テスラが北米にてモデル3を再値下げ。「180万台」達成のために販売を促進するものと見られ、なぜテスラのみがこういった「頻繁な上げ下げ」ができるのか

｜　テスラは「製販一体」となっている構造が競合他社とは全く異なる　｜

まさかテスラの直販体制がこういったときに生きてこようとは

さて、テスラが北米市場にて大幅な値下げを行ったとの報道。

この理由については大きく分けて2つあると言われており、ひとつは「販売を加速するため」、そしてもうひとつは「在庫の処分」。

参考までに、テスラはつい先日、2023年第3四半期の決算を発表していますが、ここではわずかに目標値を下回ったことが嫌気され、結果として株価が下がるといった現象が生じていたわけですね。※ただし販売減少の主な理由はモデル3のフェイスリフトのために生産設備を入れ替えていたためで、これは事前にアナウンスされていた

テスラは「年間180万台」という目標を引き下げない

なお、テスラは2023年において180万台を販売するという目標を掲げていますが、この目標につき、第3四半期の「販売減」にもかかわらずテスラはこれを堅持し（引き下げずに）引き続き180万台を目指すとしています。

よって今回の値下げについては販売を加速させる意図があると見られていて、この値下げによってモデル3のベース価格は40,240ドルから38,990ドルへ。

一方、モデル3ロングレンジ・バージョンは47,240ドルから45,990ドルに値段が下がり、最高スペックのモデル3パフォーマンスについては、2,250ドルの値下げによって50,990ドルという設定に。

テスラはこれによって「テスラで二番目に売れている」モデル3を求めやすい価格に設定とし、販売を加速させたいという意図があるものと思われます。

そしてもう一つの値下げの理由は「在庫一掃」。

テスラは先日、上海ギガファクトリーで生産しているモデル3のフェイスリフトを行っていますが、テスラのお膝元である米国ではまだ従来モデルを販売中。

しかし早晩、北米にて生産されるモデル3もフェイスリフトを迎えるものと思われ、よって生産した在庫車や、仕入れたパーツを使用してまだこれから生産しなくてはならない車両を”売り切る”必要があるものと思われます。

テスラの価格戦略は「前代未聞」

なお、自動車業界において、価格を「上げ下げ」すること、しかもここまで頻繁に価格調整を行う例は珍しく、テスラ以前は皆無であったと言っていいかもしれません。

参考までにですが、アメリカではマーケティングにおける「4P」を重視する例が多く、その4Pとは「プレイス（場所）」「プロダクト（製品）」「プロモーション」「プライス」であり、モノを売るにはこれらの要素、そしてバランスが重要だとされています。

そしてもちろんこの中の「プライス」とは製品の価格を指していて、消費者に買ってもらえるような価格設定が必要であり、その価格とはメーカー（もしくは販売者）が勝手に決めるべきものではなく、需要と供給そしてライバルとのバランスによって決まるというわけですね。

ただ、需要が高くなったから価格を上げる、需要が減ったから価格を下げるというのは「言うは易し、行うは難し」の典型であり、これまでの自動車業界だと「自動車メーカーがクルマを作り、別法人である自動車ディーラーがこれを販売する」というスタイルが定着していて、そのため自動車メーカー側が価格を調整することは困難です。※一方、価格をコントロールしやすい環境にある業界では頻繁に販売価格が上下する

しかしながらテスラの場合は競合他社とは異なって「メーカー＝ディーラー」でもあり、よって価格の上げ下げを一方的に行うことができるという理由があり（メーカーはディーラに対して販売価格を矯正できない）、この「（もとはコスト削減のために採用した）直販スタイル」が思わぬところで効果を発揮することになったのだとも考えられます。

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