
| おそらくは日本も「世界で最もEVが売れていない」市場のひとつであろう |
この記事のハイライト
- 世界全体では21%のプラス成長: 「EV需要の減退」という見出しが躍る中、2025年1月〜11月の世界販売台数は1,850万台(前年比21%増)に達し、依然として電動化の勢いは衰えていない
- 中国と欧州が牽引、米国は失速: 中国は1,160万台(19%増)、欧州は3.8万台(33%増)と大幅伸長。一方で、北米は税遇措置の廃止や政策転換の影響を受け、前年比1%減と「世界で唯一の減速」を見せている
- 政策転換の不確実性: 欧州委員会が「2035年の内燃機関車販売禁止」の撤回を検討し始めるなど、将来的な不透明感はあるものの、現在の市場データは「世界的にはEVシフトが加速中」であることを証明している
「EV アポカリプス(EVの終焉)」は一部の地域の話に過ぎない
メーカーが投資を縮小し、開発目標を引き下げたといったニュースが流れると、世界中でEVが売れなくなったかのような印象を受けますが、調査会社Rho Motionが発表した最新データはその認識を真っ向から否定しています。
2025年11月までの累計販売データによれば、世界全体では1,850万台ものEV(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)が販売され、これは前年同期比で21%のプラス成長を意味していて、つまり問題は、ぼくらが「世界のどの地図を見ているか」なのかもしれません。
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地域別販売データ:鮮明すぎる明暗
以下の表を見れば、現在の電動化市場の「勝者」と「敗者」が一目で分かります。
参考までに、日本のEV+PHEVの新車販売におけるシェアは2025年上半期で2.2% 〜 2.4%、一方でハイブリッドは50.1%にも達しており、日本でEVが売れないのは「ハイブリッドが強すぎるから」なのかもしれません。
もう一つ参考までに、2022年のEV+PHEVシェアは約2.80%、2023年は約3.52%(軽EVブームでピーク)、2024年では約2.76%なので、基本的に日本市場におけるEV+PHEVの販売は「むしろ下落傾向にある」ようですね。
2025年1月〜11月 EV/PHEV 販売実績
| 地域 | 販売台数 (累計) | 前年同期比 (YoY) |
| 世界全体 | 1,850万台 | +21% |
| 中国 | 1,160万台 | +19% |
| 欧州 | 380万台 | +33% |
| 北米 | 170万台 | -1% |
| その他(ROW) | 150万台 | +48% |
中国・欧州:成長の原動力
中国は依然として世界最大の市場であり、1,160万台という圧倒的なボリュームで成長を続けています。
ただし特筆すべきは欧州で、33%という高い成長率を記録しており、イタリアでは補助金プログラムによって旧式の内燃機関車からの乗り換えが11月に入って一気に加速し、フランスでも過去最高の販売を記録しています。
北米(米国):一人負けの現状
世界的なトレンドに逆行しているのが北米市場で、米国では7,500ドルの連邦EV税額控除が廃止されたことが決定打となり、販売台数は前年を下回ることに。
トランプ政権下でのCAFE燃費基準の緩和も相まって、今後さらに電動化のペースが鈍化、あるいは衰退する可能性が指摘されていますが、欧州の例を見ても、未だにEVの販売は「補助金頼み」の傾向が強いことがわかり、つまりEV市場は単一のトレンドで動いているのではなく、「政策とインセンティブ」に極めて敏感であることを示しています。
「PHEV」の再評価
欧州ではBEV(純電気自動車)だけでなく、PHEVの需要も依然として高く(前年比39%増)、消費者が「完全電動化」の前に現実的なステップとしてプラグインハイブリッドを選択している傾向が伺えます。
政策の梯子(はしご)外し
好調な欧州市場ではありますが、今週、欧州委員会が「2035年の新車販売における内燃機関禁止」という方針を撤回する計画を明らかにしており、これは自動車業界のロビー活動の結果とされ、政策によって伸びた市場は、政策が逆風になれば瞬時に冷え込むリスクを孕んでいます。
「その他の地域」の急成長
「その他」に分類される地域(東南アジアや中東、南米など)は、台数こそ少ないものの48%という最大の成長率を記録していて、スポットライトが当たっていない地域でも着実に電動化が浸透し始めているようですね。
結論:EVシフトは「終わり」ではなく「選別」のフェーズへ
総合的に見て、「EVが死んだ」と考えるのは米国と日本の状況だけを見ている場合のみで、世界的には中国が圧倒的な規模を維持し、欧州が政策に翻弄されながらも拡大し、その他の新興国がそれに続くという構図となっています。
今後は、一律の電動化ではなく、各地域の政策やエネルギー環境に合わせた「地域別の最適化」が、自動車メーカーの生き残りをかけた鍵となることはまちがいなく、「ローカル市場における柔軟な施策」が各メーカーの勝敗を分けるのかもしれません。
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参照:CARSCOOPS

















