| フェラーリのクルマは価値が高く、いかなる犠牲を払ってでも「維持するだけの意味がある」 |
そしてフェラーリ自身はその価値を高めるための最大の努力を行っている
さて、フェラーリによると「生産されたクルマのうち、90%(約30万台)以上が現在も路上を走行している」。
タフさで知られるポルシェのクルマだと「70%」だとされるので、フェラーリの「90%」というのはまさに驚くべき数字であり、しかしフェラーリのクルマは高価、そして将来的に価値が上昇する可能性が高いために”維持するだけの価値があり”、その結果の数字が90%なのだと思われます。
なお、これはフェラーリの中古車部門責任者を務めるアンドレア・シオレッティがカーメディアに語った内容だとされ、「認定中古車は、新たにフェラーリブランドにアクセスする人々の主要な入り口です。この理由から、時間が経っても車の体験を保持するためのプログラムをいくつか作成しました。フェラーリ認定は、フェラーリを購入する人々の体験が時間とともに変わらないことを保証する方法です」と説明。
フェラーリは「中古車」をエントリーモデルとして位置づけている
かつて(ルカ・ディ・モンテゼーモロ時代)フェラーリはジャーナリストから「エントリーモデルを発売し、ユーザーの裾野を拡大する計画を持たないのですか」と尋ねられた際に「中古車こそがエントリーモデルである」と回答しており、つまりは新車と中古車が「セット」として捉えられているとも考えられます。
実際にフェラーリは中古車の価格をコントロールしているとされ、そして中古市場での高い価値があるからこそ消費者は「高い金額を新車に注ぎ込める」状況が存在するわけですね(その逆はマクラーレンとアストンマーティンやマセラティで、新車を購入するとどれくらい価値が下がるかわからない。よってここをテコ入れする必要がある)。
フェラーリは様々な点においてベンチマークされるブランドではありますが、意外と「中古車ビジネス」「保証体制」については(ほか自動車メーカー、消費者とも)注目しておらず、そして実際にここは他社とは大きく差がある部分です。※フェラーリからランボルギーニへと移った前CEO、ステファノ・ドメニカリ氏はランボルギーニに無償メンテナンスパックを導入している
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そしてフェラーリがその価値を維持するためにどういった展開を行っているのかというと、まずは(他の自動車メーカー同様)3年の工場保証、そして7年間のメンテナンス無料パッケージ、追加の延長保証(有料)、および最大16年間有効なパワートレイン特有の保証など、複数のアフターセールスプログラムやパッケージなど。
こういった試みは非常に大きなコストを要求されるものの、長期的に見るとリターンが大きく、ぜひ取り組むべきではあるのですが、短期的に見ると「経費が増大する」ため、多くの自動車メーカー、そして任期中に成果を出さねばならない雇われ社長の場合はなかなか取り組むことが難しいのかもしれません。
一方、フェラーリの場合、CEOは「雇われ」ではあるものの、現在のフェラーリは独立資本で動いているために長期的かつ独自の展望によっ活動することができ、そしてフィアット創業者一族の意向に沿って運営されているので、「一族のためにフェラーリを永遠に存続させ、その価値を高めるための方法であれば」すぐに結果が出ない行動であっても高く評価されるのだと思われます。
フェラーリは中古車を最適な状態に保つための努力を行っている
こういったプログラムを用い、フェラーリは「工場から出荷した後も」車両の状態を最適に保つように努力しているわけですが、その思想の根底にあるのは「フェラーリは永遠である」ということ。
フェラーリ認定中古車プログラムは、通常の(ほか自動車メーカーの定める)認定中古車の取り決めを超えた、フェラーリ独自の認定中古車(CPO)制度で、特定の基準やメンテナンス履歴に基づいて車をチェックすることとなりますが、このフェラーリの認定中古車制度は、次の所有者のため、車両を工場出荷の状態に「復元」する点が異なっており、よって”復元”後、国によっては最大24ヶ月の保証が付与されるのが大きな特徴(日本やオーストラリアでは12ヶ月のみ)。※実際にぼくが購入したポルトフィーノ、ローマは「ここまでやるか」というレベルにて復元されており、ある意味では「これで利益が出るのか」と心配になる
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このプログラムは16年以内(または120,000km)のモデルにのみ適用されますが、車両が「フェラーリ認定」を受けるためには201項目の検査と遵守が必要で、これには、メンテナンススケジュールの照合から、塗装検査、損傷した部品の交換に至るまでさまざまなチェック項目が含まれます。
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そのほか、フェラーリでは10年から20年が経過した”ネオクラシック”モデル向けに「フェラーリプレミアムメンテナンスプログラム」を提供しているほか、クラシックモデルに対しては「フェラーリ・クラシケサークル(フェラーリ認定の最高レベル)」も提供され、ここではクルマの由来、メンテナンス、物理的な状態のすべての側面が専門家チームによって厳密に検査されたうえで”最高の”フェラーリ工場認定を取得することができ、これにより、コンクールイベントに出場したり、オークションで最高のリターンを得ることが可能となるわけですね。
そしてこういった、フェラーリの熱心な”保全”活動を見る限り、「90%」という数字は増加こそすれ、今後減ることは無いのかもしれません。
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