>ポルシェ(Porsche)

ポルシェは常に「顧客の夢を形にする」クルマを作ってきた。最初の特別注文は「リヤワイパーをつけてほしい」、それがいまの「エクスクルーシブ・マニュファクチャー」にまで発展

ポルシェは常に「顧客の夢を形にする」クルマを作ってきた。最初の特別注文は「リヤワイパーをつけてほしい」、それがいまの「エクスクルーシブ・マニュファクチャー」にまで発展

Image:Porsche

| ポルシェは常に顧客の意見を聞き、それが忠誠心の高いファン層を構築することに |

実際のところ、これまでには多彩なワンオフモデルが製造されている

さて、ポルシェは業界屈指の高い「オプション装着比率」を誇りますが、これが同社の利益率を押し上げているのは御存知の通り。

ただ、この「豊富なオプション」はもともと利益を獲得することを目指したがために設定されたものではなく、ポルシェ創業者一族の「クルマを通じ夢を実現する」という考え方に由来するのだそう。

参考までに、ポルシェ創業者であるフェルディナント・ポルシェは「世の中に、自分が理想とする小型で効率的なスポーツカーがなかったから」という理由にてポルシェを創業しており、これはひとつの「(自身の)夢の実現」だと言って良いかと思います。

さらにその息子であるフェリー・ポルシェもまた「スポーツカーに夢の実現を託した」人物であり、昨年にポルシェが「スポーツカー発売から75周年」の際に打ち出したコンセプトである「ドリームとカラー」に表されるように、その意思は現代に至るまで脈々と受け継がれているのかもしれません。

ポルシェはその75年の歩みについて「夢」「カラー」を重視。「夢を現実に変える人は、世界をより豊かで、大胆で、色彩豊かな場所にするのです」
ポルシェはその75年の歩みについて「夢」「カラー」を重視。「夢を現実に変える人は、世界をより豊かで、大胆で、色彩豊かな場所にするのです」

| そう言われると、次にポルシェを買うときにはカラフルなボディカラーを選びたくなる | ポルシェが多様なカラーを設定するのは「クルマを売るためではなく、感情を生み出すため」 さて、ポルシェはここ最近「 ...

続きを見る

ポルシェ最初の「特別オプション」はリヤワイパーだった

ポルシェは「お仕着せ」のオプションではなく、顧客が求めるものを実現する形でオプションを拡充してきたという歴史を持ち、ポルシェによると「最初の(顧客の要望による)特別オプションはリヤワイパー」。

この注文は1955年製356 Aのオーナーであるアルフリート・クルップ・フォン・ボーレン・ウンド・ハルバッハから出されたもので、ポルシェは(おそらく要望が増加したため)これを定番オプション化しようと考えるのですが、1962年の356Bカレラ2以降のリアウインドウは「面積が拡大されていて」ワイパーを取り付けるスペースがなく、よってポルシェは「リアウインドウに穴を開けてリアワイパーを収める」ことに。

8

Image:Porsche

ただしこれは相当に困難な作業であり、「リアウインドウを貫通してワイパーを取り付ける」ための方法を確立するまでには何枚ものリアウインドウを”割って”しまったという失敗談もあるもよう。

それでもポルシェは「特別注文に対応し、そこでノウハウを構築して一般オプションへと転用する」という果てしない試行錯誤を繰り返していて、これはもちろん「クルマを、そのオーナーにとって、より魅力的な存在としたいから」。

これが現在のポルシェにおける「ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャー」につながっているのだと考えることも可能です。

ポルシェは世界中で「熱狂的なコレクター」を抱えることでも知られ、コレクターのポルシェに対する熱意や愛情はランボルギーニやフェラーリに対するそれにも劣るものではなく、ある意味ではそれらを凌駕するという印象もありますが、そういったファンを生んできた背景はこの「(ポルシェが)顧客のため、より魅力的なクルマを作ろうと(商売抜きで)努力してきた」という姿勢に起因しているのかもしれませんね。

6

Image:Porsche

そこでいくつかの「特別注文」の例を紹介してみると、「ラリー競技にて川をわたる際、テールパイプが水没しないよう」テールパイプをルーフの高さにまで持ち上げた1968年の911S 2.0ラリーバージョンといった存在も(さらには野生動物との衝突から車体を守るべく、奇っ怪なケージも装着されている)。

ちなみにこの「競技に参加するオーナーからの要望」はのちの「カスタマーレーシング部門」の設立につながってゆくことになります。

ポルシェは「顧客の要望」に応えることでその技術の範囲を押し広げている

そのほか、レーシングカーを公道仕様へとコンバートしてほしいという要望も少なくはなく、1975年には「917」をロードバージョンへと換装した例も。

これももちろん簡単な作業ではなく(1975年、1977年に2台の917ストリートが制作されている)、しかしここで培ったノウハウは現代にも生きていると考えることが可能です(ポルシェにとってレーシングカーとロードカーとは密接に関係した乗り物であり、ある意味ではその境界が他の自動車メーカーに比較して無いにも等しい)。

4

Image:Porsche

そして特筆すべきは1983年に製造された「935ストリート」で、これはマンスール・オジェ(マクラーレンと密接な関係にある人物である)のために製造された公道走行車であり、市販モデルの911ターボに「935(レーシングカー)の技術を盛り込み」、さらにはポルシェの製造したF1用エンジン(TAGターボとして知られる)を搭載したという他に類を見ない一台です。※しかも内装は豪華極まりないフルレザー製で、まさにレーシングカーとロードカーの融合である

これは917の例とは逆に「ロードカーをレーシングカーへ」、しかし公道走行可能な要件をを満たすという内容を持ったクルマですが、こういったことができる(引き受けてくれる)のもポルシェならでは。

3

Image:Porsche

ちなみに「911ターボを935へ」改装するに際して行ったのが「フラットノーズ化」で、これはのちに「オプション」としてポルシェのカタログリストに登場していて、1986年に設立されたポルシェエクスクルーシブ(現在のポルシェエクスクルーシブマニュファクチャー)へとその手法が引き継がれるわけですね。

2

Image:Porsche

そのほかだと、カタールの王族のために製作された「7台の」959”スペシャルシリーズ”にも触れておかねばならず、サハラベージュやロイヤルブルーなどの特殊なボディカラーに対して様々な(かつ複雑な)ストライプが再現され、インテリアもまた「ストライプを用いた」バッファローレザーという仕様。

さらにテールパイプは24金を用いたメッキ、フロントフード上とヘッドレスト、ホイールセンターキャップの「ポルシェクレスト」はその王族の家紋へと置き換えられています。

このほか、「唯一の」911ターボ 3.0にカレラRS 3.0のライトウエイトボディを架装した個体など数々の伝説が存在しますが、こういった経緯を経てポルシェは「独自のアピアランス」「レーシングカーのロードカーコンバージョン」「ロードカーの高性能化」など様々なカスタマイズ領域における経験を積むことに。

ポルシェが「エクスクルーシブ」仕様のカイエンを公開、特別ボディ色にブロンズのテールパイプも。なぜポルシェは特定色ではなく「多様なカラー」にこだわるのか
ポルシェが「エクスクルーシブ」仕様のカイエンを公開、特別ボディ色にブロンズのテールパイプも。なぜポルシェは特定色ではなく「多様なカラー」にこだわるのか

Image:Porsche | ポルシェはオーナーが「思い思いの」ポルシェを思い描くことを重視し、そのための手伝いをしたいと考えている | これまでにも「カラー」にこだわった様々なキャンペーン、イベン ...

続きを見る

1

Image:Porsche

その後も2014年の「パナメーラ エクスクルーシブ」、993の公式レストモッド「プロジェクト・ゴールド」、2022年の911クラシッククラブクーペ、2023年のタイカン・ターボS”ディン・イー”、2024年の993スピードスターに928S Booなどが世に送り出されていますが、現在は「顧客のカスタム需要が生産キャパシティを大きく上回っている状態」だといい、これまでにないほどポルシェに対する「カスタムの要望」が高くなっていることもわかります。

よってポルシェは「より多くの顧客の夢を叶えるべく」生産能力を増強しエクスクルーシブ マニュファクチャーの業容を拡大する意向を示していますが、まさにこれこそがフェルディナント・ポルシェ、そしてフェリー・ポルシェが目指したかった方向性なのかもしれませんね。

合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿

「1グラムの差が勝敗を左右する」。ポルシェがかつてレーシングカーに、そして最新の911カレラTに採用したウッド製シフトノブは軽量性を追加した結果であった
「1グラムの差が勝敗を左右する」。ポルシェがかつてレーシングカーに、そして最新の911カレラTに採用したウッド製シフトノブは軽量性を追加した結果であった

Image:Porsche | このウッド製シフトノブはプラスチック製に比較し「66グラムも」軽くなる | ポルシェの歴史は軽量化の歴史でもある さて、ここ最近のポルシェは「マニュアル・トランスミッシ ...

続きを見る

ポルシェは「世界初の電気自動車」だけではなく、「世界初のハイブリッド」「世界初のエレクトリック4WD」を作っていた。とくにハイブリッド車は300台が量産されタクシーにも
ポルシェは「世界初の電気自動車」だけではなく、「世界初のハイブリッド」「世界初のエレクトリック4WD」を作っていた。とくにハイブリッド車は300台が量産されタクシーにも

| こういった経歴を見るに、ポルシェ創業者は文字通り「時代を超えた発想」を持っていたようだ | そしてその精神は今なお健在である さて、ポルシェ創業者であるフェルディナント・ポルシェが「ガソリン車を作 ...

続きを見る

ポルシェ
ポルシェのオプション装着金額は「5年で倍」。特に重要な位置を占めるボディカラー「ペイント・トゥ・サンプル(PTS)」「PTS プラス」とは

| ポルシェはさらに「オプション装着率を向上させてゆく」方針を採用している | た歯科に最近は「色とりどりのポルシェ」が増えてきた さて、近年のポルシェが力を入れているのが「オプションプログラムの提供 ...

続きを見る

参照:Porsche

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->ポルシェ(Porsche)
-, , ,