｜ フツウに考えると日本で売るCX-30は日本で生産すべきだが ｜
マツダがその新型車「CX-30」をメキシコにて製造する、との報道。
これは現地カーメディア、Autonews Mexicoが報じたもので、CX-30はグアナファト州サラマンカ市にあるマツダの工場「Mazda de Mexico Vehicle Operation＝MMVO」にて製造され、世界中に輸出されることになる、としています。
なお、このMMVOは2014年に稼働をはじめていますが、これは「マツダの社運をかけた」と言われるほどの大プロジェクトで、7億7000万ドルを投資。
工場の設備自体も日本と同じものを導入し、「安く作る」ことが目的ではなく、「より良い製品を製造して世界中へ輸出する」ことを目的としています。※マツダによるMMVOの説明はこちら
海外生産には懸念がないとは言えない
実際のところメキシコは「立地」が良く、米国への輸出はじめ欧州や南アフリカ、カナダに対して輸送上のメリットがあり（対米国は関税問題が勃発していますが）、ここで製造するのは理にかなっているものの、気になるのは「日本仕様はどうなるのか」。
報道だと「メキシコで作ったものをすべての市場に輸出」とあるので、文面通りに受け取れば、日本に入ってくるのもメキシコ製となりそう。
日本製に比べると、メキシコの品質は高くない
なお、海外生産に関する懸念は大きく分けると2つあり、ひとつ目は製造品質。
同じパーツや工作機械を使用しても「完成品」に差があるためで、たとえばBMWは「ドイツ以外ではじめての海外工場」である米国アラバマ工場で生産を開始した際、その品質が予定していたものとは異なっていたため、「アラバマ工場で製造した車両をドイツに運んで検品・修正し、再輸出していた」ほど。
つまりBMWにとって「アメリカの工場ですら思い通りにならなかった」ということで、そのために相当な追加コストが必要になり、要はそれくらい品質に問題があったわけですね。
ただ、現在はメキシコやアメリカには多数の自動車工場があり、工員も「慣れて」いるために昔ほどの懸念はない、と考えて良さそうです（それでも抵抗はある）。
なお、マツダは「マツダ3」にて”ホイールが脱落する”というリコールを出していますが、これはメキシコ工場、日本の工場で生産された車両ともに対象となっており、これは日本とメキシコとで、同じ工作機械を使用し、同じ手順で、同じパーツを、同じ品質で製造・組み立てている、ということを示すひとつの事例なのかもしれません。
現地仕様の規格が採用されると日本では対応が難しい
そしてもう一つが規格の問題。
海外工場で製造するクルマは現地サプライヤーからパーツを仕入れることになりますが（本国からパーツを送っていてはコストがかかる）、これが時おり「規格違い」のものが使用されていたりして、輸出先で問題となることも。
日本だと、トヨタとGMとのジョイントベンチャーにて製造し日本へ輸入販売されていた「ヴォルツ」にその問題があったといい、日本での整備に苦労した、という話が聞かれます。
ただ、現在では、パーツサプライヤーも世界規模で展開して現地生産を行っており、設計情報の共有等にて「仕様地向け」の規格を採用したパーツを製造することができると思われ、こちらも気にしなくてよいのかもしれません（その地域向けにしかパーツを作っていない、というサプライヤーはもう生き残っていないと思われる）。
それでもマツダがメキシコ生産を行う理由とは
こういった問題を抜きにしても、マツダは（CX-30のベースとなるマツダ3を日本でも作っているので）CX-30を日本で生産したほうが輸送コスト等鑑みて安くあがりそうですが、それでもメキシコで生産する理由としては「圧倒的メキシコ人件費の安さ」がありそう。
これは輸送コストを考慮に入れてもメキシコのほうが製造コストが安上がりになるということを意味し、実際にマツダ以外の日本の自動車、バイクメーカーにおいても「海外生産品」を日本へ輸入していることから、海外生産のコスト的優位性がわかります。
そしてもうひとつ考慮しなくてはならないのが「工場稼働率」。
マツダのメキシコ工場は稼働率が下がっていると言われ、現在で80％ほど。
さらにマツダはトヨタとの合弁にてアラバマへ工場を建設していますが、ここで生産されればアメリカやカナダで販売する車両はここへと移される可能性があり、となるとさらにメキシコ工場の稼働率が下がる可能性も。
そうなると「巨額を投じた」メキシコ工場が遊んでしまうことにもなり、これを回避するためにもやはり「日本へと輸出するCX-30はメキシコ生産」となるのかもしれません。