>メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz/AMG)

新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペついに発表。F1直系の電撃パフォーマンス、そして「最高純度の興奮」、そしてまさかの「スマート顔」にて登場【動画】

2026/05/20

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(イエロー)のエクステリア~フロント

Image:Mercedes-Benz

| 正直、このクルマがゲームチェンジャーになるとは思えない |

「パフォーマンス」「高級感」があまり感じられず、ちょっと「ヤバい」という印象しかない

日常の快適性とサーキットを圧倒するスーパースポーツの走りを一つのボディに凝縮した「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」。

このプレミアムハイパフォーマンスセグメントの絶対王者がF1(フォーミュラ1)由来の最先端電動化テクノロジーを引っ提げて「さらなる次元」へと進化を遂げて登場することに。

新開発のハイブリッドシステム「E PERFORMANCE」を搭載することにより環境性能への配慮を見せつつも、歴代のAMGが築いてきた大排気量スポーツの官能性を凌駕する「極限のインテンシティ(強烈さ)」を纏ったと紹介されていますが、ぼくとしてはそのルックスについて疑問を感じており、そしてこのクルマをデザインしたゴードン・ワグナー氏が電撃退任したことからも「メルセデス・ベンツ内部でも(発表に至るまでに)様々な議論を巻き起こしたのであろう」と推測しています。

とにもかくにも、今回の新型AMG GT 4ドアクーペに関する重要トピックを整理してみましょう。

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツの「顔」が消える?28年間同社のデザインを牽引したデザイナー、ゴードン・ワグナー氏が電撃退任、一つの時代が終わる

| ゴードン・ワグナー氏の「28年の功績」と次世代への影響とは | この記事を5秒で理解できる要約 ニュース: メルセデス・ベンツの最高デザイン責任者(CDO)ゴードン・ワグナー氏が2026年1月31 ...

続きを見る

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(イエロー)のエクステリア~リアとテールランプ

Image:Mercedes-Benz

この記事の要約

  • 超ハイパワー: 上位モデルの「GT 63」はトリプルモーターを搭載し、驚愕の1,153馬力を発生
  • 爆速の加速・最高速: 0-60マイル(096km/h)加速はわずか2.2秒、最高速度は300km/に到達。
  • 次世代「アキシャルフラックス」モーター: モーターの常識を覆す薄型・軽量・超高出力を実現
  • 異次元の充電スピード: 世界最高峰の「600kW」急速充電に対応、わずか10分で約460km分の航続距離を回
  • 発売時期: 2026年末までに米国を筆頭に市場投入予定
メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(イエロー)のエクステリア~車体上部

Image:Mercedes-Benz

メルセデスAMG GT4 ドアクーペ:車種概要とスペック

新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペは、AMGが電動化時代に向けてゼロから専用開発したハイパフォーマンスEVプラットフォーム「AMG.EA」を初採用した記念碑的モデル。

ラインナップは「GT 55」と「GT 63」の2グレードで、いずれもフロントに1基、リアに2基の計3基のモーターを配置する「トリプルモーター・4WD」レイアウトを採用しています(クワッドモーターではなかった)。

特筆すべきは10年以上にわたりEV界の指標となってきた「ポルシェ・タイカン」や「テスラ モデルSプラッド」を明確に凌駕するために用意された数々のギミックとパワーユニットの完成度で、新型GT 4ドアクーペは、床下に106kWhの大容量バッテリーを搭載しながらも先代のガソリンモデルより全高を約4cm(1.6インチ)も低く抑えることに成功。流麗で獰猛なファストバックシルエットをより一層際立たせています。

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(イエロー)のエクステリア~リアとテールランプ

Image:Mercedes-Benz

新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペ主要スペック

項目GT 55 4-Door CoupeGT 63 4-Door Coupe
パワートレイントリプルモーター(前1基 / 後2基)トリプルモーター(前1基 / 後2基)
駆動方式AMG 4Matic+(全輪駆動)AMG 4Matic+(全輪駆動)
最高出力(一時的ピーク)805 HP(連続出力:503 HP)1,153 HP(連続出力:711 HP)
最大トルク(一時的ピーク)約1,800 Nm約2,000 Nm
0-100km/h)加速2.5秒2.4秒
最高速度約300 km/h※要PKG約300 km/h※要PKG
バッテリー容量 / 種類106 kWh / ニッケル・コバルト・マンガン・アルミ106 kWh / 同左
最大航続距離(WLTP)約700 km約695 km
最大充電速度600 kW600 kW(同左)
メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(イエロー)のエクステリア~サイド

Image:Mercedes-Benz

物理法則に挑む。「パンケーキモーター」と「F1直系バッテリー」

この驚異的な数値を支えるのがメルセデス・ベンツ傘下の英YASA社が開発した「アキシャルフラックス(軸方向磁束)モーター」。

従来の一般的なEVが採用する「ラジアルフラックス(径方向磁束)モーター」が縦長の円筒形であるのに対し、この新型モーターはまるで薄いパンケーキのような形状をしていて、従来のモーターに比べてサイズ・重量ともに約67%も削減されているにもかかわらず、パワー密度は3倍、トルク密度は2倍という、文字通り常軌を逸した効率を誇っていて、フロントモーターの幅はわずか約8.9cm、リアは各約8.1cmしかない、と説明されています。

さらに、バッテリーシステムにはF1やハイパーカー「AMG One」の知見が注ぎ込まれ、円筒形のセルを細長く縦に並べ、非導電性のオイルを用いたダイレクト冷却回路を構築しており、これによってサーキット走行のような超高負荷な状況でも熱ダレすることなく、世界最速クラスの「600kW」という超急速充電を可能としているわけですね。

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(ホワイト)のエクステリア~サイド

Image:Mercedes-Benz

デザインと機能美が融合したエクステリア

スタイリングにおいては、AMG GTファミリー固有の「ロングノーズ・ショートデッキ」と流麗なクーペシルエットを見事に4ドアパッケージへと落とし込んでおり、フロントマスクにはモータースポーツの血統を証明する垂直ルーバー付きの「AMG専用(パナメリカーナスタイルの)ラジエーターグリル」を配置していますが、ヘッドライトは驚くべきことに「スマート風」の左右連結デザインを持っていて、正直言うと「高級感、アグレッシブさともに欠け」、いまひとつ目指すところがわからないようにも。

ちなみにですが、直近までメルセデス・ベンツのデザイナーを務めていたゴードン・ワグナー氏(時系列的には、この新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペも同氏の作品だと思われる)はちょっと奇抜なデザインを好む人物であり、EQSやEQEにおいては「行き過ぎた」デザインを採用したことで大きな批判を浴びたこともある人です(それはまるでナスのようだと言われた)。

メルセデス・ベンツ「ヴィジョン・アイコニック(Vision Iconic)」発表。ソーラーペイントや巨大発光グリルを備え”未来と伝統を融合した”ド迫力のコンセプトカー
メルセデス・ベンツ「ヴィジョン・アイコニック(Vision Iconic)」発表。ソーラーペイントや巨大発光グリルを備え”未来と伝統を融合した”ド迫力のコンセプトカー

Mercedes-Benz | これまでのメルセデス・ベンツとは全く異なるデザイン言語を押し出してきた | メルセデス・ベンツ、「Vision Iconic」で“新しいアイコンデザイン時代”を宣言 メ ...

続きを見る

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(ホワイト)のエクステリア~フロント

Image:Mercedes-Benz

メルセデス・ベンツEQSの全景(フロント、ブラック)
新型メルセデス・ベンツEQSが劇的進化。「史上最高」を更新する航続距離と「先祖返り」スタイル、何といっても注目は「ステア・バイ・ワイヤ」

Image:Mercedes-Benz | そのルックスは「より内燃機関に近く」変身 | 「未来」よりもメルセデス・ベンツらしい威厳を備えたスタイルに メルセデス・ベンツのフラッグシップEV「EQS」 ...

続きを見る

ただ、同氏はそういった批判を意に介さず、「10年デザインが早すぎた」として半ば開き直りを見せており(ただ、メルセデス・ベンツのデザイナーたるものであれば簡単に非を認めるべきではなく、この姿勢は重要である)、そしてさらに同氏が理想とするデザインを加速させたのがこの新型AMG GT 4ドアでもあって、その方向性に納得が行かなかった役員会とゴードン・ワグナー氏が激突した結果、同氏の「退任」となったのでは、というのがぼくの推測。

ちなみにですが、EQEやEQSはフェイスリフトによって「ガソリン車っぽい」、つまりより伝統的なルックスへと変化していますが、メルセデス・ベンツの取締役の大半は「威厳ある伝統的なデザイン」を好み、こういった傾向とゴードン・ワグナー氏との間に「折り合いがつかなかった」のかもしれません。

新型スマート #2~エクステリア(フロント全景)
新型スマートが再びマイクロカーになって戻ってきた。「スマート #2」は先代比で航続距離2倍超、都市型EVの決定版に

Image:Smart | 現時点では「コンセプトカーにとどまるが | 「チャイナスピード」によって時を置かずに発売されそうだ 現在スマートは「メルセデス・ベンツと中国・吉利汽車」との合弁事業へとシフ ...

続きを見る

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(ホワイト)のエクステリア~リアとテールランプ

Image:Mercedes-Benz

そういったこともあって、この新型メルセデスAMG GT 4ドアは「フロント」、「サイド」、「リア」の整合性がうまく取れていないようにも見えるデザインを持つに至った可能性があり、ゴードン・ワグナー氏はやりたいことを「やりきれず」、どっちつかずになってしまったという印象も抱いているのですが、おそらくはこのクルマもフェイスリフトによって(後任デザイナーの手で)伝統的なスタイリングに改められるであろう、とも考えています。※大企業ならではの「葛藤」が視覚的にわかるのがこのクルマなのかもしれない

なお、ツルっとした外観を持つだけあってエアロダイナミクス(空力性能)が徹底的に磨き上げられており、速度や走行モードに応じて自動で展開する「リトラクタブル・リアスポイラー」や、床下の空気の流れを最適化するアクティブ・エア・コントロール・システムによって超高速域での圧倒的なスタビリティ(安定性)を確保している、とも説明されています。

メルセデスAMG GT 4ドアクーペのインテリア~全景

Image:Mercedes-Benz

なお、インテリアについても「ミスマッチ」が感じられ、外観の未来っぽさに対してインテリアは「けっこう普通(従来モデルに採用されていたパーツもあるようだ)」でもあり、スイッチ類に変更が設けられたといえど、ここも疑問を感じるところです。

競合比較と市場でのポジショニング

ここで電動ハイパフォーマンスセダン市場における、主要ライバルとの位置付けを比較してみましょう。

  • ポルシェ・タイカン ターボGT(1,019馬力):ハンドリングの雄であるタイカンに対し、AMG GT 63は1,153馬力という圧倒的なパワーと2,000Nmという強烈なトルクでアドバンテージを構築しており、タイカンの最高速260km/hに対してAMG GT 4ドアクーペでは300km/hとアウトバーンでの絶対的な速さでも一歩リード
  • テスラ・モデルS プラッド(1,020馬力):かつてテスラが主張していた「最高速200マイル(322km/h)」の市販仕様が事実上制限されている中、AMGは公称値として現実的な300km/hをマーク。さらにはテスラにはない「伝統的プレミアムブランドとしての圧倒的な内装の質感とラグジュアリー性」で差別化を図る
  • 実用性という独自の強み:2ドアのピュアEVハイパーカーは数多く存在するものの、新型GT 4ドアは後部に507Lの荷室、フロントに62Lのフランク(前部トランク)を備えており、大人4人が乗って旅行やゴルフ、スキーに行ける「普段使いできる1,000馬力オーバーの怪物」という極めてユニークなポジションを確立している
メルセデスAMG GT 4ドアクーペのインテリア~モードスイッチ

Image:Mercedes-Benz

ガソリン車ファンにとって最も気になるのは「V8の咆哮」が消えた寂しさだとは思いますが、しかしAMGはボタン一つで「極めてリアルなAMG専用V8サウンド」を擬似的に響かせる新機能を搭載しています(これまでのメルセデスAMGの仕様を考慮するに、車外ではなく車内に対して発せられるものと思われる)。

しかし、本当に注目すべきはサウンドの演出ではなく、YASA社製アキシャルフラックスモーターの登場が「今後のスポーツカーのパッケージング(設計)」を根本から変えるという点で、エレクトリックモーターがこれだけ薄く軽くなれば、将来的には「インホイールモーター(車輪の中にモーターを組み込む)」や、さらなる軽量化(車両全体で最大200kgの削減が可能とも言われる)が実現するという可能性も。

重いバッテリーを積みながら、先代V8モデルより車高を低くできたのは、この超薄型モーターのおかげでもあり、メルセデスAMGが提示したこの「1,153馬力」そしてパッケージングは、これからの電動スーパーカーが進むべき「軽量・高密度化」のバイブルとなるのかもしれません。

メルセデスAMG GT 4ドアクーペのインテリア~センターコンソール

Image:Mercedes-Benz

結論

新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペは「モータースポーツの未来を示すマイルストーン」とも言うべき存在で、ラグジュアリーな4人乗りのキャビンに最高峰の安全技術と快適性を備えつつ、その中身はF1直系のテクノロジーで武装した「準」レーシングマシンともいえるもの。

さらには実用的な収納スペース、EVとしての利便性も兼ね備え、まさに現代のリーダーにふさわしい万能な一台に仕上がっています。

ただしその一方、デザインやメカニズム、コンセプトにおいて「割り切れない」想いが残るのも事実であり、できれば実車を見て触れ、運転することでその割り切れなさを解消することができれば、とも考えています。

合わせて読みたい、メルセデス・ベンツ関連投稿

メルセデス・ベンツの新技術が「リアブレーキを車からなくす」?ブレーキ兼用超小型モーターが自動車の常識を覆す
メルセデス・ベンツの新技術が「リアブレーキを車からなくす」?ブレーキ兼用超小型モーターが自動車の常識を覆す

Image:Mercedes-Benz | 同社傘下にあるYASAが画期的な技術を開発 | この記事のハイライト:YASAのモーターがブレーキシステムをどう変える? 衝撃の提案: メルセデス・ベンツ傘 ...

続きを見る

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツのデザイン責任者「AIによるカーデザインはほぼ“駄作”ばかり」。さらなるAIの「問題点」を指摘する

| AIレンダリング氾濫で「ショーカーの特別感」が失われつつある | AIを使うか使わないかではなく、「どこにどう活用するか」が課題である 近年、SNSを中心にAIによるカーデザインのレンダリング画像 ...

続きを見る

なぜアウディ、BMW、メルセデスは“過去の名車デザイン”を復活させるのか? その背景にある「不安の時代」とアイデンティティの再発見とは
なぜアウディ、BMW、メルセデスは“過去の名車デザイン”を復活させるのか? その背景にある「不安の時代」とアイデンティティの再発見とは

Mercedes-Benz | 「先行き不透明」な時代になると「リバイバル」が流行? | 不安定な時代に“原点回帰”を選ぶドイツ勢 世界的な緊張、環境危機、そして急速に進むテクノロジーの変化——。 こ ...

続きを見る

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz/AMG)
-, , , , ,