| しかもV型、直列エンジンにも対応。現段階では最も汎用性の高い高効率ハイブリッドか |
マツダがなんと「インホイールモーター」に関する特許を出願。
この特許について注目すべきところは3つあり、まとめると下記の通り。
1.インホイールモーター採用
2.バッテリーとキャパシタを併用している
3.ロータリエンジン、V型、直列、水平対向エンジン搭載
4.基本FRレイアウト+前輪をモーターで駆動
つまりマツダはロータリーエンジン搭載のFRを開発しているということになり、ここでその内容を見てみたいと思います。
ちなみに特許の主眼としては「インホイールモーターとキャパシタとの距離を最短とすることで、モーターの出力確保と車体の軽量化を両立する」こと。
つまりは「独自のレイアウトによって効率性を追求した」ということになりますね。
フロントエンジンは後輪を駆動、リアのバッテリーとフロントのキャパシタで前輪を駆動
まず、こちらは全体的なレイアウト。
左側がフロント、右側がリアです。
これを見ると、フロントの(通常のクルマでも)エンジンルームに相当する場所にエンジン(3)、インバーター(9)、キャパシタ(7)を搭載し、左右前輪(2a)の内側には副駆動モーター(10)を内蔵。
バッテリー(6)は後部座席あたりのセンターに置かれ、これが主駆動モーター(5)を使用して(エンジンとともに)後輪(2b)を動かすということに。
ちなみにトランスミッションは(4c)なので、トランスアクスルどころか車体後部に変速機を搭載、ということに。
まずはインホイールモーターですが、これはポルシェが1899年にはじめて作った電気自動車「ローナーポルシェ」にも採用されていたもので、しかし現代のエレクトリックカー、ハイブリッドカーでこれを採用する量産車はおそらく存在せず、代わりにほとんどのピュアEV、ハイブリッドカーは「ひとつのモーターを車軸中央に搭載し、左右に駆動力を振り分ける」もしくは「エンジン出力軸にモーターを内蔵」。
これには色々な理由があるようで、たとえばインホイールモーターを採用すると、モーターと(リチウムイオン)バッテリー等の電源を接続する高圧電線が太く長くなり、しかし重いバッテリーを車軸周辺のみに集中させると車体の重量バランスが悪くなるといった問題も。
そこでマツダが考えたのが、「重いリチウムイオンバッテリーは前後重量配分を最適化できる車体後方に配置し、しかし軽いキャパシタをインホイールモーター付近に設置し、電線の短縮化を図る」。
つまりこの特許はキャパシタの使用を前提としたものであり、「リチウムイオンバッテリーとキャパシタの両方を組み合わせ、それぞれのメリットを活かした構造」。
このキャパシタについては、ランボルギーニがそのハイブリッドカー「シアンFKP37」で採用しているもので、重量はリチウムイオンバッテリーの1/3で済むという優れものです。
ただ、これ単体でクルマを長時間動かすほどのパワーを得るのは難しく、できたとしても相当に高価になり、よってマツダは「全体でほどほどの価格に収まるよう」リチウムイオンバッテリーとキャパシタとのバランスを調整してきたと考えられます。※よってリチウムイオンバッテリーは3.5kWhとかなり小さい
ランボルギーニはHV/EV時代に向け「スーパーキャパシタ」「バッテリーをボディパネルに織り込む」技術を更に追求。加えてEV用に感情を掻き立てる”疑似サウンド”にも取り組み開始
なお、インホイールモーターのメリットとしては、駆動力を左右に分配するデフやドライブシャフトが不要ということですが、逆にデメリットとしてはバネ下重量が重くなること。
ただしマツダはインホイールモーターをブレーキとしても利用することでバネ下重量、そして車体全体での重量を抑えるということのようにも思えます(回生ブレーキによって発電も期待できる)。
こちらはロータリーエンジン搭載状態。
こちらはV型エンジン。
その構造は世界でも例を見ない
この場合、キャパシタはVバンク内に収められ、構造としてはポルシェやBMW、メルセデス・ベンツがV型エンジンで採用する(タービンがVバンク内にある)ホットインサイドVと同様。
これまでの「ハイブリッド」はエンジンとエレクトリック関連ユニットとを「分けて」考えることが多く、しかしこの特許では「一緒に」していることがレイアウト城の特徴。
これはマツダがSKYACTIV-Xにてガソリンエンジンとスーパーチャージャー、マイルドハイブリッドシステムとをひとまとめにしたのと同様の考え方だと言えそうです(あくまでも発想方法であり、構造は異なる)。
こちらは直列エンジン。
そして驚きなのが「水平対向エンジン」。
現在マツダはトヨタと業務提携を行っていて、トヨタは事実上スバルを子会社化していますが、そこでつながってきたということなのかも。
そしてこれは「マツダに水平対向エンジンを積む」可能性に加え、スバルやトヨタが今回の特許を使用するということも考えられます。
加えて、水平対向エンジンは「(高さが)低い」ので、その上にキャパシタを搭載しても重心を低いままに抑えることも可能で、これはまさに「スポーツカー向き」。
ひとつひとつ見てゆくとキリがないのでこのあたりにしておきたいと思いますが、まとめるとこういった内容かと思います。
・エンジンはフロントで、フライホイールがなくそのままモーターに直結され、そこからプロペラシャフト経由で車体後部のトランスミッションに伝達されて後輪を駆動(後輪のトラクションも確保できる)
・重量物であるバッテリーは車体中央後部寄りに搭載されて前後重量配分、そしてロールセンターを適正化
・キャパシタの活用でバッテリーを小型化でき、搭載自由度の高いキャパシタの特性を活かし、インホイールモーターを実現
車体前部のエンジンで後輪を駆動、車体後部のバッテリー(とキャパシタを補助として)で前輪を駆動するという、一見すると無駄のように見えかねないシステム構成ですが、よくよく見ていると非常に理にかなっていて、これはケーニグセグが最近発表した「ジェメラ」にも似たところがありますね(ただし前後は逆)。
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このシステムがどのクルマに搭載されるのかは現時点では全くわからず、次期86なのか(時期的には間に合わないように思える)、それともブランニュースポーツカーなのか、もしくはハイパフォーマンスセダンなのか。
マツダはすでにスーパーカーライクな構造を持つ特許を別に出願していて、様々な可能性が考えられるものの、とにかく続報を待つしかなさそうです。
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