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BMWデザイン責任者「新型ヴィジョン BMW アルピナは私のキャリアで最も重要なコンセプトカー」。なぜアルピナはそこまで特別なのか、その立ち位置とは

ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜フロント

Image:BMW

| たしかにアルピなのでデザインは「想像を超える美しさ」を持っている |

気になるのは新生アルピナの「価格帯」ではあるが

2022年にBMWグループの完全傘下となり、今後の動向に世界中の自動車ファンやコレクターから熱い視線が注がれている名門「アルピナ(Alpina)」。

2026年5月、イタリアで開催された伝統の格式あるコンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ(Concorso d'Eleganza Villa d'Este)」において、ついにBMW主導のもとで開発された初のコンセプトカー「ヴィジョン BMW アルピナ」が世界初公開されたのはご存知のとおりです。

そして今回、BMWグループのチーフ・デザイナーであるエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、ジャーナリストを前にして「私のキャリアにおいて、これまで発表してきた中で最も重要なコンセプトカーである」と断言するまでに。

ミニ(MINI)やロールス・ロイスの買収劇にも立ち会ってきた巨匠がなぜこれほどまでアルピナの新型コンセプトを重要視するのか。その理由と、新生アルピナが目指すプレミアム市場での独自のポジションについて考えてみたいと思います。

ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜フロント

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ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜フロント
新生「BMW アルピナ」よりVision BMW ALPINA発表。伝統のV8エンジン搭載、次世代の贅を尽くした至高のデザインが示される

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この記事の要約(30秒でわかる注目ポイント)

  • 歴史的初公開: BMW完全子会社化の完了後、初となる公式コンセプト「ヴィジョン BMW アルピナ」がベールを脱ぐ
  • 伝統のオマージュ: 現行「8シリーズ グランクーペ」のプラットフォームをベースにしながら、名車「アルピナ B7ターボクーペ」を彷彿とさせる、20年以上BMWが封印してきた「シャークノーズ」のフロントエンドを現代に蘇らせる
  • M divisionとの明確な差別化: アルピナは「サーキット向けのM」とは競合せず、公道を最高速でエレガントに駆け抜ける「目立たない本物志向(通好み)」のための超高級ブランドとして位置付けられる
  • V8エンジン存続の歓喜: アルピナの復活劇はトップダウン方式で展開。ハイブリッドを一切排除した「純粋なV8エンジン」を搭載する次期フラッグシップセダン「B7」の登場が確定へ

ヴィジョン BMW アルピナ:車種概要

BMWがアルピナを完全吸収した際、多くのファンが「アルピナ独自のDNAや気品が薄れ、単なるBMWの高級グレードになってしまうのではないか」という懸念を抱いたかと思いますが、しかし今回お披露目された「アルピナ・ヴィジョン・カー」は、そんな不安を完全に払拭する存在。

デザイン面での指揮をとったエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、アルピナにはBMW本体とは完全に独立した「アルピナ専用のデザインチーム」が組織されていることに触れ、ミニやロールス・ロイスの買収時に培った「ブランドの歴史を徹底的に研究し、最も重要なコア(核)を見極めて残し、そこから発展させる」というBMW流の成功方程式が今回のアルピナにも忠実に適用されています。

ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜フロントグリル

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BMW
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ヴィジョン BMW アルピナのスペック

詳細・特徴
ベースプラットフォーム現行 BMW 8シリーズ グランクーペ
フロントデザイン1982年製「アルピナ B7ターボクーペ(6シリーズベース)」をオマージュした尖ったシャークノーズの復活
デザインチームアルピナ専用の独立したデザイナー・エンジニアチームが担当
今後の製品戦略フラッグシップセダン「B7」を皮切りに、超高級大型SUVなどのハイエンドモデルから順次市場投入
パワートレイン(次期B7予定)マイルドハイブリッド非搭載の純粋なV8ツインターボエンジン
キャラクター圧倒的な「最高速度」と、長距離を快適に移動できる「至高のコンフォート性能」の融合

20年ぶりの封印解除:「シャークノーズ」がもたらすデザインの衝撃

新型コンセプト最大の特徴は現在のBMWのデザインアイコンから明確に逸脱したフロントマスクにあり、フロント先端が前方に突き出た往年の「シャークノーズ(サメの鼻)」を採用。

これは1980年代にわずか30台のみ限定生産された伝説の「アルピナ B7ターボクーペ」への直接的なリファレンス(オマージュ)だと説明されており、BMW本体が歩む未来志向のデジタルなデザインとは一線を画し、クラシカルな美しさと威厳を放つもの。

このあたりを見ても、BMWがいかにアルピナの歴史を尊重し、「特別扱い」しているかがわかろうというものですね。

ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜サイド

Image:BMW

競合比較と市場でのポジショニング:M divisionとの棲み分け

ファン・ホーイドンク氏は、社内競合が懸念される「M division(Mモデル)」と「アルピナ」のパワーバランスとキャラクターの違いについても「非常に明確なビジョン」を語ることに。

「アルピナは“ツウ(connoisseurs=鑑定家・玄人)”のための車です。つまり、走ることが大好きで、圧倒的なハイスピードドライビングを愛しているけれど、周囲に対して『自分はレースカー(Mモデル)を買ったんだ』と声高に主張したくない人たちのための選択肢です。それこそがアルピナの確固たるポジションであり、BMWグループにおける新たな勝機なのです」

かつてアルピナの創業者であるボーフェンジーペン(Bovensiepen)シニア氏が生きていた頃から、BMWが新型車を開発するたびに彼はスタジオを訪れ、「MやBMW本体がまだ提供していない、独自のラグジュアリーな選択肢は何か」を常に考えて棲み分けを行ってきたといい、その「共存の精神」は、完全傘下となった2026年現在も完全に受け継がれていることがわかります。

アルピナ創業者、ブルカルド・ボヴェンシーペンが87歳で亡くなる。プライベートによる改造がBMWに認められ公認チューナーに、そして後には自動車メーカーに
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ヴィジョン BMW アルピナのインテリア

Image:BMW

メルセデス・ベンツとAMGの関係性との違い

1999年にメルセデスがAMGを吸収した歴史と類似性はありますが、「BMWとアルピナ」の場合は時代背景が異なっており、というのもかつての「クルマのチューニング」というと「カムシャフトやキャブレターを交換する」という職人の世界、そしてメカニカルなチューンが主流であったものの、現代のクルマにおいては電子制御や電動化が進んでいるためにチューナーが独自になにかを行うことができる範囲が狭くなっており、そして法規制への対応に天文学的な開発費がかかるから(アルピナはチューナーではなく”メーカー”ではあるが、それでも独自性を発揮できる領域が狭くなってきていたことは否定できない)。

こういった状況において、アルピナがBMWと完全に融合する道を選んだのは歴史の必然であり、ブランドの血統を未来へ残すための最もスマートな選択だったと考えてよく、そしてアルピナ・ヴィジョン・カーを見る限り、BMWは「アルピナの意思を完全に引き継ぎ、アルピナがやりたかったこと」をBMWの技術と資本、そしてその開発体制によって実現しているのかもしれません。

ヴィジョン BMW アルピナのエクステリア〜テールランプ

Image:BMW

結び

エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏が「自身のキャリアで最も重要」とまで称した新型ヴィジョン BMW アルピナ。

それはBMWがこの伝説的なブランドをただの商標として消費するのではなく、そして「見た目だけ」美しいデザインを再現することでもなく、歴史とクラフトマンシップへの深いリスペクトを持って、真の「ラグジュアリーの頂点」へと昇華させる覚悟の現れです。

近年の自動車業界は様々な規制やモロモロの事情によって「ハイブリッド(HEV・PHEV)」や「BEV(電気自動車)」へのシフトを急速に進めており、しかしその中でヴィジョン BMW アルピナの市販バージョン(B7)が「非ハイブリッドの純粋なV8エンジン」で登場するということは内燃機関(ICE)の極みを求める富裕層にとって、これ以上ないプレミアムな価値(希少性)となるのかも。

ヴィジョン BMW アルピナのインテリア

Image:BMW

電動化による静粛性とは異なる、「究極の滑らかさを持つ大排気量マルチシリンダー」そして「職人技による最高級のレザーインテリア」。

新生アルピナは、テック化が進む現代において、失われつつある「古き良き自動車の最高贅沢」を担保する唯一無二の聖域となるものと期待され、公式な発売時期は未発表ではあるものの、ハイエンドからローダウン(上流から順に)展開してゆくという新生アルピナの動向を見守りたいと思います。

なお、アルピナはぼくにとって「いつかは乗らねばならない」クルマの一つでもあり、新車購入は(金額的に)難しそうなので、どこかのタイミングで中古車両を購入したいと(常々)考えています。

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参照:Motor1

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