
| あまりに特別すぎる「フェラーリ」、それがプロサングエ。設計段階から独自のポジションが与えられていたようだ |
跳ね馬が頑なに「SUV」と呼ばない理由。その走りはただの超高性能車ではない
さて、オートカヴァリーノさんにてフェラーリ プロサングエへと試乗。
先日発表されたルーチェが「フェラーリ初の5人乗り」ならば、このプロサングエは「フェラーリ初の4枚ドア」で、そのスタイルはSUV的ながらもフェラーリはけしてプロサングエをSUVとは呼ばず、FUV(フェラーリ・ユーティリティ・ビークル)と呼称しています。
ちなみにプロサングエ(Purosangue)とは「純血(つまりサラブレッド)」を意味し、「Puro=純」「Sangue=血」を表していて、この名を覚えにくい場合は「プロ」と「サングエ」を分け、それぞれの意味とあわせて記憶しておくと良いかもしれません(思い出しやすい)。

記事の要点
- SUVではない「純血種」: フェラーリ初の4ドア4シーターモデルでありながら、他社のような既存SUVのプラットフォーム流用を一切せず、完全新設計のアルミモノコックを採用。
- 咆哮する6.5L自然吸気V12: 最高出力725馬力を誇る伝統のV12エンジンをフロントミッドシップに搭載。0-100km/h加速3.3秒、最高速310km/h以上という超一級の動力性能。
- 世界初のアクティブサスペンション: マルチマティック社と共同開発した革新的な「TASVシステム」により、スタビライザー(アンチロールバー)を廃止。巨体ながらロールを瞬時にねじ伏せるフラットライド感を実現。
- 4人全員が主役の特等席: 補助席のない「独立4座」のバケットシートと、助手席にも大型モニターを備えるデュアルコクピット思想により、同乗者全員が平等に跳ね馬の官能を共有。
- 圧倒的な雲上プライス: 車両本体価格は約4800万円〜。オプションを盛り込めば軽く7000万円を超える、SUV界の絶対的頂点に君臨するプライシング。
- プロサングエは「プロサングエ」という乗り物である: プロサングエは独特のフィーリングを持っており、単に「既存モデルの車高を高くしたクルマ」ではない。

シートポジションからして「新しいフェラーリ」
そこでプロサングエの運転席に乗り込んで感じるのは「これまでのフェラーリとは異なる着座感覚」。
ヒップポイントが高いのはもちろんですが、目の前のフロントウインドウの傾斜角、足を前に出す角度(膝から下を”おろす”感じになる)などすべてが新鮮といった印象です。
なお、ダッシュボードは「デュアルコクピット」デザインを採用しており(助手席に座る人もドライバーと同じ体験ができるというコンセプト)、そしてこのデュアルコクピットを採用するのはプロサングエ、12チリンドリ、アマルフィなどフロントエンジン系あるいは「ライフスタイル系」。

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一方で849テスタロッサなど最新のミドシップモデルは「シングルシーター」デザインを採用し、これはいわゆる「ドライバーオリエンテッド」なレイアウトを採用し、運転席を中心に据えたもの。
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デザイン原語はほかモデルと共通するものの、その表現方法あるいはディティールはプロサングエ独自のもので、たとえばシフターも「Hパターンシフト」モチーフながらもプロサングエ専用デザイン。

シートもやはりプロサングエ専用で・・・。

「デイトナ」スタイルも独自解釈。
フェラーリは基本的にシートやインテリアのパーツを共有することが多いのですがプロサングエではそうではなく、それだけこのプロサングエが「特別」というわけですね。

フェラーリ プロサングエのV12エンジンも「特別仕様」
このプロサングエに積まれるのはもちろんフェラーリ伝統のV12自然吸気。
この「自然吸気V12エンジン」を積み単独でパワートレインとして機能させるクルマは現時点では非常に希少であり、アストンマーティンとロールス・ロイス、マイバッハのV12エンジンは「ターボ」、ランボルギーニ・レヴエルトは「電動化」がなされているため、この点においてもプロサングエは非常に大きな価値を持っています。
なお、フェラーリのV12フロントエンジンモデルという点では12チリンドリ(12Cilindri)とプロサングエ(Purosangue)は共通しており、しかし実際に両方を運転したところ、両者ではキャラクターがかなり異なるというのがぼくの感じたところです。

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12チリンドリのV12エンジン
- 6.5L 自然吸気V12
- 最高出力:830ps
- 最大トルク:678Nm
- 最高回転数:9,500rpm
- フェラーリ史上でも屈指の高回転型V12
プロサングエのV12エンジン
- 6.5L 自然吸気V12
- 最高出力:725ps
- 最大トルク:716Nm
- 最高回転数:7,750rpm付近で最高出力発生

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エンジン特性の違い
両車とも基本設計は同じF140系V12ではあるもの、上にあげた通り「微妙に」その仕様が異なっていて、実際に運転した感じだと「プロサングエのほうがぐっと前に出る」、「12チリンドリは出だしがマイルド、しかしそこから伸びる」。
イメージ的にはプロサングエが典型的な「台形トルク」、12チリンドリは「回転数とともに一直線にトルクとパワーが駆け上がってゆく」というもので、「12チリンドリは「回して楽しむV12」、プロサングエは「重い車体を力強く動かすV12」ということとなりそうです。※実際のところプロサングエのV12のほうがトルクが太い
フェラーリ プロサングエと12チリンドリ:駆動方式の違い
さらにプロサングエのドライブフィールを特別なものとしているのが駆動方式で・・・。

12チリンドリ
- FR(後輪駆動)
- フロントミッドシップエンジン
- 8速DCT
- 後輪操舵付き
プロサングエ
- AWD(四輪駆動)
- フロントミッドシップエンジン
- 8速DCT+独自PTUシステム
- 通常は後輪主体
- 必要時のみ前輪を駆動

なお、プロサングエの4WDは非常に特殊な制御を持っていて・・・。
- エンジン後方の8速DCTで後輪を駆動
- エンジン前方のPTU(Power Transfer Unit)が前輪を駆動
という、かつてのFFやGTC4Lussoを進化させたシステムを持っており、高速域では実質的に後輪駆動となるため、フェラーリらしいハンドリングを維持することが可能となっています。
アクティブサスペンション「FAST」の威力
そしてプロサングエの乗り味を「プロサングエたらしめている」のがFAST(フェラーリ・アクティブ・サスペンション・テクノロジー)と呼ばれる最新のアクティブサス。
これはダンパーにエレクトリックモーターを装備して「強制的に」タイヤを地面に押し付けたり引っ張り上げたりするもので、ロジックとしてはポルシェがパナメーラに採用して「ダンス」をさせたアクティブサスと同じものだと思われます。

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フェラーリの場合、マルチマティック製TASV(トルク・アクティブ・スプール・バルブ)システムを核としており、各ダンパーに組み込まれた48Vの電気モーターが路面からの入力やコーナリングGを瞬時に計算し、車体のロールやピッチング(前後の傾き)を力技で相殺することになりますが、試乗コースであった「比較的路面が荒れ、うねりもあるトラックターミナル」においても姿勢がビタリと安定しており、これは「平坦な路面であっても、加速や原則、コーナリングで」車体が揺れるベントレー・ベンテイガやロールス・ロイス・カリナンとは全く異なる乗り味です。
そしてこのプロサングエに近いフィーリングを持つのはポルシェ・カイエン、そしてランボルギーニ・ウルスだと考えていますが、プロサングエはカイエンよりも安定し、ウルスよりもしなやかという印象です。

市場でのポジショニング:他社の「ハイパフォーマンスSUV」とは一線を画す孤高の存在
ラグジュアリーSUV市場には、ランボルギーニ・ウルス、ベントレー・ベンテイガなど多くの強力なライバルが存在し、しかし、これらはグループ内の別ブランド(アウディやポルシェなど)とプラットフォームやコンポーネントを共有して作られています。※アストンマーティンDBX707は専用設計プラットフォームを持っている
対するプロサングエは、このクルマのためだけに新開発された専用アルミモノコックを採用し、さらにはエンジンをフロントアクスルの完全に後方に置く「フロントミッドシップ」を採用したうえで「重いトランスミッション」をリアに配置することにより、スーパースポーツカー顔負けの「前49:後51」という驚異的な重量配分を実現しています。

フェラーリ プロサングエ 主要スペック
| 項目 | フェラーリ・プロサングエ(Ferrari Purosangue) |
| エンジン形式 | 6.5L 65度 V型12気筒 DOHC 48バルブ(自然吸気) |
| 最高出力 | 725 hp @ 7,750 rpm |
| 最大トルク | 716 Nm @ 6,250 rpm (2,100rpmから最大値の80%を発揮) |
| トランスミッション | 8速デュアルクラッチ(リア配置のトランスアクスル構造) |
| 駆動方式 | 4輪駆動(フロントにも独立した2速変速ギアを持つPTU搭載) |
| 前後重量配分 | フロント 49 : リア 51 |
| 0-100 km/h 加速 | 3.3 秒 |
| 最高速度 | 310 km/h 以上 |
| 車両寸法 | 全長 4,973 mm × 全幅 2,028 mm × 全高 1,589 mm |
| 乾燥重量 | 2,033 kg (車検証記載の車両重量は約2,210kg) |
| ラゲッジ容量 | 473 L (フェラーリ史上最大、後席電動フォールド可能) |
| 車両本体価格 | 約 47,600,000 円 〜 (※発売時。オプションにより大幅に変動) |
フェラーリ プロサングエは「乗員すべてに同じ体験を」

上述の通り、プロサングエはフェラーリ初の4人乗りではありますが、「デュアルコクピット」の採用でも分かる通り、「ドライバーだけが楽しむ」ためのクルマではなく、助手席の同乗者は、自分の前の画面(パッセンジャーモニター)で現在の速度やエンジン回転数、Gセンサーの動きをリアルタイムで確認できるほか、シートのマッサージ機能やエアコンを独立して操作可能。
さらに後部座席は「フロントシート」と同じ仕様を持っており、「5人乗り仕様」が存在しないことからも後部座席に座る人に「運ばれるだけではない」体験を示しているのがこのプロサングエ。
「運転手だけが楽しいスポーツカー」でもなく、「後席をもてなすだけのリムジン」でもない。「4人全員が同じテンションで、等しく跳ね馬のGT体験を共有する」というプロサングエのコンセプトが、この構成からも色濃く伝わってくるかのようですね。

これは究極のファミリーカーであり、最も実用的な「純血の跳ね馬」である
フェラーリ・プロサングエは、これまでの「SUV=実用性のために走りを妥協したクルマ」という既成概念を、文字通り粉々に粉砕する衝撃作。
確かに最低地上高(ロードクリアランス)は185mm確保され、大人4人が余裕を持って座れる快適なシート、そしてゴルフバッグやスーツケースを飲み込むラゲッジスペースを備えていて、さらにはチャイルドシートを固定するISOFIXも標準装備されており、家族を乗せて雪道や日常の買い物へ行くことすら躊躇なくこなせる万能さを持っています。
しかし、その本質はどこまでいっても純血のフェラーリであることは間違いなく、アクセルを踏み込んだ瞬間に弾けるV12の咆哮、路面に吸い付くような異次元のハンドリングは、ぼくらが憧れたあの「跳ね馬」そのものであり、実際に運転してみると実用性のためにエモーションが1ミリも犠牲にされていないことがわかります。

4800万円という価格はあまりにも現実離れしていますが、もし「世界最高のスポーツカーを所有したいものの、家族との時間も諦めたくない」と願うなら、これ以上の回答は地球上に存在しないとも確信しており、プロサングエは実用性という最後のピースを手に入れた、歴史に名を残す新たなる伝説の1台ということになるのかも。
「プロサングエ」は「プロサングエ」というジャンルのクルマである
このプロサングエの試乗については多くのことを考えさせられ、結論としては「これは既存のフェラーリの延長線上にあったり、既存のフェラーリの車高を上げただけ」のクルマではないということ。
V12エンジンを共有しつつもプロサングエのキャラクターや駆動方式に合わせて設定を変更し、さらにはフェラーリの考える客層に合わせてサスペンションを新しく設計し、さらにはインテリアにおいても共有パーツが最小限となって「ほとんどがプロサングエ専用」。

つまるところ、フェラーリは「車高が高く、人がたくさん乗れて、便利なクルマ」を作ろうとしたわけではなく、「プロサングエというクルマ」を最初に明確にイメージし、その”プロサングエ”を作ろうとしてすべてを新しく設計したクルマであるとも考えられます。
これは既存のどのフェラーリとも異なる乗り味を持つことからもわかり、かつての「GTC4ルッソ」とは全く異なる生い立ちを持つクルマということになるのかもしれません(FF、GTC4ルッソは乗り味にせよ、デザインにせよ、車体やコンポーネントにせよ、既存モデルの延長線上にあるという印象が強かった)。
そしてもうひとつ興味深いのはロールス・ロイス・カリナンが「背の高いゴースト」であり、マセラティ・レヴァンテが「背の高いグラントゥーリズモ」であるということに対し、プロサングエは「背の高い12チリンドリ」ではないということ。

しかしこれらはけしてネガティブな意味ではなく、目指す場所が異なるということで、ロールス・ロイスやマセラティは「ロールス・ロイスとはなにか」「マセラティとはなにか」という回答あるいは理想を把握していて、すべてのモデルにおいてそれを実現すべく設計を行っているものの、フェラーリは「モデルごとに明確なキャラクター」を与えるという方向性を持っているということがわかり、「プロサングエはプロサングエ」「12チリンドリは12チリンドリ」という乗り物というわけですね。
なお、この方針はここ最近になって(おそらくはローマの登場あたりから)顕著になったもので、それ以降のフェラーリは明確な「ターゲット」を設定して設計され、それぞれのモデルがそれぞれの異なる客層(そしてその多くは今までフェラーリに乗ったことがない人々)を狙っているようにも。
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