| ベクターはわずか2モデルのみを発売して消滅したスーパーカーメーカー |
そしてその性能は世間を驚かせるに十分だった
さて、米国初のスーパーカーブランドと言われたベクターが製作した「アブテックWX-3」が競売に登場。
このアブテックWX-3はプロトタイプとして2台が製造されたのみにとどまる非常に希少なクルマですが、1992年のジュネーブ・モーターショーにてプロトタイプとして展示されており、しかし同年にメガテックへと買収されたために市販がなされなかったクルマです。
ここでその経緯とともに画像を見てみましょう。
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まず、この「ベクター」は1971年に空力デザインを行う設計会社としてゼラルド・ウィーゲル(ジェラルド・ワイガートと表記されることも)氏が興すことになり、1978年には「W2スーパーカーコンセプト」を発表するものの資金が足りずに市販できず、しかし1988年になってようやく「W8」を販売することに(17台が生産されている)。
その後同氏が取り掛かったのが後継モデルとなるWX-3で、その際に生産されたプロトタイプがこのアブテックWX-3。
ただ、不幸なことに同年には(当時ランボルギーニを所有していた)インドネシアのメガテックがベクターを買収し、そこでスタイリングが調整され、ランボルギーニ・ディアブロベースへと変更されて「M-12」として1995年に市販されることに(14台が生産されている)。
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よってアブテックWX-3とM-12とは「外観がよく似ているものの、その中身や設計思想は全く異なるクルマ」ということになりますね。
なお、オークション開催元によると、1992年のジュネーブ・モーターショーにて展示された際には「ドライブトレーンが入っておらず、しかし翌年には1,000馬力を発生する7リッターV8ツインターボが搭載された」とのこと。
ちなみに市販車初の「1,000馬力超え」となったブガッティ・ヴェイロンが登場したのは2005年のことなので、1993年に(コンセプトカーといえど)1,000馬力を達成していたというのは驚き以外の何ものでもありません。※エンジンルームには放熱効果を高めるため、マクラーレンF1同様に金箔が貼られている
このベクター・アブテックWX-3のボディはケブラーとカーボンファイバーにて構成され、明確なエッジを持っていたベクターW8とは大きな差異がみられます(ただしプロポーションはよく似ている)。
アブテックWX-3はシザースドアを採用しており、これはM-12にも引き継がれた構造。
ヘッドライトはリトラクタブルで、雰囲気的にはまさに90年代のスーパーカーといった感じですね。
レストアにかかったコストは30万ドル
なお、このアブテックWX-3のレストアにかかったコストは30万ドル(現在の為替レートだと約4200万円くらい)だとされ、2019年から2021年にかけて作業が行われたのだそう。
たしかに内外装は比較的美しい状態を保っており、特に内装はけっこうきれい。
ステアリングホイールや・・・。
デジタルパネル、そして・・・。
各種スイッチ類はW8との共用となるようですね。※このあたり、M-12では(ランボルギーニ・ディアブロがベースなので)全く異なるインテリアを持っている
そしてアブテックWX-3のインテリアにおける最大の特徴は「3シーター」ということ。
運動性能を追求したスーパーカーにおいて「サイドサポートなしのベンチシート」採用というのはかなり衝撃的です。
なお、競売の開催元であるブロードアロー・オークションによれば「このクルマは市販バージョンではないため、現代の交通状況では、限界性能に注意する必要がある」。
おそらくはドライバーエイドのたぐいは無いものと考えてよく、しかし1,000馬力を発生するということを鑑みるに、とんでもなく運転が難しいのだとも考えられます。
ちなみにですが、予想落札価格は最高で200万ドル(約2億8000万円)というエスティメイトが出ており、それだけの価値を持つと評されるクルマということになりますね。
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