さよなら「VR6」。フォルクスワーゲンが34年も製造しポルシェにも供給した名エンジンが12月12日に生産終了、その歴史を振り返る

｜　こうやって歴史のドアがひとつひとつ閉じられてゆく　｜

VR6はフォルクスワーゲンの一つの時代を構築したエンジンでもあった

さて、フォルクスワーゲンが34年にわたって高性能車に搭載してきたハイパフォーマンスエンジン「VR6」の生産が12月12日をもって終了した、とのこと。

このVR6エンジンはフォルクスワーゲンが1970年代後半に開発を開始したもので、しかし実際に生産が始まるまでには10年以上を要しています。

ことの発端としては「アメリカ市場における高出力需要に応えるため、4気筒エンジン用に設計された車両にも収めることができるエンジンの必要性に迫られた」という事情があり、そこでフォルクスワーゲンは狭角V6エンジンというユニークな解決策を採用することに。

通常のV6エンジンは2つのシリンダーバンクの間に約60度の角度を持つものの、VR6はわずか15度という狭い角度を持っていて、この設計によりシリンダーヘッドを1つにすることができ、エンジン全体がコンパクトで狭いスペースに収まることが可能となったわけですね。

フォルクスワーゲンの名エンジン「VR6」とはどんなエンジンだったのか

「VR6」という名前は、この奇妙な設計に由来しいて、もちらんVは「V型エンジン」を示し、Rは実際には「I」を指しています。

というのも、英語ではシリンダーが一直線に並んでいるエンジンを「インラインエンジン」と呼びますが、ドイツ語ではこれを「Reihenmotor」といい、したがってVR6は「インラインV6」と訳され、やや混乱を招くものの”正確な表現”だとも考えられます。

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最初に登場したのは1991年のパサートとコラードに搭載された2.8リッターVR6エンジンで、この際の出力は172馬力、そして北米向けのパサートには188馬力の2.9リッターVR6エンジンが搭載されることに。

なお、フォルクスワーゲンは1997年にシリンダーを1つ減少させたVR5というエンジンも登場させ、これはさらに「奇妙」ではあったものの、しばらくの間フォルクスワーゲングループはWエンジンの開発と使用も行っていたため、このVR5はそれほど奇異に見えなかったかもしれません。

その後VR6は排気量を拡大つづけ、最終的には3.6リッターにまで成長していますが、バンク間の角度もさらに狭くなって10.6度までに、そして初期のVR6は172馬力であったものの最後に登場したバージョンでは295馬力に達していて、もともと大きなポテンシャルを持っていたエンジンということもわかりますね。

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VR6エンジンは、フォルクスワーゲン車のみならず、アウディやポルシェ（カイエン）など、VWグループが抱える他のブランドでも使用され、特に注目すべきはゴルフMk3や、ゴルフMkIV「R32」に搭載された237馬力のVR6エンジン。

現在、VR6エンジンが搭載されていた車両の多くには、EA888というターボチャージャー付きの4気筒エンジンを使用していて、例えばゴルフRには最大316馬力を発揮するこのEA888エンジンが搭載され、このエンジンそのものは十分なパワーを持っているものの、VR6が有していたユニークなサウンドや走行感覚、そしてその存在感を持っていないというのが一般的な認識で、そこはちょっと残念な部分かもしれません。

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