| ただ、相場の上昇に伴い、いつかは「修理してもモトが取れる」時が来るだろう |
フェラーリ308GT4はもともと数奇な運命をたどったクルマだった
さて、「フェラーリ」というと高嶺の花の象徴であり、手の届かない美女のような存在ではありますが、今回イギリスのebayにて、1978年式のフェラーリ308GT4が1万5000ポンド(約227万円)にて登場し話題に。
これもまた「納屋から発見された」貴重なクルマの一台ということになり、しかし見てのとおり「ほぼ朽ち果てた」状態です。
一般にフェラーリはどんな状態になっても価値が残り、引く手あまたの状態ではあるものの、この一台はなかなか買い手がつかないといい、その理由を考察してみましょう。
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フェラーリ308 GT4はこんなクルマ
このフェラーリ308 GT4はフェラーリ史上非常に重要な存在で、というのも「V8エンジンを搭載した最初の市販フェラーリ」だから。
発表は1973年のパリ・サロンにて行われ、販売期間は1973年~1980年、そしてエンジン搭載位置はミッドシップ、座席レイアウトは2+2。
ちなみに車体デザインは”20年にもわたる独占的な協力体制を築いてきた”ピニンファリーナではなく(ランボルギーニを多く手掛けたことで知られる)ベルトーネで、そのために他のフェラーリとは異なる角張ったデザイン、そしてウェッジシェイプを持っています。※フェラーリ自身もベルトーネ起用の特殊性について言及している
ディーノ246GT/GTSを補完する意味にて、そしてディーノブランドを強化するモデルとして、当初はフェラーリの名を与えずに「ディーノ308 GT4」という名称にて販売がなされ、シャシーナンバーの末尾は「偶数」。
参考までに、フェラーリにおいて、328以前までは、基本的に「レーシングカーおよびプロトタイプのシャシーナンバーは偶数、市販車のシャシーナンバー末尾は奇数」だったわけですが、この308 GT4については「ディーノ」ブランドからの販売だったからなのか、その例に漏れるということですね(308GTB/GTBでは奇数を採用)。
そして発売して3年後の1976年には「フェラーリ」の名が与えられることになり、これによって名称はディーノ308GT4からフェラーリ308GT4へ、そして同時にディーノブランドは消滅することに。
ディーノブランド自体は(当時財政的に苦しかったフェラーリが)販売拡大と利益拡大を狙った新ブランドですが、「V12エンジン以外を積むフェラーリはフェラーリとは呼ばない」というフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリの信念を反映したもので、そして同時に「フェラーリブランドを毀損しないため」にディーノブランドを完全に独立させることに。
ただしディーノの展開開始直後から「ディーノ=フェラーリ」という認識が世間に広まっていたといい、ディーノ注文時にフェラーリのエンブレムを装着するよう要求する顧客がいたり、そしてフェラーリもそれに応じていたとも言われるので、当初からフェラーリとディーノとの境界線は曖昧だったのかもしれません。
反面、ディーノ=フェラーリのディフュージョンラインという認識があったこともまた事実だったようで、ディーノブランドの不振を受け、エンツォ・フェラーリは「(1976年末に)ディーノの在庫車のエンブレムをすべてフェラーリに交換するよう」指示を出し、正式にフェラーリを名乗らせることで販売を回復させたという話も残ります。
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発見されたフェラーリ308GT4はこんな状態
そこで今回発見されたフェラーリ308GT4について、一見してわかるのが「もういつ廃車になってもおかしくない状態」ということ。
まんべんなく全体が腐っているという状態ですね。
そして今回、このフェラーリ308GT4をチェックするのはYoutubeチャンネル「Number27」のホストであるジャックさん。
そしてジャックさんいわく「これだけ腐っていることがある意味では驚きだ」といい、というのもフェラーリの多くは大切に乗られており、ここまで放置されることはまずないから。
そして放置に至るまでに別の人が購入したり(フェラーリを欲しい人はたくさんいる)、ショップが買い取ってレストアして販売することになり、フェラーリが放って置かれること自体が「非常に稀」。
もちろん、所有者にとっても換金性が高い資産なので、放置して腐らせるよりは、その前に売ってしまったほうがずっといい、ということになります。
ただ、世の中にはぼくらが想像もできないような事情があって、おそらくこのフェラーリ308GT4はそういった理由で放置された一台だと思われますが(そのあたりは触れられてない)、見たところ屋外に放置されていたようでもあり、部位によってはもう崩壊寸前。
ここまで来るともうパーツ交換では修復できず、全部分解してフレームを再構築するところから始める必要がありそうです。
ちなみにエンジンは「ナシ」。
このフェラーリ308GT4の内装はこんなコンディション
そしてこちらはこのフェラーリ308GT4のインテリア。
かなり損傷が激しいものの、外装に比べるとまだ「マシ」といった印象設けます。
ただしこちらもかんたんに機能を復元することは難しそうですね。
電装系はもう動かないと考えたほうがいいのかも。
このフェラーリ308GT4を引き取ることは難しい
そして最終的にジャックさんが下した判断は「このフェラーリ308GT4を購入することは割にあわない」。
現在フェラーリ308GT4の価値は(15年前に比べて)3倍にまで上昇しているそうですが、この破損状況を見るに、227万円で購入し、レストアして販売できる状況に戻したとしても「損失が出る」と判断したようですね。
ただ、ホイールはきれいな状態で残っており・・・。
ウインドウやメーター類などは比較的状態が良いので、それらパーツをバラ売りすれば購入代金を回収できる可能性があるようですが、それも自身がショップを経営していたり、販売ルートがないと手間や時間がかかることになりそうです。
実際のところ、これまでにも何度か希少なフェラーリが発見されたことがあるものの、しかしやはり「回収や輸送、修復費用を考えるとモトが取れない」として買い手がつかないまま遺棄される例もあり、同様の理由にてこのフェラーリ308GT4もずっと放置れてきたのかもしれません(そして今後もそうなる可能性が高い)。
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ただ、今後さらにフェラーリ308GT4の価値が上がることもじゅうぶん考えられ、となると「レストアする手間をかけるだけの価値がある」ときが来るかもしれず、それまでこのフェラーリ308GT4はひっそりと「買い手を待つ」ことになるのでしょうね。
世界で最も「錆びた」フェラーリを紹介する動画はこちら
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参照:Number 27