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トヨタがハイパーカー投入、レース参戦の意図を語る。「人を育てる」「モータースポーツで儲ける」。その割にはル・マン優勝を大々的に広告しないナゾ

2019/07/16

| トヨタだけではなく、ホンダも「モータースポーツ色」を市販車販売の現場に反映したくない? |

東洋経済にて、「トヨタが超高級「スーパーカー」を投入する意味」という記事が掲載に。
これはつまり、トヨタはなぜ「GRスーパースポーツ」という高価なクルマを発売するのか、という内容です。

一般に、自動車メーカーはモータースポーツ活動を縮小する傾向にあり、スポーツカーもそのラインアップから縮小もしくは消してゆくというトレンドに逆行しているのでは?という問題提起でもありますね。

もともとGAZOOは中古車向けの画像検索サービス

これについては、「GAZOO Racing」について話をする必要がありますが、「GAZOO」は現豊田章男トヨタ自動車社長が(まだ社長ではなかった時期に)立ち上げたブランド。※その経緯は「Gazoo」にて紹介されている

当初はネットの普及に合わせた中古車の画像検索(GAZOOとは画像を意味している)からスタートしているものの、その後、豊田章男氏が社長に就任した後に大きくその方向性を転換し、トヨタにおけるモータースポーツ活動を統括する組織に生まれ変わっています(よってTRDの役割も変化)。※GAZOO Racingの公式サイトはこちら

今回の記事では、大きく分けて「なぜトヨタはモータースポーツに力を入れるのか」ということ、そして「それで会社が儲かるのか」という2点に焦点を当てている模様。

そして両者は切り分けることが出来ず「表裏一体」ではありますが、ここでその内容を見てみましょう。

なぜトヨタはモータースポーツ活動を行うのか

トヨタはル・マンはじめ多くのモータースポーツ活動を行い、ル・マンが新設する「ハイパーカークラス」にも参戦予定。

記事中の表現を借りるならば、GAZOO Racingの友山茂樹プレジデント の言として、”GAZOO Racing Companyは通常のマニュファクチャラー(自動車メーカー/ブランド)ではなく、レーシングカンパニーだ”というものがあり、これはレーシングカーと市販車が一体だということを意味しているようです。

たしかに、GRスーパースポーツコンセプト発表時にも、「ハイパーな市販車をつくる」のではなく「レーシングカーを公道走行な状態にして発売する」とコメントしているので、この一貫した姿勢には納得ですね。

かつ、GAZOO Racingの活動目的のひとつが「モータースポーツ活動から得られた知見と経験を市販車開発に生かす」ことでもあり、その最たる例が新型スープラである、とGAZOO Racingの「OUR STORY」にも記載されています。

そして友山茂樹プレジデントいわく、モータースポーツに参加する意味としては「人を育てるため」。
優れたクルマをつくるにはサプライヤーの協力や知識、なによりモータースポーツの現場で得られるノウハウが重要だと考えていて、そのためにモータースポーツ活動を行っている、と述べています。

いくつかの自動車メーカーは、自社でモータースポーツへと「ワークス参戦」しながらも、実際は下請けとなるレーシングチームがすべてを仕切っている場合があり、しかしトヨタはそうではなく、自社(GAZOO Racing)にてモータースポーツに、そしてサプライヤーとともに直接参戦することで、より良いクルマづくりの技術を学んでいる、ということになりますね。

モータースポーツは儲かるのか

そしてもうひとつ、「利益」についてですが、まずトヨタは「ハイパーカークラス」に参戦するGRスーパースポーツを市販することで利益をあげようと考えています。

そしてこのGRスーパースポーツについては価格1億円だとも言われるものの、すでに20件を超えるオーダーがある、とも。
つまりはこれで20億円の売上ができることになりますが、たとえばトヨタのコンパクトカーの価格が200万円だとすると、「コンパクトカーを1,000台売る」に等しい額。

もちろmGRスーパースポーツはそれなりの開発や製造コストがかかりますが、1,000台のクルマを売るための製造コスト、輸送や保管コスト、現場の販売管理コストなどを考えると「ずっと効率の良い商売」と言えるかもしれません。

トヨタ「GRスーパースポーツの性能はハイパーだが、価格も当然ハイパーだ」

なお、「GRブランド」のクルマとしては新型スープラが第一号ではありますが、その後にこの「GRスーパースポーツ」が続き、トヨタによると「モータースポーツ由来のプロダクトを投入する」とのこと。

つまりはGRスーパースポーツのような「効率の良い」商売をひとつの柱にしたいということだと思われますが、ここで重要なのは「GR各モデルを売るために、モータースポーツで実績をあげ、その実績を販売に結びつけ、収益を得て、そのお金をモータースポーツに投資し、さらにいいクルマを作る」というサイクル。

たしかにこれは納得のできる話で、フェラーリはそもそも「宣伝をしない(フェラーリ・ネバー・アドバタイズ)」ことで知られており、”モータースポーツでの勝利こそが最大の宣伝”。

スポーツカーセグメントにおいて好調なセールスを記録するポルシェは「ル・マンでもっとも多くの勝利を獲得した自動車メーカー」ですし、こういった実績をもってこそ市販モデルの販売が好調になったり、レースに参戦するプライベーター向けのカスタマーカー(911RSRや718ケイマンGT4クラブスポーツなど)の販売が増加する、というのは間違いのない事実だと思います。

なお、マクラーレンはかつて「F1」発売時に、いいクルマさえ作れば価格が高くとも(フェラーリF40やF50よりも)売れると考えていたものの、北米市場においてはマクラーレンの認知度の低さ(当時)のために思ったように売れなかったと言われるので、やはりスポーツカー、スーパーカーを売るには「モータースポーツでの実績」が必要なのでしょうね。

まだGAZOO Racingはサイクルが出来ていない

ただ、ぼくがいつも思うのは、GAZOO Racingの活動が全然広告宣伝に生きていないという残念さで、たとえばル・マンで優勝したとしても、それを祝したキャンペーンを行ったり、ディーラーでイベントを行うでもなく、トヨタの流すTVCMや公式サイトのトップを「ル・マン優勝」に差し替えるわけでもないのが現実。

つまり、相当な費用を投じてル・マンで優勝したのに、それを知らしめる機会を自ら作っておらず、結果としては「ル・マンに参戦していないのと一緒」。

このあたりは今後の課題だと思われますが、Gazoo Racingとトヨタの広報やメーケティングなど他部署との連携がうまく取れていないのかもしれません(もしくは”そうしたくない”のか)。

たとえばボルボは「カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得すると、TVCMやディーラーのノボリ、雑誌やネット上の広告が一斉に「カー・オブ・ザ・イヤー獲得」に変わりますが、トヨタにはこういった「チャンスを最大限に活用する」姿勢が見られない、ということですね。

なお、英国トヨタは「トヨタとモータースポーツ」とを強く関連付けており、よってル・マン優勝時には「世界で最も速いハイブリッドカーを作っているのはトヨタ(優勝車であるTS050はハイブリッド)」と大々的にプロモーションを行い、ウエブサイトのトップページもル・マン優勝バージョンに差し替えられていますが、やっぱりこういった行動が(モータースポーツをお金に換えるには)必要なんだろうな、とは思います。

トヨタは今後、ヴィッツの名称をヤリスに統一し、モータースポーツイメージを反映させてゆく意向を持っているようですが、このままだと、ヤリスを買おうとしている人や、ヤリスを実際に買った人でも「え?ヤリスってモータースポーツに参戦しているの?それ以前にトヨタってレースに出てたっけ?」となりそうですね。※トヨタだけではなく、ホンダもF1でのポイント獲得をトップページにて周知させないなど、市販車とモータースポーツとをむしろ意図的に分けようとしている印象すら受ける

VIA:東洋経済

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