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フェラーリの歴史とは「パワフルなエンジン、軽量な車体」の追求そのもの。創業2年目にはル・マンで優勝を果たしてその哲学を証明し、現代でもそれは変わらない

2023/08/08

フェラーリ

| フェラーリは創業当初から革新的な考え方、そしてそれを実現するための技術を持っていた |

その求道者としての姿勢はエンツォ・フェラーリがこの世を去った後も変わらない

さて、スポーツカーそしてレーシングカーの世界では「軽さこそが速さ」とはよく言われるものの、フェラーリほどそれを実践してみせた自動車メーカーはないかもしれません。

というのも、フェラーリは1947年に設立されたわずか2年後にル・マン24時間レースにて優勝を飾ることになりますが、この際の優勝車である166MMの排気量はわずか2リッターしかなく、ル・マン24時間レースで優勝したクルマのなかでは「歴代最小の排気量」であったといいます。

ただ、エンツォ・フェラーリは「V12こそ最良のエンジン」という思想を持っており、このエンジンは2リッターながらもV12であったというのが非常に興味深いところでもありますね(この166MMは、歴代最小排気量での優勝車となったのと同時に、V12エンジンを積む初の優勝車となり、エンツォ・フェラーリの信念の正しさを証明している)。

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ダビデがゴリアテを制する

なお、当時のフェラーリが「2リッターエンジンを積んでいた」「ライバルよりも排気量が小さかった」というのはにわかに信じがいた事実ではありますが、これはおそらくエンツォ・フェラーリが「マシンのバランス」を考えて設計したためだと思われ、というのもこの166MMの車体重量がわずか650kgに留められていたため。

もちろんこの重量はライバルに比較しても圧倒的に軽く、エンツォ・フェラーリは「小型軽量なスポーツカーこそが世界を制する」と考えたのかもしれません(奇しくもこの考え方はポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェと同じである)。

Ferrari

この「軽量でコンパクトな、そして新しい自動車メーカーのクルマが、並み居る大排気量の、大御所自動車メーカーのクルマを打ち負かした」という事実は瞬く間に世界に知られることになり、当時「ダビデが巨人ゴリアテを倒した」とも表現されたそうですが、これが可能となったのは「直近の世界大戦によって大きな技術的進歩がもたらされ、166MMは数々の新技術を取り入れていたから」だとも言われています。

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いつの世も「戦争は科学技術を一気に発展させる」とはいいますが、166MMにおいて取り入れられた新技術のひとつは「空力」。

これはおそらく最新の航空関連技術を取り入れたものだとも思われ、車体構造に(ミラノのコーチビルダーであるカロッツェリア・トゥーリングが開発した)スーパーレッジェーラ(スーペルレッジェーラ)製法を取り入れていたことにも幾分関連していたのかもしれず、というのもカロッツェリア・トゥーリングは航空産業に深い関わりを持っており、ここから空力的なアドバイスを受けた可能性もありそうです(ただしこの時代のクルマはナゾが多く、事実は定かではないのがちょっと残念)。

ちなみにこのスーパーレッジェーラ製法は、細いチューブにて立体的な車体形状を成形し、その上から全体的な強度を高めることができるようパネルを貼るというもので、もちろん航空機にも採用される工法です。

フェラーリ166MM
Ferrari

なお、「小排気量V12エンジン」についても触れておくと、このエンジン各部には軽合金が使用されていて、可動する構成部品の質量が小さくなることで高回転化が可能となり、そして高回転になればパワーを引き出すことが可能になるという考え方のもとで設計されていたそうですが、「排気量を小さく取った」のは(おそらく)各パーツにかかる負荷を小さくし、それによって軽合金の使用を可能にするためであったと推測しています(さらに言うならば、小排気量高回転型エンジンは重量の重いマシンとは相性が悪く、小型軽量な車体ありきでこのエンジンが設計されたものと思われる。大排気量化ではく高回転化でパワーを引き出したのは面白い)。

つまるところ、フェラーリの哲学とは「パワーと軽量化とのバランス」にあったのかもしれません。

さらにフェラーリは軽量化を追求する

そしてこの「軽量化とパワー」に関する哲学は現代にまで一貫して守り続けられており、1975年に登場した308GTBの初期モデルはフェラーリではじめて(そして唯一)グラスファイバー製のボディを採用して車体重量を1,000kg程度に収めることに成功しています(生産性等の問題によって、のちにスチール+アルミボディとなる)。

フェラーリ初、そしてフェラーリ唯一の「グラスファイバー製ボディ」を持つ308GTS初期モデルが競売に。内外装は1975年発表時のイメージカラーへとレストア済み
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さらに1984年の288GTOではF1マシンからフィードバックを受けたコンポジット素材が用いられており、V8ターボエンジンを搭載しつつも1,160kgという軽量性を実現。

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「フェラーリをよく知らない人には、308GTBとよく間違えられます」。フェラーリが公式に288GTOについて語るコンテンツを公開
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さらにF40ではボディのほぼ全てにケブラーとカーボンファイバーを使用しており(量産モデルとしては世界初である)、その車体重量は驚異の1,100kg。

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さらにF50になるとF1マシンと同じくカーボンファイバー正モノコックを採用し・・・。

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エンツォフェラーリでは量産車初のカーボンセラミックディスクブレーキが導入されることに。

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このほか、1994年に発売されたF355のV8エンジンには(166MM同様)可動部分の軽量化を目的としてチタン製コンロッドが用いられていますが、その後もカーボンファイバー製ホイール(488ピスタで初採用)、そしてカーボンファイバー製ルーフ(プロサングエに取り入れられている)の採用など、フェラーリは今日に至るまで果てしなき軽量化を推進してきたこともわかります。

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こうやって見ると、時代が変わり、クルマのパワーやレイアウトも変化したものの、「強力なエンジン、そしてそれにマッチした軽量な車体」というエンツォ・フェラーリが掲げていた当初の思想が今なおフェラーリの根幹にあることも理解でき、「パワフルなエンジンはストレートにおいてクルマの速さを際立たせることになるが、軽量な車体は直線だけではなくあらゆる状況で早く走れるようになる」を地でゆくのがフェラーリということになりそうですね。

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参照:Ferrari

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