、「ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ」というトッププライオリティが「速さ」、二番目も「速さ」、三/四が抜けてまた速さ、という車ばかりに接してきたぼくには非常に新鮮。
つまり新しい価値観に気づかせてくれた車、と言えますが、実際に同じように感じた人は多いようで、世界中で相当な人気に。
これによってアストンマーティンは10年ぶりの黒字に転換していますね。
とにかく出来の良さに驚いたスバルXV。
スバルの新しい「グローバル・プラットフォーム(なにかもっと格好良い名前をつければいいのに、と思う。でもこの実用的な名称がスバルっぽい)」を使用した第二弾(最初はインプレッサ)となりますが、外観デザインや仕上げ、インテリアの質感や装備など文句なしに高いレベル。
アイサイトによる安全性、トルクベクタリング4WDによる走破性など基本性能が高く、さらに目に見える部分の魅力も高いという「死角の無い」車ですね。
一番衝撃的なのはその価格で、オプションを相当数装着しても支払総額は340万円ほど。
この価格でこの車が購入できるのであれば、高いお金を出して輸入車を購入するのは無意味な行為であるかもしれない、と感じた「はじめての日本車」であります。
最新テクノロジーが徹底的に詰まったAMG E63。
通常、車というのはコーナリングに遠心力で「外側に」流れるものですが、このAMG E63はその遠心力を「外側の駆動力を増すことで」無理に押し戻し、曲げてしまう車。
加えてアクティブサスが車の「傾き」すらコントロールし、内輪側が浮かないようにしてさらに荷重すら変化させてしまうという「物理現象を無視した」車でもありますね。
この技術自体は珍しいものではなく、古くはホンダの(プレリュードに積まれていた)ATTS、三菱ランサーエボリューションに搭載のAYC、最近だとホンダのSH-AWDも。
スバル、VWやアウディ、ランボルギーニ、ジャガー/ランドローバーも同様のシステムを持ちますが、こういった「トルク分配型」4WDには大きく分けると「内輪にブレーキをかけて相対的に外輪のトルクを増加」型、「内輪はそのままに外輪にさらにトルクを配分」型があり、AMG E63は後者(マツダのG-ベクタリングのようにエンジン出力コントロールを組み合わせたものも)。
これにアクティブサスを組み合わせ、シートについても「サイドサポートがドライバーを慣性と反対側に押し戻す」ように動くなど総合的な制御にAMG E63の特徴があり、一般的に「こうしたらこうなる」という常識や物理的な帰結と反対の動作を車側が行い、それらをもって「常識外の」動きをする車がメルセデスAMG E63 S 4MATIC+。
運転していて明らかに異次元っぷりが分かる車(安全運転でお願いします、と試乗時には注意された)で「時代はここまで来たか」と思わせる革新的な車でもあり、加速においてもフェラーリ458スパイダー、ランボルギーニ・ウラカンRWDと同等のタイム。
この車が1774万円で購入できる、というのも驚きですね。
まだ日本に2台しかないAMG E63 S 4MATIC+に試乗。物理の法則すら捻じ曲げる驚愕体験
レクサスが久々に放つスポーツクーペ、LC500。
そのハイブリッド版ということになりますが、驚かされたのは走行性能よりもそのデザイン。
デザインに数ヶ月要したという複雑な形状を持つグリル、どうやって組み立てているんだろうと思うほどの複雑なヘッドライト周り、ミラーを使用したテールランプなど。
他の自動車メーカーであればここまではやらないだろう、ということを徹底的にやってきたのがレクサスLC500で、それは内装も同じ。
ほか強靭なストラット、車体中心から遠い部分に使用されたカーボンコンポジット素材など「かなり真面目に」スポーツカーを作ろうとしたことが伝わってくる車であり、かつそれを視覚的に(オーナーであれば日常的に)見ることが出来るので所有する満足度もかなり高いだろうな、と思わせる車です。
運転した印象も大変良く、ちょっと荒れた路面や細い道の続く住宅街でも運転しやすく、まさにオールラウンダー。
レクサスLC500も大変な人気で、発表当初は予想の36倍、という異常な数の注文が殺到し話題となりましたね。
【試乗:レクサスLC500h】筋肉質でエレガント、例えるなら細マッチョ。本気で欲しい一台
レクサスLC500を見て来た。レクサスのこだわりが感じられる、その細部を画像にて紹介
モデルチェンジによってずいぶん格好良くなったポルシェ・パナメーラ。
VWアウディグループにおける前デザイン統括責任者、ワルター・デ・シルヴァ氏が着任時に「グループ内でデザインが気に入らないのは(当時先代であった)ポルシェ・パナメーラのリア」と語っていましたが、リアセクションが911と良く似たデザインとなり、「サルーン版の911」のような印象となったことが外観の特徴。
これもメルセデスAMG E63のようにテクノロジー満載の車で、しかしAMG E63のように「明らかになんらかのデバイスが作動」していることがわかるのではなく、そういったデバイスの存在感が全く感じられない「自然体」を持つという正反対の性格を持っています。
ポルシェは初代レクサスLS(セルシオ)が登場した時に「こういった車を作りたかった」という発言を残していますが、それから長い時間を経て「レクサスLSのような」、しかしポルシェらしい車ができてきたな、という印象です。
ポルシェはかねてより「スポーツカーと日常性とは同義」と語っていますが、それはドライバーに「負担を与えずに速く走ることができる」のがスポーツカーだと考えているのでは、と感じさせる部分も。
よってポルシェの車は(スポーツカーにせよサルーンにせよ)どんどん速くなっているに、どんどん乗り心地や快適性が(その走行性能以上に)向上しており、それは他メーカーがドリフトモードなど「刺激」をセダンに与えているのとは真逆の方向。
そんなことをしなくても十分に速くて楽しいよ、というのがこのパナメーラであり、「やっぱりオレたちのポルシェだ」とポルシェに対する忠誠心を再認識させてくれる車だと思います。
その斬新なスタイルが特徴のプジョー3008。
ぼくは比較的角ばった車が好きで、それはインテリアにおいても同じ。
その点プジョー3008は内外装がぼくの好みドンズバなのですが、そこには「見た目のテクノロジー感」というおまけ付き。
プジョーはその独自性を発揮しようと古くからいろいろな試みを行ってきたメーカーで、シトロエンにせよプジョーにせよ、フランスというイメージの割に行ってくることがかなりアバンギャルド(これもフランス語なので、フランスは昔から前衛的なものが評価されるのかもしれない)。
プジョーは3008を設計するにあたり「ドライビングエクスペリエンスにおいて、満足できるSUVは市場にほとんどない」ということを前提にしたそうですが、その甲斐あって走行性能、インターフェースともに「満足度の高い」SUVに仕上がっています(評価できる点が多すぎて挙げてゆくとキリがない)。
実際にそれは多くの消費者に伝わったようで、初回限定モデルが3日でほぼ完売するなど「プジョー始まって以来の珍事」も発生させた魅力的な車ですね。
エクストレイル試乗前まで、ぼくは日産に対して「コストダウン」というイメージが強かったのですが、それをひっくり返してしまった1台。
たしかに日産はコストダウンに注力しているものの、正確に言うと「コストカット」。
要らないものを切り捨てることに集中しているということですが、逆にかけるべきところにはそのコストをかけていて、エクストレイルも「コストの掛かった」1台といえます。
エクストレイルは世界戦略車ですが、そのぶん世界中で利益を稼ぎ出すべく相当なコストが掛けられており、実際にワールドワイドで「ベストセラー」。
それは日本でも同様で、ヴェゼル、C-HRの後塵を拝するものの、かなり堅調な販売といえます(モデルチェンジしても販売を落としておらず、長い目で今後比較するとヴェゼルやC-HRより売れていることになるかも)。
日産のラインアップを見るとわかりますが、世界販売でトヨタやフォルクスワーゲンと並ぼうという販売規模の割に車種が少なく、しかし国内だとコンパクトカーでは「ノート」、ミニバンでは「セレナ」、SUVではこの「エクストレイル」という具合に、なにかと上位争いに絡むのが日産。
実際に乗ってみると「こりゃ売れるわけだ」と思う走行性のや装備を持ち、価格訴求力も抜群。
日産は「切り捨てる」のが上手で、エクストレイルの影には多くの切り捨てられた車種があると思いますが、ノート然りセレナ然り、生き残った車種には「尊い犠牲」によって得た開発資金やリソースがふんだんに注入されていると思われ、日産の戦略とは「選択と集中」であって、その中で生き残ったモデルには相当なポテンシャルがある、と感じたモデル(日産のラインナップには無駄や捨て駒がない)。
ちょっと試乗しただけで「メーカーの考え方がわかる」車は少なく、しかしエクストレイルは数少ない「その中の1台」と言えるでしょう。
なお、試乗した車の一覧は下記にまとめています(試乗した車すべてを記録しているわけではありませんが)。
■TEST DRIVE(色々な車の試乗記)
なぜ試乗を行うのか?乗らないとわからないから。そこから得られるものについて考える
年間目標、「本20冊、映画150本、試乗50台」について考える
自分の考える、勝手な自動車メーカーのイメージについて(国産メーカー編)
自分の考える、勝手な自動車メーカーのイメージについて(輸入車編)