| イタルデザイン アズテックはそもそも市販を考慮しないデザインスタディだった |
アウディ製のエンジンはじめ各種アウディ製パーツを使用し、アウディのチューナーとして知られるMTMが生産を担当
さて、ぼくの大好きな「イタルデザイン・アズテック」の程度良好な個体がオークションへと登場予定。
このアズテック(AZTEC)は1988年のトリノ モーター ショーにて初公開されたコンセプトカーですが、その後に日本の建築家である宮川秀之氏が販売権を獲得し、アウディのチューナーであるモトーレン・テクニック・メイヤー(MTM)へと発注することで20台もしくは25台が製造されたと言われます(当初の計画では50台が作られる予定だった)。
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イタルデザイン・アズテックはこんなクルマ
このイタルデザイン・アズテックはクルマというよりはオブジェなどの芸術作品に近く、もとはというとジョルジエット・ジウジアーロが主催するイタルデザインの20周年記念を祝う3台のコンセプトカーのうちの1台として発表されたもの。
ポップアップ ヘッドライト、リアタイヤカバー(フェアリング)、左右で独立したコクピットとダブルキャノピー、カーボンファイバー製リアウイングなど、その時代における自動車デザインのあらゆるディテールを表現し、凝縮させた一台であると言えそうです。
そこで細部を見てゆくと、ウインドシールドには(あまり意味がないようにも思えるが、法規的に必要なのだと思われる)ワイパーも。
「フェンダー」ミラーは砲弾型。
ヘッドライトは下から「ニュッと」出てくるタイプ(けっこう珍しい)。
リアウイングはちょっと独特な形状のカーボンファイバー。
ハイマウントストップランプは「ウイングのステーの下」。
イタルデザイン・アズテックにはこんな装備がある
そしてこのイタルデザイン・アズテックの特徴とも言えるのがこのリアサイド。
なにやらSF映画に出てくる宇宙船の外壁のようですが・・・。
右側には油圧ジャッキとオリジナルのハルダラリーコンピューター、左側には取り外し可能な電動ドライバー、トーチ、(タイヤに空気を入れる)コンプレッサー、消火器などが収納されています。※ゴールドのペンにて、ジョルジエット・ジウジアーロのサインが入っている
両側のコントロールパネルにアクセスするには、指定されたコードを入力する必要があるといい、見た目の通り「SF的」ですね。
条項に際しては横開きのドアを開け、キャノピーを跳ね上げることで行いますが、おそらくはこれを「くぐる」ようにしてかなりきつい体勢を取ることになりそうです(カッコよく乗り降りすることは難しそうだ)。
これ以上キャノピーを跳ね上げるのは難しそう。
上述の通り、このアズテックはイタルデザインの創業記念モデルであり、本来は市販の予定はなく、デザインを行った当のジョルジエット・ジウジアーロですら「1988年のトリノ モーター ショーでプロトタイプが展示されたとき、それが実際のクルマになるとは想像するのが困難でした。したがって、アズテックが単なる静的なデザインスタディではなく、実際に公道走行可能になったことに非常に満足しています」とコメントしたほど。
なお、エンジンはアウディ・クワトロに積まれていた5気筒2おバルブエンジンで250馬力を発生。
見ての通り車体ミッドに搭載されますが、トランスミッションはランチア・デルタ・インテグラーレからの移植です。
車体構造はスチール製ラダーフレームにアルミニウム、カーボンファイバー、ケブラーのボディ外板を装着するというもの。
車体前後にはトランクが設けられるなど「意外と実用的」。
イタルデザイン・アズテックのインテリアはこんな感じ
そしてこのイタルデザイン・アズテックのインテリアは左右対称に見え、前から見ると前後の座席にステアリングホイールが装着されているように見えるのですが、右側に取り付けられるのはステアリングホイールではなく「グリップ」。
そしてその奥には(なぜか)ラリーコンピューター。
センターコンソールにはライト、シート、エアコンなどの操作系。
(当時の)インフォテイメントシステムはアウディ製(意外と先進的でびっくり)。
ドアサイドはマクラーレン・セナのような「シースルー」。
こちらが本物のステアリングホイールですね。
なお、これまでに中古市場へと登場したアズテックのボディはいずれもシルバーにペイントされているものの、インテリアはこのレッド、そしてほかにはグレーレザーを使用した個体も存在するもよう。
そしてメーターフードもSF的。
ちなみに左右座席間での会話はインカムを用いて行います。
オークション主催元のボナムズでは、このイタルデザイン・アズテックが最高で22万ドル(現在の為替レートで3250万円)で落札されるというエスティメイトを出しているものの、これは新車価格である1億円から大きく下がった数字であり、ぼくとしては「もうちょっと高く評価されてもいいんじゃないか」と考えています。
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参照:Bonhams