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ロールス・ロイス「ハイブリッドには何の魅力も感じません。なぜならHVは我々と顧客が求める静かさ、無限のパワーを実現できない」。よって”V12とBEV”という極端な構成を継続するもよう

ロールスロイス

| さすがにロールス・ロイス、言うことも顧客の性質も全く異なる |

ロールス・ロイスが提供するもの、顧客が求めるものは創業当初からブレてない

さて、ベントレーは「もはや富裕層はEVに興味を示さず、内燃機関を求めています」と述べ、高級EVの祖であるリマックも「もはやEVはクールではなく、富裕層は見向きもしない」と語る状況ですが、”人類最高のクルマ”を作るロールス・ロイスは「電動化こそが未来」と信じて疑わず、多くの自動車メーカーが採用するハイブリッド強化政策には見向きもせず、ハイブリッドを経ずに「ピュアエレクトリック」へとシフトするもよう。

つまりロールス・ロイスは2030年まで「V12ガソリンエンジンか、ピュアエレクトリックか」という世にも稀な両極端のパワートレーンしか用意しないということになりそうです。

「ハイブリッドはロールス・ロイスが求める要件を満たさない」

そこで気になるのがなぜロールス・ロイスがハイブリッドパワートレーンを使用しないのかということですが、ロールス・ロイスの新任CEO、クリス・ブラウンリッジ氏によれば「ハイブリッド技術はロールスに関連する浮遊感や無尽蔵のパワーを提供しないため」。

これは納得ができる部分であり、もともとロールス・ロイスは「存在感を消せるほどの静かさ(これがファントム / ゴーストなどの幽霊系ネーミングにつながる)」「顧客が求める以上のパワー」を提供することをヨシとしており、よって静かさを追求したがためにV12エンジンを採用したという歴史があるうえ、創業者は(100年以上も前に)エレクトリックモーターが”もっとも静か”なために動力源としてベストな選択であると述べたほど(ただしその頃は充電インフラがなく、バッテリー性能も低かったので実際に市販車には搭載していない)。

そして「パワー」についてはロールス・ロイス特有の”パワーリザーブメーター”の存在がその考え方を示していて、これはタコメーターの代わりに用いられ、「エンジンパワーをあとどれくらい使えるか」を示す計器です(停止時は100%の残量を指し、負荷がかかると数字が減ってゆく)。

よってロールス・ロイスはこの「静かさ(スムーズさ)」「パワー(あるいはトルク)」を非常に重要視しているということになりますが、「ハイブリッドではそれは不十分」だと考えていて、たとえば(ベントレーのウルトラパフォーマンスV8ハイブリッドのように)エンジンをダウンサイズすると振動が大きくなり、そしてハイブリッドという制約のもとで使用するエレクトリックモーターでは十分なパワーを得られないと認識しているのだと思われます。

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「スペクター」が一つの正解である

よってロールス・ロイスは今後「ピュアエレクトリック」へとまっしぐらに移行することになると思われますが、実際のところ2028年までに3つの新型車が登場するとされ、そのうち2つは「ピュアエレクトリック」、残る一つは「V12」。

つまりハイブリッドという選択肢はロールス・ロイスにはなく、上述の通り2030年にV12エンジンを廃止した後は「完全電動ブランド」となるわけですね。

ただ、この「2030年」についてもクリス・ブラウンリッジCEOは少しバッファを持たせたいと考えているようで、「2030年までに全電動化する能力がありますが、その期限は顧客よってに導かれます。世界の各地域によって、パワートレインの進展は異なりますので、それに対応できることが重要です」と述べ、場合によっては2030年以降もV12エンジンが生き残るのかもしれません。

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ロールス・ロイスのV12エンジンは「2030年まで製造」。その前の2027年は新型エレクトリックSUV、2028年にはファントム後継EVを発売し電動ブランドへとまっしぐら

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しかしながら特筆すべきは「ロールス・ロイスの顧客は電動化を受け入れている」という事実で、それは「ロールス・ロイス愛好家は、静かでパワフルなクルマを求めており」、それにマッチするのが電動パワートレーンということを十分に理解しているからなのだとも考えられます。

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実際のところ、2023年1月にロールス・ロイスは「スペクターの需要が非常に強いため、生産量を増やすことを検討している」と発表し、米国市場向けモデルの初期の納車待ち期間は最大18か月であったものの、その後(生産能力が増強され)6か月に短縮されたという現実も存在します(複雑なオーダーメイドの場合は12か月以上)。

そしてロールス・ロイスも「スペクターのエレクトリックドライブトレインはロールス・ロイスの特性を強化します。将来に自信を持っています。なぜなら、顧客が望むものを提供できるからです」と語っており、ここは他の自動車メーカーの顧客が「電動パワートレーンに興味を示さない」のと大きな違いだと言えそうですね。

さらにロールス・ロイスは、スペクター注文の最大80%が大幅にカスタマイズされたオーダーメイド車両であると指摘し(おそらく現在、その比率はさらに上がっているはずである)、平均価格は550,000ドルに達していて、これはベース価格に比較して約30%高。

つまりロールス・ロイスの顧客はオプション装着やカスタムにとうそうな費用を投じており、ここが同社の収益性を押し上げているひとつの理由となっていますが、クリス・ブラウンリッジCEOは「私たちの目標は販売量を増やすことではなく、顧客の価値を高めることです」とも語り、そしてそれを実際に実現して見せている数少ない自動車メーカーがロールス・ロイスということになりそうです。

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