| フォルクスワーゲンはこれまでにも様々なコンセプトカーを製作している |
とくにゴルフには「ハイパーな」コンセプトカーが少なくはない
さて、フォルクスワーゲンは先日、SEMAショーに展示する布陣とその画像を公開していたものの、その中で唯一画像と詳細がリリースされていなかったのがこの「フォルクスワーゲン・ゴルフ MK3 ラリー・プロトタイプ」。
しかし今回、SEMAショーの開幕とともにその概要も正式に公表されています。
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もともとは1990年代に製作されたWRC用コンセプトカー
VWによれば、このフォルクスワーゲン・ゴルフ MK3 ラリー・プロトタイプは、1990年代初頭、VWがWRCに参戦するためのスタディモデルとして開発されたもので、いわば「忘れ去られたプロトタイプ」。
この「VWがゴルフでWRC参戦」というプロジェクトは棚上げされたものの、今回発表されたとおり、ホモロゲーション取得用としてのコンセプトカーが存在しており、しかも完全に機能する、とのこと。
フォルクスワーゲン・ゴルフ MK3 ラリー・プロトタイプは「コードネームA59」と呼ばれ、1993年にカドルツブルクにあるシュミット・モータースポーツ(SMS)によって製作されています。
この車両は公道走行可能な要件を備えていますが、ロードゴーイングモデルが必要とされた理由は、1994年の世界ラリー選手権(WRC)のFIAレギュレーションにて、ラリーに参加する各自動車メーカーが、”ラリーカーのホモロゲーションスペシャルを2500台生産すること”と義務付けられていたからで、ランチア・デルタHFインテグラーレ、スバル・インプレッサWRX STI、三菱ランサー・エボリューションもそういったホモロゲーションモデルとして発売されているわけですね。
このプロトタイプは、カーボンファイバーとケブラーで作られた軽量なボディキットを持ち、ゴルフRの曾祖父のようにも見え、ゴルフGTI W12のようなクレイジーなコンセプトにも近い姿を持っています。
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そのパワーは当時のゴルフGTIの2.5倍
フロントにはバンパーに追加されたインテークと強調されたリップ、GRP製のベントフード、大きくワイド化されたフェンダーを持ち、リアも同様に大型のスポイラーとバンパーが与えられ、エキゾーストパイプは4本出しとなっています。
そのほかナンバープレートはバンパーに移設され、軽量化のため樹脂製へと変更されたテールゲートには大きなVWバッジが装着され、サイドウインドウとリアウインドウもプラスチック(もちろん軽量化のため)。
今回画像はリリースされていないものの、インテリアでは、レカロ社製のA8シート、3本スポークのステアリングホイール、デジタルメータークラスターとコントロールパネル、ロールケージなどが装備され、安全性にも配慮されつつもホモロゲーションモデルとしての立ち位置を示しているようにも。
このマッシブなルックス以上に興味深いのはドライブトレインで、ボンネットの下には、最高出力275馬力、最大トルク370Nmを発生するカスタムターボチャージャー付き2.0リッター4気筒オールアルミエンジンが収められ、これは現代の基準からしても十分にパワフルで、当時のゴルフGTI(115馬力)からするとおよそ2.5倍に相当します。※ゴルフVR6ですら190馬力であった
駆動方式はもちろん4WD、そしてトランスミッションには6速マニュアルを採用し、油圧制御式可変センターデフ、リミテッドスリップ・リアデフを備えたモータースポーツグレードのAWDシステムによって4輪を駆動し、最高速はは270km/hに達したと言われます(0−100km/h加速は不明)。
足回りだとフロントにはビルシュタイン製ショックアブソーバー、そしてロングトラベルかつワイド化されたコントロールアーム、リアにはビルシュタイン製ストラットを備えたマルチリンク式が採用され、ホイールは16インチのスピードライン製SL817(タイヤは225/45R16タ)、ブレーキシステムはブレンボ製のキャリパー、そしてクロスドリルド・ブレーキディスクを備えます。
このフォルクスワーゲン・ゴルフ MK3 ラリー・プロトタイプは、VWモータースポーツがWRCへの参戦を断念したために市販化されることはなく、合計で2台のプロトタイプが製作されたものの、走行可能なものは1台だけだったといい、よって今回の展示は非常に貴重な機械ということになりそうですね。
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