
Image:Ferrari
| 史上、ここまで酷評されたフェラーリは記憶にない |
良くも悪くも、それだけフェラーリに対する人々の期待が高く、愛情が強いということであろう
自動車界の頂点に君臨するフェラーリが発表した初の100%電気自動車(EV)「ルーチェ(Luce)」。
しかしその幕開けはブランド史上かつてないほどの逆風にさらされていて、物議を醸すデザインに対して世界中から冷ややかな視線が注がれ、同社の株価が急落する事態にまで発展することに。
さらにネット上では批判やミーム(ネタ画像)が溢れかえっていて、誰もが憧れる跳ね馬の最新作がここまで拒絶されるというのは前代未聞ではありますが、ディープフェイク動画では元アップルの大物デザイナーによる「自動車デザインの壁」、そしてフェラーリ独自の「抱き合わせ販売」というリアルなビジネスの裏側にまで話が及んでおり、ここでは現在の状況を整理してみたいと思います。
この記事の要約
- 発表直後からデザインへの批判が相次ぐフェラーリ初の4ドアEV「ルーチェ(Luce)」。株価急落やネット上でのミーム化に続き、CEOらをパロディにしたディープフェイク動画まで登場し話題に
- デザインを担当したのは元アップルのジョニー・アイブ氏率いる「LoveFrom」。自動車デザインの難しさを露呈した形となり、クリス・ハリス氏は「F430に追突されたジャガー I-PACE」と酷評
- 元CEOのモンテゼーモロ氏やイタリア副首相からも非難の声が上がる一方、従来とは異なる「新しい顧客層」を開拓し、結果的には完売するとの見方も
なぜフェラーリの新型EVはこれほどまでに叩かれるのか?
物議を醸す「iPhoneデザイナー」の起用、そして本音を暴く風刺動画
フェラーリの歴史において、ルーチェは「一目でフェラーリだと分からない初めてのクルマ」だとも言われています。
この大胆かつ物議を醸すスタイリングを手がけたのは、iPhoneのデザインで世界的に知られるジョニー・アイブ氏が設立したクリエイティブ集団「LoveFrom」でであり、アイブ氏自身はプロダクトデザインの天才だと評される一方、畑違いの自動車デザインにおいてはその手腕が裏目に出た形だと見られています。
自動車評論家のクリス・ハリス氏は、ルーチェのフォルムを「ジャガーのEV『I-PACE』に、フェラーリ『F430』が後ろから追突したような姿」と痛烈に表現するなど、スマートフォンをデザインするようにはいかない、自動車デザインという領域の難しさが露呈した格好となっているわけですね。
CEOとジョニー・アイブが「本音」を語る? 悪刺のディープフェイク動画
この大炎上を受け、ネット上ではフェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOとジョニー・アイブ氏を登場させた、AI生成によるディープフェイクのパロディ動画が拡散され、さらに大きな話題を呼んでいます。
動画内では、アイブ氏が「これは新しいアップルカーだ。最高だろ!」と言い放ち、周囲から「今はフェラーリの仕事ですよ」と突っ込まれると、「イタリア人がクルマをデザインしてくれって言うから、昔の職場でやってた(アップルカーの)ボツ案をそのまま提出してやったのさ」とジョークを飛ばすことに。
さらに動画は、フェラーリの商売気質にも容赦なく斬り込んでいて、ヴィーニャCEOが「価格は64万ドル(約1億円)だ」と誇ると、アイブ氏がすかさず「ただし、ルーチェを買いたければ、まずローマを5台、プロサングエを2台、それと(フェラーリの)高級時計も買わなきゃ売ってあげないけどね」と、抱き合わせ販売や上顧客への割り当て制度を皮肉る内容となっています。
重鎮たちからの怒りの声
この風刺がこれほど注目を集めるのは、現実の業界トップたちの反応も同様に辛辣だからであると考えられ、1991年から2014年までフェラーリの黄金期を率いた元会長、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏はイタリアの新聞紙上で「ルーチェに跳ね馬のバッジを付けるべきではない。ブランドは伝説の破壊というリスクを冒している」と警告。
さらに「これなら(パクリが得意な)中国企業すら真似しないだろう」と、昨年フェラーリのSUV「プロサングエ」に酷似したEV「YU7」を発売したシャオミ(Xiaomi)を引き合いに出して皮肉ったほか、「また、イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相もSNSで「フェラーリには全く見えない。創業者エンツォが生きていたら何と言っただろうか」と苦言を呈しています。
そしてダメ押しとなったのはランボルギーニCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏が「EV開発を中止するという我々の決断は正しかった」という、暗にフェラーリを批判するかのような発言で、こうしたルーチェを取り巻く環境は日々厳しさを増すばかりというのが最新の状況というわけですね。
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特徴:フェラーリ「ルーチェ」の概要と市場での位置付け
激しい批判に晒されているルーチェですが、自動車としての基本スペックや、フェラーリがこのクルマに託した市場戦略には独自の意図が見え隠れしており、しかし現時点でパフォーマンス、EVであること、そしてフェラーリが楽しさのために盛り込んだデバイス(サウンドや車体制御)についてはサッパリ誰も注目していない状況です。
フェラーリ・ルーチェ(Luce)車種概要
| 項目 | 詳細・仕様 |
| パワートレイン | 4モーター駆動・完全電気自動車(BEV) |
| ボディ形状 | 4ドア・クロスオーバー |
| デザイン担当 | ジョニー・アイブ(LoveFrom) |
| 現地想定価格 | 日本円で約1億円前後 |
| 主な競合・比較 | ポルシェ・タイカン / カイエンEV、メルセデスAMG GT 4ドアクーペ |

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伝統派の拒絶、しかし「新たな富裕層」へ向けた割り切り
メルセデスAMGが同時期に発表した4ドアEVも同様にデザインで酷評されていて、現在のスーパーカー・高級車ブランドにおいては「EV化に伴うデザインの均一化(空力を意識したワンボックス/流線型化)、それを打破するための手法の模索」という共通の壁にぶつかっています。
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しかし前述のクリス・ハリス氏は「これだけ叩かれても、フェラーリは生産するすべてのルーチェを完売させるだろう」と確信していると補足しており、なぜならこのクルマを購入するのは、従来のV12エンジンやレースの歴史を愛してきた熱狂的な「フェラーリ信者(ティフォシ)」ではなく、最新のテクノロジーや環境への配慮、そして「ジョニー・アイブがデザインした1億円の超高級ガジェット」としてのステータスを求める、全く新しいタイプの富裕層(テック系セレブなど)だから。
フェラーリは旧来のファンを怒らせるリスクを承知の上で新たなパイ(市場)を掴みに行ったと考えられ、そしてフェラーリとLoveFromが静観を決めていること、ブランドイメージの毀損に対して断固たる姿勢を取るフェラーリ、そしてインフルエンサーやジャーナリストによる批判を許容しないフェラーリが「否定的な意見を許容していること」からも、フェラーリは批判すらも利用してこのルーチェを「これまでフェラーリに届かなかった層」に届けようとしているのではということも推測できます。

Image:Ferrari
結論:伝統の破壊か、それとも新時代のマイルストーンか
フェラーリ「ルーチェ」を巡る騒動は、単なる「デザインの良し悪し」の議論に留まらず、それは100年近く続いてきた「内燃機関の官能性」というブランドのアイデンティティ、そして「電動化・デジタル化」という時代の要請が激突して生まれた歪みそのもの。
ディープフェイク動画が皮肉ったように、どれだけファンが怒ろうとも、強力な新規客層へのリーチと富裕層向けの販売システムによって、このクルマがビジネスとして成功する可能性は極めて高いものと考えられます。
しかし、それと引き換えに「跳ね馬の伝説」が薄まる可能性も指摘できず、あるいは数年後に「先見の明があった」と評価される可能性もあり、とにかく現時点では「判断することが難しい(ぼく的には、このクルマ単体ではなく、マーケティング含めて”長期的に”ルーチェの存在をポジティブに捉えている)」のがこのルーチェという存在です。
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参照:CARSCOOPS











