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なぜモータースポーツやフランス車では「イエローのヘッドライト」が用いられてきたのか?ル・マン24時間レースに由来するその理由とは

なぜモータースポーツやフランス車では「イエローのヘッドライト」が用いられてきたのか?ル・マン24時間レースに由来するその理由とは

Image:BMW

| もともとはフランス政府の「思い込み」によって法制化され、その後56年もの間「イエローのヘッドライト装着」が義務付けられていた |

ただし現代のル・マンでは「安全上の理由」からイエローのヘッドライトが一部残されている

さて、モータースポーツに参戦する車両はイエローのヘッドライトやフォグランプやドライビングランプを装着していた例が多く、よって「モータースポーツにインスパイアされた」市販車にもイエローのヘッドライトやデイタイムランニングランプが使用されることが多々あります(とくにBMW)。

そしてフランス車に至っては「1937年から1993年まで、すべての(もちろん市販車含む)自動車に”黄色いヘッドライト”の装着が義務づけられていた」ことがあり、今回これについて考察してみたいと思います。

黄色いヘッドライトは“フランスらしさ”の象徴?

フランスでは上述の通り、56年にわたって「イエローのヘッドライト」装着が義務付けられていて、フランス政府による公式の説明では「黄色いヘッドライトの目的は夜間走行時の眩しさと眼精疲労を軽減するため」だとされています。

この規則が制定された当時のフランスは「自分から前方が良く見えるか」よりも「対向車に迷惑をかけないこと」を重視していたとされ、1930年代のある未確認のフランス国内調査では、「黄色いフィルターを通した光は視認力を8%向上させる」とされていたという報告も。※ただし光量は15%低下。

Renault-R17 (3)

Image:Renault

実はその“効果”、イギリスに否定されていた

しかし1968年、イギリスのBritish Road Research Laboratory(英国道路研究所)はこの説に対し異を唱えます。

・イエローのヘッドライトは視認力を2.5%悪化させる

・ただし、失われた光量を電球のパワーで補えば、視認力が白色ライトより3%向上する

つまり、「フィルターを通すなどしてイエローにすることによる”暗くなった分”を明るいバルブで補えば、ちょっと(3%)視認性が良くなる」程度。

よってフランス政府が唱えた説は科学的根拠としては弱かったわけですが、フランスらしい頑固さにより、その後も法律は25年間続くこととなっています。

イエローのヘッドライトの再現方法と“実際の効果”

参考までに、かつてフランス市場向けのクルマを生産するメーカーは、黄色い光を得るために以下の方法を使っていましたが、どの方法でも光の一部(青や赤)をカットしているだけで、実際の視認性が大幅に上がるわけではなく、むしろ(上で述べたように)光量が損なわれてしまい、むしろ「見えにくく」なってしまっていたようですね。※現代であればLEDの発光色を変更するだけでイエローの再現が可能である

  • 電球のガラスを黄色く塗装
  • レンズそのものを黄色に着色
  • フィルターやカバーで色を変える
ルノーが1970年代の「17」をEVとしてリメイクした「R17」を公開。現時点ではショー用のワンオフなるも「サンク」「キャトル」同様に市販化を期待したい

Image:Renault

「イエローのヘッドライト」法制化にはいくつかの誤情報も

なお、この「イエローのヘッドライト」を法制化した背景にはいくつかの誤情報があり、まず有名なのは「第二次世界大戦中、ドイツ軍の侵入を見分けるために(ドイツ軍の車両が採用していない)イエローヘッドライトを採用した」。

ただ、実際に”イエローヘッドライト”法が制定されたのは1937年──つまり、ドイツのポーランド侵攻(1939年)より前なので、この説はいわゆる”都市伝説”のたぐいなのかもしれません。

そのほか、フランスでは「霧が多く、ホワイトの発光色を持つヘッドライトだと霧に乱反射して前方の確認が容易でなくなる」「フランスの道路は凹凸が多く、イエローのヘッドライトで道路を照らしたほうが凸凹をはっきり認識でき、安全に走行できる」というものなど。

しかしいずれもフランス政府の公式見解とは異なっており、イエローの発光色の「効果」は別として、やはりこれらも「法制化の理由」としての根拠には欠けるようですね。

レーシングの世界へ引き継がれた“イエローヘッドライト文化”

さすがに法制化されていただけのことはあり、このイエローヘッドライト文化は、ル・マン24時間レースにも影響を与えています。

どういうことかというと、かつてのル・マン24時間レースでは、フランスの法規制に倣って「出場車は全車イエローライトの装着が義務化されていた」。

ちなみにル・マン24時間レースの運営団体は「フランス西部自動車クラブ(Automobile Club de l'Ouest、略称:ACO)」なので、所在地の関係によって「フランスの自動車に関する法規制とシンクロした」のだと思われますが、現在ではこのレギュレーションが変更され、GTクラス車両のみにイエローのヘッドライト装着義務が設けられています。

Image:Porsche

ただ、この理由は「過去の名残」といった曖昧なものではなく、”安全上”の理由によるもので、プロトタイプカー(速い)とGTカー(プロトタイプよりは速度が劣る)を夜間でも「ヘッドライトのカラーによって」見分けやすくし、これによりレーシングカー同士の接触事故を防止しようとしているわけですね。

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参照:Jalopnik

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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