| おそらくはトヨタと手を組んだことによって、それぞれの役割分担が明確になり、「やらなくてもいいこと」が明確になったのだと思われる |
それによってマツダは得意分野へと注力することが可能となったのかも
申請された書面と図面には、スパーク制御圧縮点火(SCCI)をより制御しやすくする新技術の詳細が記載されていますが、これによってマツダは点火のタイミングを制御し、より効果的に燃焼の不均一性を防ぐことが可能となるもよう。
その結果、より少ない燃料でより大きな出力を得ることを期待でき、主に米国において「(現在の)スカイアクティブ-Xは出力が小さすぎる」という非難を多少なりともかわすことができるのかもしれません。
新しい「ツインスパーク」特許はこういった内容を持っている
スカイアクティブ-Xエンジンの特徴は、ガソリンエンジンの圧縮比を非常に高くしていることで、この高圧縮によってディーゼルエンジンでの自己着火と同じように、燃焼室内で均一な混合気を自発的に着火させるのに十分な熱が得られるわけですね。
そしてガソリンエンジンではより速く、より完全な燃焼が可能となり、NOxの排出量も低減されるものの、この技術は軽負荷・低速域において最も効果を発揮するため、エンジンに負荷がかかったり高回転になると破壊的なデトネーション(非制御的燃焼)を起こしやすくなる可能性があると言われます。
そこでマツダは、点火の開始を制御するスパークプラグを追加し、この”Spark Controlled Compression Ignitionシステム”の頭文字をとって、SCCIと名づけた構造を出願していて、具体的には燃焼室にプレチャンバーとスパークプラグを追加することで上述の課題を解決しようとしているわけですね。
このSCCI採用によって軽負荷・低回転走行時には圧縮着火のみで走行し、この際にはスパークプラグへの点火を完全に切ることになるのですが、エンジンが低負荷・低回転といった状況下では、圧縮時の熱と圧力だけで燃焼室内の混合気を一気に着火させることで極めて希薄な混合気を使用することができ、燃料の節約と排出ガスの低減が可能となるそうで、この技術は別途「HCCI(Homogeneous Compression Charge Ignition)」と命名されています。
しかし、最も興味深いのは、このガソリンエンジンが軽負荷時にはスパークプラグを使わずに走るという点ではなくその構造にあり、このマツダの新型エンジンはスパーク点火(SI)システムのために1気筒あたり2本のスパークプラグが組み込まれており、そのうちの1本は燃焼室の上部にある3つの炎伝達孔を持つ小さな副室内に隠されています。
吸気行程においてエアが燃焼室に吸い込まれると、燃料もそれにタイミングを合わせて燃焼室に直接噴射されて効果的に混合されるわけですが、この混合気はそこで圧縮され、一部はトランスファーホールから二次燃焼室に入り、二次スパークプラグの先端を取り囲むことに。
マツダはこの特許によってスカイアクティブXエンジンの「トルクの谷」を解消
シリンダーに点火する場合、通常と同じく一次燃焼室の主スパークプラグが先に点火されて燃焼プロセスを開始しますが、その一瞬後(運転状況によっては同時)に副プラグへと点火され、小さな燃焼室内の混合気を超高温のプラズマに変え、3つの伝達孔から主燃焼室へと送り込むという構造を持つようですね。
この超高温の炎が副室から主室に噴出することで、主点火のスピードが上がり、主室内の残留ガスを完全に燃焼させ、クリーンな排ガスを実現するといい、スカイアクティブXの開発時に問題となった、HCCIモードとSIモードの切り替えの際の「トルクの谷」もこの技術によって解決されています。
これらはすべて、今回の特許にある「圧縮着火の段階を調整し、デトネーションを防ぐための追加のスパークプラグ」によって解決されており、この特許を使用して製造されたエンジンでは、2本のスパークプラグの点火タイミングを変えることで、この移行期をスムーズにし、スーパーリーンHCCIモードとリーンSIモードの切り替え時のトルクカーブを均等にすることができるのだそう。
なお、マツダは(電動化戦略を発表したものの)EVに積極的とはいえない自動車メーカーのひとつですが、今回の特許は「まだまだガソリンエンジンに将来性を感じており、より良くしようとしている」という一つの証左となりえるもので、マツダとしてはガソリンエンジンの寿命を伸ばすことを絶えず考えているようですね。
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参照:CARBUZZ