
| ロールス・ロイスは自身の理想を求める孤高の存在である |
そしてその製品は「自動車」ではなく「ロールス・ロイス」である
さて、先日参加させていただいたイベント、A.C.P. モーニングドライブにてロールス・ロイス・スペクター・ブラックバッジ、カリナン(シリーズII)・ブラックバッジへと連続試乗。
このイベントではロールス・ロイス、ベントレー、マクラーレン、ランボルギーニ各ディーラーが協力を行っており、よって会場に持ち込んだ試乗車をドライブすることが可能となっていて、限られた時間、短い距離ではあったものの、ここで両車を実際に運転してみた印象について述べてみたいと思います(あらためてロールス・ロイス ディーラーへと訪問しようと思う)。
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スペクター ブラックバッジ と カリナン ブラックバッジ (シリーズ II) 詳細比較表
まずはスペクター・ブラックバッジとカリナン・ブラックバッジとの比較がこちら。
| 項目 | スペクター ブラックバッジ | カリナン ブラックバッジ |
| ボディタイプ | 2ドア 4シーター クーペ | 5ドア 4/5人乗り SUV |
| 全長 | 5,475 mm | 5,355 mm |
| 全幅 | 2,017 mm (本国発表値は2,080mm) | 2,000 mm |
| 全高 | 1,573 mm | 1,835 mm |
| ホイールベース | 3,210 mm | 3,295 mm |
| 車両重量 | 約 2,890 kg ~ 2,975 kg | 約 2,660 kg ~ 2,750 kg |
| パワートレイン | 完全電気自動車 (BEV) ツインモーター | 6.75L V型12気筒 ツインターボ |
| 最高出力 | 659 hp (485 kW) | 592 hp (600 PS) |
| 最大トルク | 900 Nm | 850 Nm |
| 0-100km/h加速 | 約 4.3秒 | 約 4.8秒 |
| 駆動 / 操舵方式 | 全輪駆動 (AWD) / 4輪操舵 (4WS) | 全輪駆動 (AWD) / 4輪操舵 (4WS) |
| ホイールサイズ | 23インチ (標準) | 22インチ (ブラックバッジ専用) |
| 新車本体価格の目安 | ベース車:4,800万円〜 ※BB仕様は6,000万円前後〜 | ベース車:5,346万円〜 ※BB仕様は6,200万円前後〜 |

サイズ感から見る特徴の補足
- 全長はスペクターの方が長い:SUVであるカリナンの方が大きく見えがちですが、実は2ドアクーペのスペクターの方が全長が120mm長く設計されていて、ロングノーズ・ファストバックの優美なプロポーションを実現するため、非常に贅沢な全長を持っている
- 全幅はいずれも2m超え:どちらも日本ではかなり大柄な部類に属し、スペクターはミラーを含まない状態でも2,017mm、カリナン(2,000mm) よりもわずかにワイド
- 重量はEVのスペクターが上回る:カリナンは巨大なV12エンジンを積んでいるものの、スペクターは床下に巨大な重い駆動用バッテリーを敷き詰めているため、車両重量はスペクターの方が150kg〜200kgほどヘビーに。しかし、その重さがロールス・ロイス特有の「重厚でフラットな乗り心地」に大きく貢献している
ロールス・ロイス「ブラックバッジ」とは?
この「ブラックバッジ(BBと略されることも。これに対して通常ラインは”シルバーバッジ”)」は2016年に導入されたロールス・ロイスの「公式カスタム/高性能仕様」という位置づけで、一言で言えば、ロールス・ロイスの伝統的な気品や快適性に、「ダークな美学(反骨精神)」と「ダイナミックな走行性能」を掛け合わせた、ブランドの「裏の顔(オルター・エゴ:もうひとつの人格)」とも呼べる特別なシリーズです。

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この仕様が誕生した背景には、従来の「運転手を雇って後席に乗る車」というイメージを覆し、自らステアリングを握って走る若き実業家やクリエイターのライフスタイルに合わせるという狙いがあり、このブラックバッジのヒットによって、ロールス・ロイス特有の「若い客層」の形成が可能になっているのだと思われます。
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ロールス・ロイス・スペクター・ブラックバッジに乗ってみた
そこでまずは659馬力を誇る電気自動車、スペクター・ブラックバッジに試乗。
パープルの外装にライムグリーンの内装という「ロールス・ロイスらしからぬ」コンビネーションではありますが、これこそが「ブラックバッジらしい」オルター・エゴを表現する仕様そのものなのかもしれません(そしてパープルはロールス・ロイスのブランドカラーでもある)。

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ドアが電動で開いたり、ブレーキペダルを踏むとまたドアが電動で閉じたりというゴージャスな装備にも驚かされますが、レザーの質感(ロールス・ロイス専用の牧場があるそうだ。そこでは丁寧に牛が育てられているに違いない)、シートの座り心地の素晴らしさ、カーペットの心地よさ(ウール素材のムートンっぽいフカフカしたもの)など、目に入るもの、手に触れるものだけではなく「身体や足からでも」高級感が伝わってくるのはさすがロールス・ロイス。
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ロールス・ロイス自身、「人類が作りうる最高のクルマ」だと自社製品を表現していて、実際に「シートレールまでポリッシュ」されるなど、完全にクルマの域を超えた存在だと思います(超高級車という表現であっても生ぬるい)。
Image:Life in the FAST LANE.
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ロールスロイス「我々の車は人類が作りうる最も高級なもの。これからも高級車のベンチマークであり続ける」
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そしてインテリア全般や操作系は「いつものロールス・ロイス」という安心感があり、つまり「EVっぽさ」を演出していないということで、これは多くの自動車メーカーが「EVにはEV専用のインテリア」を与えるのとは大きく異なる路線です。
こういった内装につき、ロールス・ロイスの顧客は(上述のように)非常に若いので、高齢者に配慮して「いままでのインターフェースを継続した」というわけではなさそうですが、このあたりの意図はこの後にカリナン・ブラックバッジを試乗した後に見えてきます。
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この巨体にもかかわらず、ロールス・ロイス・スペクターは「乗りやすい」
なお、ドライブフィールとしては(ロールス・ロイスだけあって)非常にスムーズ、そして加速においても「多くのEVがそうであるように、凶暴な」ものではなく、とにかく滑らかという感じ。
Image:Life in the FAST LANE.
実際のところ、人が感じる加速「感」については現在様々な研究がなされていて、単にこれは0-100km/h加速が速ければ「気持ちいい」というものではないそうで、ロールス・ロイスはこのあたりにも配慮しているのかもしれません。
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車体そのものはとんでもなく大きく、しかし見切りのいいボディ形状、そして意外と小回りがきく設定によって、このサイズを感じさせず安心して運転することが可能です。
そしてもちろん静粛性については特筆すべきレベルにあり、これが「本当にロールス・ロイスが作りたかったクルマ」なんじゃないだろうか、という印象(ロールス・ロイス創業者は静かさを重視しており、120年前の時点で「インフラさえ整えば、電気自動車が最適解」だとコメントしている)。
Image:Life in the FAST LANE.
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ロールス・ロイス・カリナン(シリーズII)ブラックバッジに乗ってみた
そして次に乗ったのは6.75リッターV12エンジンを積むカリナン(シリーズII)ブラックバッジ。
スペクターの直後に乗ったからこそ気づいた事実だと思いますが(いずれか片方だけの試乗では気づかなかった。比較試乗は大事)、スペクター、そしてカリナンともに基本的な操作系やインターフェースは「ほとんど同じ」。
同じ位置にスターターがあり、同じ位置にコラムシフトレバーがあって同じように操作を行うのですが、この共通性の意図はエンジンに火を入れスタートさせた後に明らかになり、それは「ピュアEVクーペのスペクター、V12エンジンを積むSUVであるカリナンとのドライブフィールが全く一緒」だったから。
Image:Life in the FAST LANE.
パワートレインやパッケージングがまったく異なるクルマで「同じフィーリング」を演出することはまったくもって困難であると思うのですが、ロールス・ロイスはそれを完璧に成し遂げており、加速やブレーキング、コーナリングも「全く同じ(もっとスピードを出せば違いが出るのかもしれないが、タウンスピードではその違いを見いだせない)」。
もちろん視界の高低といった相違はあるものの、これほどまでにスペクターとカリナンが共通する感触を持つことには驚かされ、そしてこの共通性を持つ理由につき、ロールス・ロイスが「どんなクルマであっても、ロールス・ロイスが理想とする乗り心地やドライブフィールは究極のレベルにおいて慣性しており、ロールス・ロイスとしてはそれを実現するのみ」ということなのだという(ぼく的な)結論へと至ることに。
さらにいうなれば、カリナンのアイポイントは(当然ながら)高いものの、ダッシュボードと自分の位置関係、フロントウインドウから見えるボンネット、そしてボンネット先端に見えるスピリット・オブ・エクスタシーのポジションと見え具合までもがカリナンとスペクターとで共通していて、これも当然「意図したもの」だと考えられます。
Image:Life in the FAST LANE.
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ロールス・ロイスの車は「ロールス・ロイス」という名の製品である
そう考えるならば、スペクターとカリナンとが共通のインテリア、インターフェースを持つことにも合点がゆき、ロールス・ロイスとしては「天上天下唯我独尊」にて、自身の信じる道をひたすら追求するということなのかもしれません。
そしてこういった「市場に迎合せず、ひたすら最高のものを求め続ける」という姿勢がロールス・ロイスを「ライバルとは比較できない」存在へと押し上げ、そして自動車をも超越させてしまったのだとも考えているのですが、現時点での到達点がスペクターそしてカリナン(シリーズII)であり、よって両者が同じ仕様そしてレベルにあるのだとも考えられます。
要は、ロールス・ロイスは「電気自動車を作ろうとして」スペクターを作ったわけでもなく、「快適なV12エンジン搭載SUVを作ろうとして」カリナンを作ろうとしたわけでもなく、「ロールス・ロイスの基準と哲学に則り」ロールス・ロイスを作ろうとしてスペクターとカリナンを作ったのだと捉えています(パワートレイン、ボディ形状に関係なく、ロールス・ロイスはロールス・ロイスである)。
Image:Life in the FAST LANE.
こういった考え方は、モデルやグレード間での差別化を拡大し、自社内で食い合わないようにしたり、あるいは特定のスペックを実現することで特定のライバルに対抗するといった他の多くの(あるいはほとんどの)自動車メーカーとは全く異なるもので、こういった姿勢がロールス・ロイスをロールス・ロイスたらしめているのかもしれません。
なお、カリナン・シリーズII ブラックバッジを運転した印象だと、カリナン・シリーズIを運転したときに感じた「ふわふわした」印象、そして重心の高さに起因するであろうピッチやロールが感じられることはなく、これは「ブラックバッジだからなのか(足回りが引き締められている)」、あるいは「シリーズIIに進化したからなのか」はちょっと不明。
Image:Life in the FAST LANE.
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そしてもう一つ付け加えるならば、「車内の静かさと快適さ」もまた自動車のレベルを超えており、文字通り車内は「外界と隔絶された空間」となっていて、クルマの外で起きる出来事は(視覚以外では)車内に入ってくることはなく、心の平穏と極度の安心感が得られるようにも。※後部座席だと、モニターすら電動でせり出してきたり、とにかく自分ではなにもせず座っているだけでいいのがカリナンである
どのようなクルマでも、自分で運転していれば、ちょっとくらいは「イラッ」とする瞬間があるかと思いますが、ロールス・ロイスを運転しているときに見える外の風景は「現実ではなく、モニター越しに見ている世界のようで」、そのため他のクルマを運転していて「イラッ」とするような場面でもロールス・ロイスだと「現実味がないため」イラッとすることがなく、いたって平常心で運転できるというのが今回の試乗で感じたぼくの印象です(それくらい車内と車外とが隔てられている)。
ちなみにですが、ぼくは「最後に乗るクルマはロールス・ロイス」「ロールス・ロイスに乗ってから死ぬ」と決めているので、どこかのタイミングにてロールス・ロイスを購入することになるであろう、と考えています。
Image:Life in the FAST LANE.
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