
Image:Porsche
| このウッド製シフトノブはプラスチック製に比較し「66グラムも」軽くなる |
ポルシェの歴史は軽量化の歴史でもある
さて、ここ最近のポルシェは「マニュアル・トランスミッション」を一つの武器としており、直近で発表された911カレラTにおいては「MTであること」を示すバッジすら取り付けられています。
そしてこの911カレラTに採用されているのが「ウッド製シフトノブ」なのですが、なぜポルシェが「ウッド」を使用するのか、不思議に感じた人がいるかもしれません。
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ポルシェが「ウッド」をシフトノブに採用したのは「軽量性」の追求からである
ポルシェはもともと「効率化」を追求してきたという歴史を持っていて、実際のところポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェは同じドイツのメルセデス・ベンツ、そしてアウディのように「大排気量、巨大なパワー」を追求したわけではなく、むしろメルセデス・ベンツ在籍時代に「小型で効率的なスポーツカーを作ろうとしたものの」その方針が受け入れられず、それが原因となってメルセデス・ベンツを去ったという過去を持っています。
つまるところ、ポルシェはずっと「効率化」を追求しており、そのための手段のひとつが「軽量化」。
車体を軽くできれば大きなエンジンやパワーは必要なく、よりドライブトレーンやタイヤ、ブレーキへと与える負担を小さく収めることができ(同じ観点から、ポルシェはエンジンの高回転化も嫌っている)、これによってポルシェの考える効率化を達成できる可能性が高まるというわけですね。※耐久レースを走る場合、この効率化は非常に大きな意味を持ち、燃料消費=ピットインの回数を抑えることができる
そしてこの(ポルシェにとっての)軽量化の歴史においては、「ボルト」「ファン」「キーシリンダー」など細部にまで及ぶのですが、「究極の軽量化が施されたレーシングカー」として知られるのが1970年に登場した「908/03スパイダー(車体重量が545kgしかない)」。
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このクルマはシチリア島にて開催されるタルガフローリオ(公道レース)、そしてニュルブルクリンク1,000kmを走るために開発されており、ポルシェの考える「軽量化」を随所に見て取ることができる一台です。
チューブラーフレーム構造に採用されるパイプに始まり、ステアリングホイール、メーター、シート、ペダルに至るまでにポルシェの考える軽量化思想が貫かれていて、それらにはポリカーボネートやアルミニウム、FRPなどの強化プラスチックなどの軽量素材がふんだんに使用されているのですが、ここで目を引くのが「ウッドシフトノブ」で、一般的にウッドというと高級素材に属しており、レーシングカーやスポーツカー向けの内装素材としては「不向き」であるように思えます。
しかしながらポルシェによると、「アルミニウムは1立方センチ辺り2.7グラム、マグネシウムは1.8グラム、プラスチックは1.4グラム、しかしウッド(マホガニー)は0.7グラム」。
シフトノブの体積は33.5立方センチなので、他の素材の中でも「最も軽い」プラスチック製で作ったとしても90グラム、しかしマホガニーを使用すれば24グラムに収まり、つまりは「70%もの」軽量化を実現できるわけですね。
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そしてもちろん、この軽量化を指示したのはポルシェ一族にしてのちのフォルクスワーゲン会長にまでのし上がったフェルディナンド・ピエヒ(アウディでは”クワトロ”を考案し、ブガッティのW16エンジンを設計するなど、優秀なエンジニアでもあった)。
フェルディナント・ピエヒは1963年にポルシェへと加入した後1965年には車両開発部門の責任者となりますが、特に軽量化には強い関心を示していたといい、「1グラムでも軽くするよう」エンジニアたちに取り組ませていたという逸話も残ります。
かくして908/03では「軽量な」マホガニー製シフトノブを採用することになるのですが、このウッド製シフトノブは後のカレラGT(2002年)や最新の911カレラT(ただしこちらはウォールナット製)にも採用されており、ポルシェのひとつの「歴史の証人」ということなのかもしれません。
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