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| 正直、このクルマがゲームチェンジャーになるとは思えない |
「パフォーマンス」「高級感」があまり感じられず、ちょっと「ヤバい」という印象しかない
日常の快適性とサーキットを圧倒するスーパースポーツの走りを一つのボディに凝縮した「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」。
このプレミアムハイパフォーマンスセグメントの絶対王者がF1(フォーミュラ1)由来の最先端電動化テクノロジーを引っ提げて「さらなる次元」へと進化を遂げて登場することに。
新開発のハイブリッドシステム「E PERFORMANCE」を搭載することにより環境性能への配慮を見せつつも、歴代のAMGが築いてきた大排気量スポーツの官能性を凌駕する「極限のインテンシティ(強烈さ)」を纏ったと紹介されていますが、ぼくとしてはそのルックスについて疑問を感じており、そしてこのクルマをデザインしたゴードン・ワグナー氏が電撃退任したことからも「メルセデス・ベンツ内部でも(発表に至るまでに)様々な議論を巻き起こしたのであろう」と推測しています。
とにもかくにも、今回の新型AMG GT 4ドアクーペに関する重要トピックを整理してみましょう。
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この記事の要約
- F1直系のパワートレイン: 伝統のV8ツインターボエンジンにリアアクスルの高性能電気モーターとAMG自社開発の高出力バッテリーを組み合わせた革新のPHEVシステムを採用
- 異次元のスペックと加速性能: 圧倒的なシステム総合出力を誇り、巨体を感じさせない0-100km/h加速タイムを叩き出す、4ドアセグメント最高峰のモンスターマシン
- ラグジュアリーと走りの完璧な融合: 最新のデジタルコックピットや高品位な素材、高度な運転支援システムを備え、快適なグランドツーリングから過酷なサーキット走行までシームレスに対応
モータースポーツの頂点からストリートへ。E PERFORMANCEの革新性
新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペの核となるのは、単なる燃費向上のためのハイブリッドではなく、純粋に「速さ」を追求するために生まれた「E PERFORMANCE」駆動コンセプト。

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このシステムはメルセデスAMG・ペトロナスF1チームが培ったハイブリッド技術をベースに開発されており、フロントに搭載された強力なエンジン、そしてリアアクスル(後輪車軸)に配置されたエレクトリック・ドライブ・ユニット(EDU)を緻密に統合したことが最大の特徴。
このEDUには、2速トランスミッションと電子制御リミテッドスリップデフ(eLSD)が内蔵されており、アクセルを踏み込んだ瞬間からエレクトリックモーター特有の強烈なトルクをタイムラグなしで路面に伝達する、と説明されています。
さらに軽量・高性能なリチウムイオンバッテリーはメルセデスAMGによって自社開発がなされ、過酷なサーキット走行でも常に最適な出力を維持できるよう革新的な「セルの直接冷却システム」を採用しているといい、常に最大のパワーを引き出せる、まさにコンペティション直系のメカニズムが惜しみなく投入されているようですね。

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車種概要:デザインと機能美が融合したエクステリア
スタイリングにおいては、AMG GTファミリー固有の「ロングノーズ・ショートデッキ」と流麗なクーペシルエットを見事に4ドアパッケージへと落とし込んでおり、フロントマスクにはモータースポーツの血統を証明する垂直ルーバー付きの「AMG専用(パナメリカーナスタイルの)ラジエーターグリル」を配置していますが、ヘッドライトは驚くべきことに「スマート風」の左右連結デザインを持っていて、正直言うと「高級感、アグレッシブさともに欠け」、いまひとつ目指すところがわからないようにも。
ちなみにですが、直近までメルセデス・ベンツのデザイナーを務めていたゴードン・ワグナー氏(時系列的には、この新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペも同氏の作品だと思われる)はちょっと奇抜なデザインを好む人物であり、EQSやEQEにおいては「行き過ぎた」デザインを採用したことで大きな批判を浴びたこともある人です(それはまるでナスのようだと言われた)。
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ただ、同氏はそういった批判を意に介さず、「10年デザインが早すぎた」として半ば開き直りを見せており(ただ、メルセデス・ベンツのデザイナーたるものであれば簡単に非を認めるべきではなく、この姿勢は重要である)、そしてさらに同氏が理想とするデザインを加速させたのがこの新型AMG GT 4ドアでもあって、その方向性に納得が行かなかった役員会とゴードン・ワグナー氏が激突した結果、同氏の「退任」となったのでは、というのがぼくの推測。
ちなみにですが、EQEやEQSはフェイスリフトによって「ガソリン車っぽい」、つまりより伝統的なルックスへと変化していますが、メルセデス・ベンツの取締役の大半は「威厳ある伝統的なデザイン」を好み、こういった傾向とゴードン・ワグナー氏との間に「折り合いがつかなかった」のかもしれません。
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そういったこともあって、この新型メルセデスAMG GT 4ドアは「フロント」、「サイド」、「リア」の整合性がうまく取れていないようにも見えるデザインを持つに至った可能性があり、ゴードン・ワグナー氏はやりたいことを「やりきれず」、どっちつかずになってしまったという印象も抱いているのですが、おそらくはこのクルマもフェイスリフトによって(後任デザイナーの手で)伝統的なスタイリングに改められるであろう、とも考えています。※大企業ならではの「葛藤」が視覚的にわかるのがこのクルマなのかもしれない
なお、ツルっとした外観を持つだけあってエアロダイナミクス(空力性能)が徹底的に磨き上げられており、速度や走行モードに応じて自動で展開する「リトラクタブル・リアスポイラー」や、床下の空気の流れを最適化するアクティブ・エア・コントロール・システムによって超高速域での圧倒的なスタビリティ(安定性)を確保している、とも説明されています。

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圧倒的なパワーをもたらす主要諸元
新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペ(E PERFORMANCEモデル)の驚異的なポテンシャルは、以下のスペック表からも一目瞭然で・・・。
主要スペック表
| 項目 | スペック詳細 |
| エンジン形式 | 4.0L V型8気筒 ツインターボ エンジン |
| ハイブリッドシステム | リアアクスル配置 電気モーター(E PERFORMANCE) |
| トランスミッション | AMG SPEEDSHIFT MCT 9速トランスミッション |
| 駆動方式 | パフォーマンス志向四輪駆動システム(AMG Performance 4MATIC+) |
| サスペンション | AMG RIDE CONTROL+ エアサスペンション(減衰力調整機能付) |
| ブレーキシステム | AMG高性能コンポジットブレーキ(オプション:カーボンセラミック) |
| 走行モード | AMG DYNAMIC SELECT(「Electric」「Comfort」「Sport+」「RACE」等) |

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4MATIC+による前後トルクの完全可変配分システムと、標準装備される「リア・アクスル・ステアリング(後輪操舵システム)」の組み合わせにより、タイトなコーナーでは俊敏に、高速コーナーではレールの上を走るようなコーナリング性能を発揮するとされていますが、現時点では4WDシステムの詳細については明かされておらず(追って公開があると思う)、ガソリンエンジンでどの車輪を駆動するのかはナゾのまま。
プレスリリースには「4WD」「リアアクスルにはエレクトリックモーター」とあるため、前輪がガソリンエンジンによって駆動されるのは間違いなさそうではあるものの、後輪が「エレクトリックモーターのみ」なのか「ガソリンエンジン+エレクトリックモーター」なのかはわからず、ここは続報を待ちたいところです。
なお、仮に「4輪ともガソリンエンジンによって駆動し、後輪のみエレクトリックモーターによるアシスト」であれば、これはちょっと無駄なシステムだとも考えていて、というのも駆動力を前後に分配するトルクチューブやデフが必要だから。

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そのため、効率性を考えるならば、「ガソリンエンジンでは後輪のみを駆動し(+エレクトリックパワー)、前輪はインホイールモーターにて電気駆動+エレクトリックブレーキ」というのが効率的な方式だとは考えるものの、とにかくデザインにせよパワートレインにせよ「ナゾ」が多いのがこのクルマというわけですね。
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なお、インテリアについても「ミスマッチ」が感じられ、外観の未来っぽさに対してインテリアは「けっこう普通(従来モデルに採用されていたパーツもあるようだ)」でもあり、スイッチ類に変更が設けられたといえど、ここも疑問を感じるところです。
電動化時代における「AMGの存在意義」
そしてこの新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペについて注目したいのが、自動車業界全体が電動化(BEVシフト)への過渡期にある中で、AMGが提示した「もう一つの最適解」。

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かつて多くのエンスージアストは「電動化=牙を抜かれた大人しいクルマになるのではないか」という懸念を抱いていのだと思われ、ポルシェ・パナメーラ・ターボE-ハイブリッドなどの強力なライバルがひしめくこのセグメントにおいて、メルセデスAMGが選んだのは単にバッテリーとエレクトリックモーターを積むことではなく「電気の力を利用して、V8エンジンのポテンシャルを120%にまで引き上げる」という極めてエモーショナルでエゴイスティックなアプローチ。
大排気量マルチシリンダーの官能的なサウンドやドラマチックな加速フィールを残しつつも最新の環境規制に対応し、かつサーキットでは従来のガソリン車を遥かに凌ぐタイムを叩き出す。
この新型GT 4ドアクーペは、ブランドのファンが求めている「AMGらしさ(Maximum Intensity)」を一切妥協せず、最先端のハイテクで具現化したプレミアムスポーツセダンの到達点と言えるのかもしれません。※ただ、これについてもざっと見た範囲だと「革新性」があまり感じられず、今後発表されるであろう詳細情報を待ちたい

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結論
新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペは「モータースポーツの未来を示すマイルストーン」とも言うべき存在で、ラグジュアリーな4人乗りのキャビンに最高峰の安全技術と快適性を備えつつ、その中身はF1直系のテクノロジーで武装した「準」レーシングマシンでもあり、さらには街中をEVモード(Electric)で静粛かつスマートに駆け抜ける二面性も持ち合わせ、まさに現代のリーダーにふさわしい万能な一台に仕上がっています。
ただしその一方、デザインやメカニズム、コンセプトにおいて「割り切れない」想いが残るのも事実であり、できれば実車を見て触れ、運転することでその割り切れなさを解消することができれば、とも考えています。
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