
| ネット上の話題を一気にさらった割には全く株価が上昇しなかったが |
それでも多くの人に改めてテスラの持つ技術力を示すこととなったのは間違いない
0-60mph(約0-96km/h)加速で1秒を切り、宙に浮き上がったりバレルロール(横回転)をこなすという異次元のパフォーマンスとともにお披露目されたテスラの新型「ロードスター(Roadster)」。
SpaceXのロケット技術を応用した冷圧ガス(コールドガス)スラスターの搭載が話題を呼んでいますが、その爆発的な推進力を維持・再利用するための裏側には大きな課題が存在することが明らかになったというのが今回のニュース。
ここではスラスターのブースト時間や充填プロセス、そしてテスラが目指す技術的ブレイクスルーについて見てみましょう。
この記事の要約
- テスラの車両エンジニアリング担当VPであるラース・モラヴィ氏により、新型ロードスター「Thrust」モデルのスラスターブースト持続時間は約5秒間であることが明かされる
- 高圧窒素タンクの再充填には現在2〜6時間を要しており、テスラは市販化に向けて30分未満への短縮を目指して開発を進めている
- イーロン・マスクCEOは「特殊な推進剤を必要とせず自社で空気を充填できる」と主張しているが、高圧窒素供給システムとの整合性など謎が多く残されている

テスラ 新型ロードスター(スラスター仕様)の概要
海外自動車メディア『Top Gear』のウォークアラウンド動画において、テスラで車両エンジニアリング担当副社長を務めるラース・モラヴィ(Lars Moravy)氏がスラスター搭載仕様の技術的詳細を語っており、まず新型ロードスターには、(スラスター無しのバージョンに加え)リアに4基のスラスターを備えた「Thrust(スラスト)」仕様、そして浮上・空中旋回用に10基のスラスターを備えた完全1人乗り・超限定仕様の「Rocket(ロケット)」仕様が設定されています。
しかし、スラスターから高圧ガスを噴出させて圧倒的な推進力を得る「Thrust」仕様において、一度にブーストを行える時間は約5秒程度にとどまることが判明したというわけですね。
特徴・スペック・デザイン
タイヤのグリップ力に依存せず、空気の推進力で強烈な加速を生み出すコールドガススラスターとダウンフォースファンのメカニズムは以下の通りとなっていて・・・。
- 約5秒間のブーストと長い充填時間:「Thrust」モデルに搭載された200Lの高圧タンクは、外部の高圧窒素供給源に接続して充填を行う現状のシステムだと「再充填に2〜6時間」という膨大な時間を要することに。テスラはこの充填時間を最終的に「30分未満」まで短縮することを目標としている
- 「Rocket」仕様のモンスター構造:さらに過激な「Rocket」仕様では、助手席の位置に400Lの追加圧力容器が収められ、合計600Lのタンク容量を確保するために完全な1人乗り(シングルシーター)構造となっている(運転席の横にこのタンクがあるのはちょっと怖い)
- 独立して作動する吸気ダウフォースファン:スラスター(高圧ガス)とは別に、車体下部には電動の吸気ファン(ファンタスティック・ファン)が備わっており、これは車底の空気を強力に吸い出してダウンフォースを生み出す仕組みであり、バッテリーパワーによって稼働するため、スラスターのガス残量がゼロになっても強力なグリップ力を保持し続ける※ただ、このファンを稼働させるにも相当な電力が必要となることが予想され、この稼働時間、作動が航続距離に与える影響についても気になる
| 項目 | テスラ 新型ロードスター(Thrust / Rocket要約) |
| スラスター噴射持続時間 | 約 5 秒間 |
| 窒素再充填時間(現状) | 2 〜 6 時間(目標値:30分未満) |
| 0-60 mph (約0-96 km/h) 加速 | 「Thrust」:0.9秒未満 / 「Rocket」:0.59秒未満 |
| スラスタータンク容量 | 「Thrust」:200 L / 「Rocket」:600 L(助手席に400L追加) |
| 乗員定員 | 「Thrust」:2名 / 「Rocket」:1名(1人乗り) |
| ファンシステム | 電動式吸気ファン(スラスター用タンクとは独立駆動) |
競合比較・市場での位置付け
モータースポーツやEVハイパーカーの歴史において、外部へとガスを噴射して車体を加速・制御する量産型EVは前例がなく、たとえばマクマートリー「スピアリング」はフロアに内蔵したファンによる吸気(ファン・カー構造)でタイヤの物理限界性能を高めていて、しかしテスラはファンによる吸引に加え、SpaceX由来のロケットスラスターを組み合わせることにより「タイヤグリップの物理限界(約1.2〜1.5G)を超える加速(3G以上)」を実現しており、パフォーマンスの次元そのものが他のハイパーカーと大きく異なります。
補足情報
今回の発表から見えてくるのは、イーロン・マスク氏の掲げる理想と現場のエンジニアリングの乖離、そして市販化に向けた疑問点で・・・。
- 「窒素充填」と「車載空気コンプレッサー」の矛盾:Top Gearの取材に対してモラヴィエンジニアが「外部の専用高圧窒素ラインから充填する」と説明したのに対し、イーロン・マスクCEOは「外部の特殊な推進剤は不要で、車自体のコンプレッサーで自動的に空気を再充填(Puff itself up)できる」と公言。発表イベント前に撮影された動画の仕様(窒素供給)と、マスク氏が語る将来の市販仕様(空気自給)のどちらが実現するのか、今後の説明が待たれるところである
- 実用性とロマンのトレードオフ:僅か5秒間の加速やジャンプ性能のために荷室や助手席を潰し、さらに充填に長時間を要するというパッケージングは、実用性の観点からは極めて非効率的。しかし、「世界で最も速く、宙を飛べるクルマ」というエンターテインメント性と技術的挑戦こそが、テスラというブランドの真骨頂と言える(なんといってもロケットのテストのために先代ロードスターを宇宙へと送ったほどである)。
結論
約5秒間の異次元体験と数時間に及ぶ再充填時間。
テスラ新型ロードスターのコールドガススラスターは、魔法のようなパフォーマンスを誇る一方で、市販車としての高いハードルを提示しており(それでもこうやって「飛んだ」だけでも革命的である)、テスラが目標とする「30分未満の再充填」や「走行中の自動空気生成」をどのようにクリアして2028年予定の市販化へこぎ着けるのか、SpaceXのロケット技術と自動車工学が融合する今後の展開から目が離せない、といった状況です。
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参照:Topgear, Tesla











