
Image:Niels van Roij Design
| 1万5千時間の狂気、カーゴスペースのウインドウ開閉は「ガルウイング」 |
「フェラーリベースのシューティングブレーク」は意外と強い需要を持っている
世の中には、サーキットのラップタイムを削るため、あるいは誰も到達できない最高速を目指すために作られるスーパーカーが数多く存在します。
しかし今回紹介する1台はそれらとは全く異なるベクトル――「自動車史に輝く1台の伝説への敬意(オマージュ)」という純粋な情熱と目をみはるほどの職人技によって生み出されたワンオフモデルであり、オランダのデザインハウス「Niels van Roij Design(ニールス・ファン・ロイ・デザイン)」が1万5000時間以上もの歳月を費やして完成させた珠玉「デイトナ・シューティングブレーク・オマージュ」です。
この記事の要点
- 15,000時間を投じた至高のワンオフ:オランダの気鋭デザインハウス「Niels van Roij Design」が、フェラーリをベースにした唯一無二のカスタムカー「デイトナ・シューティングブレーク・オマージュ」を発表。
- 伝説の1972年型が現代に覚醒:かつてル・マンの英雄ルイジ・キネッティJr.の呼びかけで生まれた伝説の「365 GTB/4 デイトナ シューティングブレーク」をオマージュ。
- ドア以外はすべて専用設計:ドナー車の面影を残しつつ、外板パネルのほぼすべてをハンドメイドのアルミニウムで再構築。
- 度肝を抜く「バタフライ・ラゲッジ窓」:一般的なハッチバックゲートを持たず、荷室へは電動で跳ね上がる左右のガラス製バタフライウインドウからアクセスする独創の構造。

Image:Niels van Roij Design
360度どこから見ても新造形。現代に蘇るシューティングブレークの美学
このプロジェクトのインスピレーションの源泉は、北米のフェラーリインポーターであり、ル・マン勝者でもあるルイジ・キネッティJr.が、1972年当時の「フェラーリ 365 GTB/4 デイトナ」をベースにイギリスのパンサー・ウェストウィンズに製作を依頼した、伝説のカスタムモデル「デイトナ シューティングブレーク」。※ジャミロクワイのフロントマン、ジェイ・ケイもかつて所有していたことで知られる
今回の現代版オマージュでは、フロントに官能的な自然吸気V12エンジンを積む最高峰のグランドツアラー、「フェラーリ 599 GTB フィオラノ」がドナー車(ベース車両)に選ばれていますが、驚くべきことに左右のドアを除く、ほぼすべての外板パネルが職人の手によってアルミニウムから叩き出された専用設計となっています。
フロントマスクに目を向けると、1972年型デイトナを象徴していたフル幅のアンバー(琥珀色)のライトシグネチャーを、3Dプリントによるカーボン複合素材を用いた現代的なウイング形状のアートピースへと昇華。ノーズに配されたシルバーのデイトナバッジには「Shooting Brake Homage」の文字が刻まれています。
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— Niels van Roij Design (@NielsvanRoij) July 6, 2026
As the unveiling of the Daytona Shooting Brake Hommage approaches, we would like to take a moment to acknowledge the extraordinary people behind this project.
Coachbuilding a one-off automobile is never the work of a single individual or company. pic.twitter.com/6DUm2UwFsa
そして最大の見どころは、リアのルーフラインからテールエンドにかけての造形で、このモデルには一般的なワゴンが持つ「後ろに開くリアゲート」が存在せず、その代わりとしてラゲッジスペースへアクセスするための左右独立式・電動バタフライウインドウ(ガルウイング窓)が組み込まれることに。
ヒンジ部分には肉抜き加工が施された削り出しのアルミニウム製パーツが露出しており、デザインハウスが「ジュエリー(宝飾品)」と呼ぶにふさわしい、工芸品的な美しさを放っています。
The wait is over.
— Niels van Roij Design (@NielsvanRoij) July 8, 2026
Introducing the Daytona Shooting Brake Hommage by Niels van Roij Design.
A hand-built, one-off V12 grand tourer. Inspired by a 1972 icon. Reimagined through contemporary coachbuilding.
More to follow.#DaytonaShootingBrakeHommage #Coachbuilding pic.twitter.com/6OHqFc6ku8
コニャックレザーと「センターレイアウト」メーターが織りなす究極のインテリア
インテリアに目を移すと、やはりベースとなった599 GTBから劇的な変貌を遂げていることがわかり、ドライバーの正面にあったはずのメータークラスターは、なんとダッシュボードの中央へと移設され、これは1972年のオリジナル車両が採用していたレイアウトを忠実に再現したもので、ドライバーの目の前を完全に開け去ることで、往年のクラシックツアラーのような特別な視界をもたらすという効果を狙っています。

Image:Niels van Roij Design
室内全体は温かみのある最高級のコニャック・タンレザーで覆いつくされ、カーボンバックを持つバケットシートには美しいダイヤモンドステッチが施されており、ステアリングホイールからは、法的な理由(跳ね馬の商標権)によりフェラーリのエンブレムがあえて外されていますが、その佇まいだけでこれが特別な血統であることは一目瞭然。
ラゲッジコンパートメントの床面には、贅沢にもカーボンファイバーが敷き詰められ、コンソールのシフトセレクターのデザインとリンクするCNC加工のアルミニウム製ランナー(滑り止めレール)を配置。実用的なスペースでありながら、最高峰のディテールが与えられています。
ベース車両(フェラーリ 599 GTB)のスペック詳細
メカニズムに関しては、ベースとなった599 GTB フィオラノの信頼性の高いパワートレインがそのまま維持されていて、これはオーナーがこの芸術品を「ガレージに飾るだけでなく、日常のドライブで実際に走らせる」ことを想定しているため。
デイトナ・シューティングブレーク・オマージュ 主要スペック
- ベース車両:フェラーリ 599 GTB フィオラノ
- エンジン:6.0リッター V型12気筒 DOHC 自然吸気(Tipo F140C)
- 最高出力:620 PS(611 hp) / 7,600 rpm
- 最大トルク:608 Nm(448 lb-ft) / 5,600 rpm
- トランスミッション:6速「F1マチック」(シングルクラッチ・シーケンシャル)
- 駆動方式:後輪駆動(FR / フロントミッドシップ)
- 0-100km/h加速:3.7秒
- 最高速度:330 km/h以上(ベース車両公称値)
- マフラー仕様:水平2連×左右(ダブルバレル・ショットガンをモチーフにした4本出し)

Image:Niels van Roij Design
自動車の歴史を彩る「シューティングブレーク」の起源と現代のトレンド
今回のモデル名にもなっている「シューティングブレーク(Shooting Brake)」という言葉。
現代ではメルセデス・ベンツ(CLA/CLS)や、かつてはアストンマーティンなどが用いたことで、スタイリッシュなスポーツワゴンの代名詞として定着していますが、その起源とは・・・。
1. 始まりは「狩猟」のための馬車
19世紀、イギリスの貴族たちが「シューティング(狩猟)」に出かける際、猟犬や銃器、そして仕留めた獲物を載せるために使われた専用の馬車がその始まりだとされ、「ブレーク(Brake)」とは、野生馬の気性を「へし折る(Break)」ために使われた頑丈なシャーシ、または制動機付きの馬車を指しています。
2. なぜ富裕層に愛されるのか?
1960年代〜70年代になると、アストンマーティンやフェラーリなどの超高級スポーツカーのクーペボディをワゴン化するカスタム(コーチビルド)がヨーロッパのセレブの間で大流行し、 「スポーツカーの走りの良さと美しさ」を保ちつつ、「ゴルフバッグやハンティングの道具、あるいは週末の旅行カバンを贅沢に積み込める」というキャラクターは、“有り余る富と、実用性に縛られない遊び心”の象徴となったというわけですね。
現代のトレンドにおける位置付け
現代の自動車市場はSUVが席巻しているものの、目の肥えたトップコレクターたちの間では「SUVは実用的すぎる(=ありふれている)」と捉えられることも。
だからこそ、こうした「あえて車高の低いスーパーカーをワゴンにカスタムする」という贅沢なシューティングブレークは、今なお究極のステータスシンボルとして富裕層の人気を集め、Niels van Roij Designのような独立系コーチビルダーの手によって極少量だけ生み出され続けているという現実が存在します。

Image:Niels van Roij Design
結論:フェラーリ公式すら超えられない、コーチビルドという至高の贅沢
現代のフェラーリにも「ワンオフ・シリーズ(SPシリーズ)」という、世界に1台だけの顧客限定カスタムプログラムが存在し、しかし、フェラーリ自身の厳格な社内デザイン規律のなかではここまで尖った、かつ過去の特定モデル(しかも他社が手を加えたデイトナ)への直球のオマージュ作品は、公式にはなかなか生まれにくいのではないかと考えられます。
だからこそ莫大な資産と情熱を持ったコレクターはニールス・ファン・ロイのような卓越したビジョンを持つ外部のデザイナーへと依頼することとなり、1万5000時間という途方もない時間をかけてクルマをカスタムするという決断を下すことになるわけですが、ハンドメイドの結晶として完成したこの「デイトナ・シューティングブレーク・オマージュ」は、電動化や自動運転へと向かう現代のトレンドに対する、最高にエレガントで、最高に贅沢な反逆と言えるのかもしれません。※同社は過去にもいくつかフェラーリベースのコーチビルド車を制作しており、確かな実績を持っている
このクルマがロンドンのロイヤル・オートモビル・クラブ(RAC)やグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの会場に姿を現したとき、集まった世界中のエンスージアストたちがどのような歓声をあげるのか、想像するだけで胸が熱くなろうというものですね。
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参照:Niels van Roij Design











