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シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か

シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か

Image:Xiaomi

| シャオミが全固体電池に本格参入──特許公開で示した次世代EV戦略の一手 |

シャオミ、全固体電池の特許を初公開

スマートフォンメーカーとして知られるXiaomi(シャオミ)が、次世代EV向けの全固体電池(ソリッドバッテリー)に関する特許を出願・公開。

この特許では、エネルギー密度とイオン伝導性の両立を目指した多層電極構造が記載されており、実用化に向けた重要な一歩と見られています。

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特許の概要:ポイントは“電解質の貫通”と“製造互換性”

シャオミが出願した特許によると、新しい電池構造は以下のような特徴を備えており、これは、”厚電極問題”や“イオン移動のボトルネック”といった全固体電池の難題に対する、シャオミなりの解決策と言えそうです。

  • 活物質、導電材、バインダー、固体電解質を層状に組み合わせた多層電極
  • 電解質が電極層の厚みに沿って浸透し、イオンの移動距離を短縮
  • 結果として、充電速度と放電性能を大幅に向上
  • 従来のリチウムイオン電池製造ラインとの互換性も高く、大規模量産への移行が比較的スムーズ
テスラ
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CTBデザインで効率77.8%──車載化も視野に

シャオミはこの技術を用いたプロトタイプ電池のスペックも一部公開し、この数値が実用段階にまで近づけば、テスラを含む既存のEVメーカーにとって大きな脅威となるかもしれません。

  • セル・トゥ・ボディ(CTB)設計に対応
  • 体積効率77.8%
  • 電池パックの高さわずか120mm(車両フロア込み)
  • CLTC基準で航続距離1,200km超
  • わずか10分で800km分の急速充電が可能
ホンダは電動化への道を突き進み、2030年までに全固体電池の実用化を目指すも「今のバッテリーの100倍くらいのサイズでないと安全性を確保できない」
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業界全体が動く中での“参戦”

現在、世界の主要プレイヤーも全固体電池に注力していますが、各社ともそれぞれ独自の方法にてソリッドステートバッテリーの課題解決に当たっており、どこが「実際に」量産車を世に送り出してくるのかは期待がかかるところ。

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Image:Mercedes-Benz

企業名現状・目標
CATL(バッテリーメーカー)2027年までに小規模量産を予定
BYD同じく2027年目標で開発中
トヨタ2027〜28年に初の全固体電池搭載車を市場投入へ
BMWi7プロトタイプで実走テスト中
SAIC複数の構造で評価進行中
ホンダ2030年までに実用化
日産2027年までにパイロット生産を実現
メルセデス・ベンツすでに全固体電池を組み込んだ試作車の実走実験を開始
チェリー(奇瑞汽車)全固体電池の生産設備建設に着手
ダッジ2026年に「チャージャー・デイトナに搭載の可能性)

これらの企業に続く形で、シャオミも自社EVへのバッテリー搭載を狙っているものと見られますが、興味深いのはテスラが全固体電池に全く興味を示していないように見えることで(イーロン・マスクCEOは以前から全固体電池に否定的である)、これに加えていくつかの自動車ブランドも「ソリッドステートバッテリーの実用化は不可能」だとして開発から撤退しており、もしかするとこのソリッドステートバッテリーもまた、「有望視されながらも実用化されない」幻の技術に終わる可能性も。

虚を突いてダッジがソリッドステートバッテリーを最初に市販車に搭載か。来年にも量産型に近いチャレンジャー・デイトナに全固体電池を積んだ試作車を公開すると正式に発表
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Image:Dodge | まさかアメ車がソリッドステートバッテリー搭載第一号に最も近づこうとは | しかし中国・上海汽車も2025年に全固体電池を積んだプロトタイプを走らせると公言している さて、現 ...

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全固体電池の実用化には“あと一歩”──しかし確かな前進

全固体電池のメリットとしては

  • 高エネルギー密度
  • 高い安全性(発火リスク低減)
  • 優れた熱安定性

などが挙げられますが、一方で

  • イオン伝導性の低さ
  • 電極界面の不安定性
  • リチウムデンドライトの形成

といった技術的課題が依然として残されており、これらが現時点では「どうしても」解決できないため、実現に非常に近いところまで来ているにも関わらず「(車載用としては)実現できないだろう」と考えるブランドが存在するわけですね。

シャオミの特許は、これらの中でも特に“厚電極内のイオン移動の遅さ”という課題に対し、明確なブレークスルーを提示した点で注目されており、「全固体電池の実用化に向けて王手をかけた」とも見られています。

メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か
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まとめ:量産は2030年以降が現実的だが、流れは止まらない

シャオミが全固体電池の独自特許を公開
製造ライン互換性+高性能という“現実解”を模索
自社EVへの内製搭載でCATLやBYDへの依存軽減を狙う可能性
業界全体で2030年前後の実用化を目指して競争が加速中

シャオミの特許公開は、スマホメーカーからモビリティ企業へと変貌しつつある同社の本気度を示すものであり、これと同時にEV業界に新たな緊張感をもたらす可能性をも示していて、もし課題を解決できるのであれば、あるいはシャオミをEV業界のリーダーへと押し上げることになるのかもしれません。

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参照:CarNewsChina

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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