| 工場内に保管しているパーツはなんと4万点 |
デロリアンの新車製造に必要なパーツの80%を保有
さて、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場したことにより、ある意味では世界で最も有名なクルマとなったデロリアン(正確にはデロリアンDMC-12)。
このクルマを作ったデロリアン・モーター・カンパニーは、1975年にゼネラルモータースを退社したジョン・ザッカリー・デロリアンによって設立されていますが、その3年後、個人投資家やディーラー、北アイルランド工業開発庁などの関係者との交渉を経て、ベルファストのダンマリーに最初の工場を開設しています。
なお、同氏はGM在籍中にポンティアックGTO、ファイヤーバード、シボレー・コスワース・ベガなどの代表的なマッスルカーを開発したことで知られ、1973年にはガルウイング+4ロータリーエンジンを持つ「ロータリー・コルベット」を試作したことも(これが後のデロリアンDMC-12につながったと考えられる)。
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デロリアンDMC-12は「夢のクルマ」だった
そしてこのデロリアンDMC-12はジョン・ザッカリー・デロリアンにとっての夢のクルマであり、そのために高い理想をもって開発にかかりますが、予算オーバーや経験不足といった難問をクリアしてなんとか発売にこぎつけたのが「唯一の市販車」、デロリアンDMC-12。
設計はロータス、デザインはジウジアーロ、そしてリアエンジンにステンレスの無塗装ボディという例を見ないクルマでもあり、開発費がかさんだために高額な価格設定を行なわざるを得なくなった結果として「ほとんど売れず」、倒産にまで追い込まれています。
ただ、販売不振については、デロリアンDMC-12の発売直後にジョン・ザッカリー・デロリアンが麻薬密輸に関与した疑いをかけられたという事実も関係しており、結果的に無罪放免となったものの、デロリアンの名はこのときすでに(再生不可能なまでに)地に堕ちていたようですね。
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現在のデロリアンは「別会社」
そして現在のデロリアン(本社はテキサス州ハンブル)は当時のデロリアンのパーツ等を買い取って設立された別会社。
略称は「DMC」ながらも「デロリアン・モーター・カンパニー」から「デロリアン・モーター・カーズ」へと社名を変更しており、設立したのはリバプール生まれのメカニック、スティーブン・ウィン氏。
なお、この「DMC」はほかにカリフォルニア、ミッドウエスト、フロリダにも拠点を持っており、4箇所にて活動を行っています。
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デロリアン・モーター・カーズの工場はこうなっている
そしてこちらがデロリアン・モーター・カーズの工場。
案内してくれるのはCEOであるスティーヴン・ウィン氏その人です。
工場敷地は全部で4万平方フィート、そしてファクトリー内にはデロリアンがずらり。
「4つ」あるDMCのうちいくつかは新車としてデロリアンを販売していますが、これは当時のパーツをアッセンブルして完成車としたもので、しかし現在アメリカではすでにホモロゲーションが失効しているため、「ショーモデル」としての限定的用途に限ってのみ登録できる、とされています。
このテキサスの工場では「新車販売」にさほど注力していなように見え、主には整備やメンテナンス、レストアを行っており、顧客のクルマを30〜50台ほど収容することができる、とのこと。
さらには世界中のデロリアンオーナーやショップへのパーツ配送も行っており、自社の配送部門では1日に40個ほどの荷物を世界に向けて発送しているようですね。
デロリアンDMC-12のパーツは豊富に保管されていた
動画を見ると、保有しているパーツは大きなものから小さなものまで多種多様。
その数なんと400万個。
なお、スティーヴン・ウィン氏は1995年にDMCを買い取ったそうですが、その際には「すべてのパーツと設備」を譲り受けたといい、こういったラックや収納設備も当時の(最初の)DMCが使用していたものだそう。
とにかくその在庫の豊富さには驚かされ、当事はそれだけジョン・ザッカリー・デロリアンが真剣にビジネスを行おうとしていたのだということがわかります(自動車業かで最も悪名高い人物だと言われるが、同時に本当にクルマを愛する人であったのだとも思う)。※現在のDMCが生産したパーツも少なくないとは思う
スティーヴン・ウィン氏によると、1台のデロリアンを組み立てるには2850個のパーツが必要だとされ、現在この工場にはその80%が保管されています。
旧DMCからは「すべて」を受け継いだとのことなので、おそらくは生産設備もそのまま残っているものと思われ、(サプライヤー経由ではなく)自社生産していたパーツの多くは今でも再生産が可能なのかもしれません。
ちなみにもっとも高価なのは「ドア」で、こちらも1000枚が保管されており、当面「欠品」の心配はなさそうですね。
なお、このドアは非常に重く、よって経年劣化によってダンパーがヘタってくる模様。
現在でもデロリアンの愛好家は数多く存在し、スティーヴン・ウィン氏はその要望に答えるためにも「ボディ、シャシー、ステンレスパネル」専用の整備施設を構築する予定だといい、これが完成すれば、更に効率的な整備やレストアが可能になると語っています(新車の製造も期待できるかもしれない)。
デロリアンについては「復活」の話などいろいろな噂がありますが、ぜひとも公式に復活を遂げてほしいものですね。
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