
「ディーゼル感覚で回るガソリンエンジン」が静かに姿を消す理由とは
Skyactiv-X撤退の真相と次世代「Skyactiv-Z」への期待
2017年の発表当時、「ガソリンとディーゼルの良いとこ取りをした夢の内燃機関」として世界中の自動車ファンや技術者から大きな注目を集めたマツダの「Skyactiv-X(スカイアクティブ エックス)」エンジン。
火花点火制御圧縮着火(SPCCI)という革新的な技術を引っ提げて登場したこのパワーユニットではありますが、登場から10年を待たずして静かにその役目を終えようとしています。
欧州市場ではMazda3のラインナップからSkyactiv-Xが外されたことが確認され、マツダの内燃機関戦略が大きな転換期を迎えていることが浮き彫りになっており、ここではSkyactiv-Xの現状と撤退の背景、そして次世代を担う「Skyactiv-Z」への期待について考えてみましょう。※日本市場だと、CX-30への搭載が終了し、MAZDA 3「X Touring」にのみSkyactiv-Xが積まれている

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この記事要約
- 欧州市場のMazda3から「Skyactiv-X」エンジンが密かにラインナップ外となり、現在はCX-30のみの設定へ縮小
- ディーゼルエンジンのような圧縮着火を実現した夢の技術ではあったが、高価格でありながら燃費改善幅がわずかだった点が課題とされている
- マツダは次世代エンジン「Skyactiv-Z」の開発を進めており、ハイブリッド技術との融合や排ガス性能の向上を図りつつCX-5等への展開を目指している
ディーゼルのように燃えるガソリンエンジン「Skyactiv-X」の軌跡
Skyactiv-Xは、従来のガソリンエンジンのようにスパークプラグで点火しつつ、その火球を利用して燃焼室内の混合気を高圧・高速で圧縮着火させる「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)」を採用しており、これによってディーゼルエンジンのような優れた熱効率とレスポンス、そしてガソリンエンジンならではの高回転域での伸びやかさを両立させることを目指しています。
実際のところ、このエンジンは技術的にも高く評価され、「Q グローバル テックアワード(イタリア)」「エジソンアワード」「ステンレス協会 創立60周年記念賞」「日本燃焼学会 技術賞」「日本弁理士会 会長賞」など様々な賞を受賞しているのも記憶に新しいところ。

しかし、欧州ではMazda3での設定が廃止され、現在搭載モデルとして残されているのはクロスオーバーの「CX-30」のみ。
日本市場のMazda3には依然として設定が残されているものの、世界的な動向を見ると、この革新的なエンジンの展開範囲が徐々に狭まっていることは確かなのかもしれません。
スペックとコストから見る「Skyactiv-X」撤退の理由
なぜこれほどまでに高度な技術を投入したエンジンが姿を消しつつあるのか?
その理由は製品スペックと価格設定のバランスにあり、欧州向けMazda3における従来の自然吸気2.5Lガソリンエンジン(Skyactiv-G)とSkyactiv-Xのスペック比較は以下の通りとなっています。
| 項目 | 2.5L Skyactiv-G | 2.0L Skyactiv-X |
| 最高出力 | 138 hp | 184 hp |
| WLTP燃費(AT) | - | 39 mpg(約16.6 km/L) |
| 車両価格帯 | ベース価格 | Skyactiv-Gより約3,000ドル高 |
Skyactiv-Xは184馬力という力強いパワーを発揮したものの、実燃費におけるSkyactiv-Gに対するアドバンテージはわずかなものにとどまっていて、さらには非常に複雑な制御システムを必要とするため、車両価格が約3,000ドル(日本円で約48万円以上)高価になってしまった点がユーザーへの浸透を阻む要因となったと考えられているわけですね。

マツダの次世代パワーユニット「Skyactiv-Z」とハイブリッドシフト
いかに「消え去る」といえど、Skyactiv-Xで得られた知見は無駄にはならず、マツダは次世代の4気筒エンジン「Skyactiv-Z」の開発を着々と進めているのが現状で、2.5Lの排気量を持つSkyactiv-Zはマツダが「究極の燃焼に近づく」と位置づけるエンジンでもあり、SPCCI技術の進化型を盛り込みつつ、さらなるエミッションの低減とパフォーマンスの向上が図られているパワーユニット。
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また、近年のマツダは従来のターボチャージャーによる高出力化から、ハイブリッドシステムによる効率化とパワー補完へと舵を切っていて、例えば、主力SUVである新型CX-5などではターボモデルの設定が見送られ、(2027年には)この新しいSkyactiv-Zエンジンとハイブリッド技術を組み合わせたパワートレインが主力を担うことになる、と見込まれています。

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Skyactiv-Xは、内燃機関の可能性を極限まで追求した非常に野心的な挑戦であり、一種の技術的実験とも言える存在です。
他社の先鋭的なエンジン設計で散見されるような致命的な耐久性トラブルを起こすこともなく高い完成度を示したものの、コストパフォーマンスの面で市場の要求と完全に合致しなかった「悲運の存在」。
しかしマツダはけして内燃機関のアプローチを諦めたわけではなく、新世代Skyactiv-Zへの移行、ハイブリッド技術との高度な統合、そしてファンが長年待ち望んでいるロータリーエンジンのさらなる活用など、熱効率と環境性能を追求する同社の情熱が続いている、というのがいまのマツダということに。

結論
ディーゼルの燃焼理論を取り入れた革新的ガソリンエンジン「Skyactiv-X」は、高い技術力を証明したものの、高コストとわずかな燃費改善というギャップが普及の壁となり、欧州でのラインナップ縮小に伴い一定の役目を終えつつあるというのが現在地。
しかしマツダは今後、この経験を活かした次世代エンジン「Skyactiv-Z」やハイブリッドパワートレインへとシフトし、環境性能と走る歓びを両立する新たなステージへと進んでゆくことになるものと考えられ、その独自の進化にも期待したいところでもありますね。
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参照:Auto Express











