
| まさか「最後のアナログスーパーカー」をここまで「跡形もなく」改造してしまうとは |
賛否両論巻き起こすのは間違いないであろう存在がまた一台登場する
自動車の歴史において「アナログスーパーカーの最高峰」と称されるポルシェ・カレラGT。
現在、オークション市場では1億円〜2億円以上の高値で取引されるコレクターズアイテムではありますが、このカレラGTをあえて「分解して切り刻み」、全く新しいワンオフのハイパーカーを作り上げるという、極めて大胆なプロジェクトがアメリカ・コネチカット州でベールを脱ぐことに。
プロデュースしたのは高級車ディーラーとして名高い「ミラー・モーターカーズ(Miller Motorcars)」で、このマシンの名は「JC9」と命名されています。
カレラGTを切り刻んでしまったことで世界中から「歴史的な名車を犠牲にするなんて」という賛否両論が巻き起こることは必至ではありますが、完成したその姿は往年のモータースポーツ黄金期への深い敬意と現代の最高峰テクノロジーが融合した、あまりにも魅惑的な「現代版ポルシェ917」ともいうべき存在です。
そもそも「なぜカレラGTを改造したのか」「どんなスペックなのか」を見てみましょう。

この記事の要約
- アナログの至宝をドナーに:わずか1,270台しか生産されなかったポルシェ「カレラGT」のシャシーとパワートレインをベースにした超贅沢なワンオフ車両
- 名デザイナーによる傑作:フェラーリP4/5などを手がけたジェイソン・カストリオタ氏が、伝説のレーシングカー「ポルシェ917」をオマージュしてデザイン
- V10とマニュアルの魂は健在:最高峰の5.7L V10自然吸気エンジンと6速MT、そしてカーボンシャシーをそのまま引き継ぎ、固定ルーフ&ガルウィングドア化
コレクター騒然。カレラGTをベースにした「JC9」という挑戦
巨匠ジェイソン・カストリオタが描いた「1960年代の情熱」
この「JC9」のデザインを担当したのは、アメリカ出身の高名な自動車デザイナー、ジェイソン・カストリオタ(Jason Castriota)氏。
彼はピニンファリーナ在籍時代に、伝説的なワンオフモデル「フェラーリ P4/5 by ピニンファリーナ」を手がけ、その後もフェラーリ599、マセラティ・グラントゥーリズモ、そして世界最速を競うSSCトゥアタラなど、自動車史に残る名車を次々と世に送り出してきた人物です。
そんなカストリオタ氏が今回のJC9でインスピレーションを得たのは1960年代から1980年代にかけてル・マン24時間レースなどで活躍したスポーツプロトタイプ(レーシングカー)たち、とくに「917」であり、そしてこの出来栄えを見ると「そのへんのマニアが改造しただけのクルマ」ではないこともわかりますね。
官能的なエクステリアと機能美
伝統のガルフカラーを彷彿とさせるブルーとオレンジの鮮やかなペイントに身を包んだJC9は、大型のヘッドライト(ちゃんとクアッドLEDも再現)、低く構えたノーズ、そしてルーバー(スリット)が刻まれた力強いフェンダーアーチなど、肉感的なフロントエンドがその特徴。
最大の変化は、オープン(タルガトップ)構造だったカレラGTの面影を完全に消し去り、固定ルーフ(クーペ化)とした上で美しい「ガルウィングドア」を採用した点にあり、これによってまさにル・マンを走った「ポルシェ917」のようなシルエットを手に入れることに。
リアセクションもフロントに負けないほど過激なデザインを持っていて、カレラGTの心臓部である5.7リッターV10自然吸気エンジンが露出するような構造を持っており、さらには新設計のエキゾーストシステムが組み込まれています。
これらに加え、現在の市販車ではまず見られない「ツインプレーン(2段式)リアウイング」がリアクオーターパネルからシームレスにつながるという構造を持ち、極めて高い技術力によって組み上げられていることも理解が可能です。
車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴
ベースとなったカレラGTの超一級品のメカニズム(カーボンファイバー製モノコックシャシー、純レーシングコンポーネント)はそのまま活かされつつ、外装は100%完全オリジナルのカーボンボディへと着せ替えられていますが、そのおおよそのスペックは以下の通り。
「JC9」スペック・特徴まとめ
| 項目 | 仕様・詳細 |
| ベース車両(ドナー) | ポルシェ・カレラGT(シャシー、基本骨格) |
| デザイナー | ジェイソン・カストリオタ(代表作:フェラーリ P4/5、SSC トゥアタラ等) |
| エンジン | 5.7リッター V型10気筒 自然吸気(最高出力 612馬力以上)※カレラGT純正ベース |
| トランスミッション | 6速マニュアルトランスミッション(伝統のビーチウッド・シフトノブ構造を継承) |
| 駆動方式 | MR(ミッドシップエンジン・後輪駆動) |
| エクステリア最大の特徴 | 固定ルーフ化、ガルウィングドア、ツインプレーンリアウイング、超ワイド&露出したリアタイヤ |
| インテリア | ブルーのアルカンターラ、ベビーブルーのアクセントによるフルリトリーム |

トレンドを先取りするリアデザイン
リアビューに目を向けると、最新のランボルギーニ「テメラリオ(Temerario)」のように、リアタイヤが後方からほぼ剥き出しに見えるアグレッシブな造形を採用していることがわかりますが、これは現代のハイパーカーデザインの最新トレンドでもあり、レトロな917オマージュのボディラインの中に絶妙な「2020年代後半のモダンさ」を溶け込ませている、ということに。
インテリアに目を移すと、インテリアはカレラGTの優れたエルゴノミクスをベースにしながらも、外装に合わせた鮮やかなブルーのアルカンターラ、そしてベビーブルーにペイントされたパーツによって再構築され、独特のイメージを演出しているさまがわかります(シフトノブについては、ポルシェのモータースポーツの歴史に敬意を捧げるということなのかカレラGTのものがそのまま使用されているようだ)。
「コーチビルド」という新しいラグジュアリー
今回のJC9の誕生は近年のハイパーカー市場における「コーチビルド(受注生産による特注ボディ製造)」のトレンドを象徴しているかのようで、しかし自動車ファンの間では「カレラGTを1台潰すなんて正気の沙汰ではない」という批判が出るのは当然かもしれません。
しかし、これには現代の規制(クラッシュテストや排ガス規制)が関係していて・・・。
新しい気付き:なぜ今、既存のスーパーカーを壊してまで作るのか?
現代においてゼロから1,000馬力級のガソリンスーパーカーを作ろうとすると、天文学的な開発費と厳しい環境規制の壁にぶつかります。
しかし、すでに登録されているクラシックカーやヤングタイマー(カレラGTなど)をベースにボディをモディファイする「コーチビルド」の手法をとれば、「唯一無二の法的に公道を走れる芸術品」を合法的に手に入れることができるという事実があり、過去にはエンツォフェラーリをベースにした「P4/5」、最近ではポルシェ911をベースにするシンガー(Singer)ヴィークル デザインによるプロジェクトなどがありますが、今回の「カレラGT×ジェイソン・カストリオタ」という組み合わせはその中でも最高峰の贅沢であるとも考えられ、資産価値としても数億円規模の、他に並ぶもののない独自のポジションを持つ存在だと考えていいのかも。
結論:賛否両論の先に生まれた、次世代に語り継がれる奇跡の1台
誰がこのマシンをオーダーしたのか、そしてどれほどの費用がかかったのか(ベース車代を含めれば数億円は確実)は公表されておらず、確かに世界からカレラGTが1台減ってしまったことは事実ではありますが、しかし、代わりに世界が手に入れたのは「パワーウォーズ(馬力競争)やデジタルな電子制御に頼らない、ピュアなV10自然吸気の咆哮とマニュアルトランスミッションを持つ、現代最高峰のレトロ・フューチャー・ハイパーカー」。
オリジナルを愛するファンにとっては複雑な心境かもしれないものの、自動車のスタイリングがどれも似通ってきた現代において、1960年代のル・マンのパッションをこれほど高いクオリティで具現化したJC9は、間違いなくこれからのカーカルチャーにおいて、伝説のワンオフとして語り継がれることになりそうですね。
そしてこのクルマは、これからの富裕層のクルマの楽しみ方の一つの方向性をも示しており、JC9に続く存在が間をおかず登場することになるのかもしれません。
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