| このレポートの内容は衝撃的ではあるが、ボクは「現実的であろう」とも考えている |
トヨタの考え方も理解でき、そしてEV以外の未来が来るのかもしれないが
さて、「2040年には、トヨタの自動車販売台数が400万台にまで落ち込み、逆にテスラの販売台数は800万台に達して業界トップになる」という衝撃のレポートが登場。
現在トヨタの生産台数は年間1,000万台くらい、そしてテスラは131万台くらいなので、ここ17年で大きな変化が生じると予測されているわけですが、EVのみに限ると、2025年にトヨタの販売台数は50万台、そしてテスラの販売台数は240万台くらいになるだろうという別のレポートもあるくらいなので(このレポートでは、トヨタのEV販売は2025年で世界10位だと見積もられている)、多くの国や地域でガソリン車はじめ内燃機関搭載車の販売が禁止される2035年から5年が経過した2040年では「トヨタ400万台、テスラ800万台」というのはけっこう現実的な数字なのかもしれません。
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トヨタが発表した「EV推進計画」はそんなにスゴくない
記事ではまず、2021年12月にトヨタが発表した「バッテリーEV戦略に関する説明会」での内容に触れており、ここでトヨタが大々的に掲げた「2030年までに30車種のEV発売」「2030年までにトヨタとレクサスで350万台(年間)のEVを販売」「2035年までにレクサス全車を完全EV化」「電動化に8兆円を投資」について検証していますが、そもそも(トヨタと世界自動車販売1、2を争う)フォルクスワーゲンだと2030年に70車種ものEVを発売する計画を推進していること、そしてフォルクスワーゲンの計画だと2030年には500万台のEVを販売する計算になること、さらにメルセデス・ベンツ、ヒョンデ/ジェネシス、ロールス・ロイスなど多くのブランドが2030年までにEVブランドに切り替わる予定であること、トヨタの「8兆円」にも及ぶ投資はVWの半分の規模であることを示していて、つまり「トヨタの計画はそこまで目を引くものではない」と述べています。
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これについては「もっとも」なところで、しかし市場としては「トヨタがようやくEVに本腰を入れた」として株価が(当時)大きく跳ね上がっています。
なお、この記事にて示している「2040年にはトヨタの販売が400万台、テスラが800万台」という数値については、米投資銀行であるパイパー・サンドラー社が公表した調査結果を参照しているそうで、これによると2040年でもっとも多くの自動車を販売するのはフォルクスワーゲンであり、これはシェア11%、その台数は920万台だと算出されています。
これに次ぐのがテスラの800万台ということになりますが、つまり2040年にはテスラは世界で2番めの自動車メーカーに成長しているだろう、と推測されているわけですね。
このシナリオは現実的
ぼくはこのシナリオについて「現実的」だとも考える一方、「2040年における自動車業界ナンバーワンはBYDだろう」と推測。
ただ、このBYDはさておいても、トヨタとテスラの販売が逆転するということについては同意するよりもほかはなく、その理由としてはその「コスト」と「技術」。
まずコストにおいては、先日トヨタ自らが「新しく開発したEV専用プラットフォーム、E-TNGAはすでに世界レベルのコスト競争について行けない」としてEV専用戦略の再考(E-TNGAを捨て、安価なコストで製造できる新型プラットフォームを開発する)を決めたことがこれを端的に示しています。
ただ、これについては「トヨタの英断」だとも考えており、E-TNGA、そしてトヨタの(現在の)ブランド力にすがらず、正確に状況を判断し、これから起こりうる戦争に備えるという姿勢については高く評価しています。
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しかしながら、この「低コストプラットフォーム」の投入については今から開発を行うことになるため、実際の市場投入は「5年後」くらいになると言われており、しかし5年後となると、現在のあまりに速いEV関連技術の進化速度を考慮した場合、「投入した頃にはまた時代遅れ」になるのかもしれません。
その一方、EV業界におけるコスト戦略のトップを走っているのがテスラですが、こちらは共通化、効率化をキーワードにどんどん構造や設計をシンプルにし、その工程と使用するパーツの数を減らし続け、現在の車両原価は2017年に比較して「半分以下」。
さらにテスラはこれを半分にする計画を持っているといい、正直このレベルにはトヨタはもちろん、フォルクスワーゲンもついてこれないかもしれません(よって、2040年にVWのがナンバーワンになるという予測に対し、ぼくは懐疑的である。よってテスラに対抗しうるのは内製率の高いBYDだと考えている)。※テスラ最大の武器はこの「コスト」だとも考えられる
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そしてもうひとつの「技術」につき、これは「長くやっていればやっているほどノウハウが貯まる」のは否定できない事実だと考えています。
つまり、いち早くEVの実用化を行ったテスラ、ガソリンエンジンを切り捨ててエレクトリックブランドに転身を図ったBYDが(製品改良のための)より多くの情報を集めていることは間違いなく、トヨタと同じように「ガソリンだけがカーボンニュートラルに対する解決方法ではない」と公言するBMWですら早い段階からEVの販売を行い、そして現在も新世代EV「ノイエクラッセ」の発売に向けて動いており、BMWもやはり多くのノウハウを持ち、それを生かした製品づくりをしているものと思われます。
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ここからトヨタが巻き返すのは至難の業だろう
そして各社ともにEVに関する研究を積むうちに新しい事実もどんどん発見されており、たとえば「(ワンペダルドライブによる)回生ブレーキで電力を貯める」ことが実は航続距離の伸長につながらないということもその一つ。
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つまり常識が覆されてしまったということになりますが、各社の出願する特許を見ても、これまでの「常識外」の技術が多数見られます。
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そしてこういった技術は「実際にやってみないと」わからない部分であり、しかしながらトヨタは今のところEVに関する経験が少ないために「EVに関する進化」が他社に比較すると遅いということが考えられます。
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ただ、5年後となるとその間にテスラはもちろんフォルクスワーゲン、GM、フォード、ステランティス、そして中国からはBYDやGeelyといった会社が「実際にEVを販売し、そこから得たフィードバック」をもとに、さらに優れたEVを開発し投入している可能性が高く、よってトヨタがいかにこれらを追ったとしても、ライバルたちはそれよりも速く先に行くんじゃないかと考えているわけですね。
これが「2040年にはトヨタの販売が400万台、テスラは800万台」という現実的な理由と根拠ということになりそうですが、もちろんもっとも危機感を抱いているのはトヨタだと思われ、しかしこの期に及んでも「EVだけに注力するのは危険」という発言も見られ、まだまだ「煮え切らない」状況であるようです。
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このような環境だと、フォルクスワーゲンのように「ガソリン車を捨てる」覚悟を決め、さらにはメルセデス・ベンツのように「ガソリン車の工場をEV用にトランスフォームする」と宣言し実行している他社には追いつくことができないのかもしれず、つまり「逃げ道」を確保しているトヨタ、自ら後戻りする道を断ってしまったフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツとでは、自ずとEVに対する真剣さが変わってくることになり、これが結果につながってくるのかもしれません。
もちろん、トヨタの「なんとしても雇用を守らねばならないので、リスクヘッジは必要」という考え方も理解でき、ここから代替燃料や水素の普及など”ワイルドカード”が発動し、EVのみに未来を絞っていたほかの自動車メーカーがバッタバッタと潰れてゆく可能性も否定できませんが、とにかくこのままでは「トヨタはヤバい」ということは間違いなく、状況を見守りたいところですね。
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