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アウディがジャーマンスリーの先陣を切って「巨大ディスプレイ信仰」に終止符。物理ボタンと極上素材を取り戻し「引き算の美学」をインテリアへ

新型アウディA6のインテリア
Life in the FAST LANE.

| 巨大ディスプレイに慣れた現代の消費者にとっても「納得できる」インテリアの実現は容易ではないだろう |

さらに「触覚」は目で見てわからず、実際に操作しないとわからない

近年の新型車で主流となっている、ダッシュボードを埋め尽くす「巨大液晶ディスプレイ」。

一見すると先進的なインテリアとして目に映るものの、運転中の操作性の悪さ(必要な機能をすぐに呼び出せない)やプラスチッキーで味気ないインテリアに失望したことのあるオーナーも少なくはないかもしれません。

こうしたユーザーの不満(バックラッシュ)を受け、かねてより報じられていたように、プレミアムブランドの雄であるアウディ(Audi)が大きな舵を切ったというのが今回のニュース。

アウディの最高技術責任者(CTO)であるルーヴェン・モール(Rouven Mohr)氏は、今後の次世代モデルにおいて巨大画面への過度な依存を減らし、本物の素材感と「あの心地よいクリック感」を持つ物理コントロール(ボタンやダイヤル)を復活させると明言し、新デザイン言語「ザ・ラディカル・ネクスト(The Radical Next)」のもと、ブランドのDNAである「触感のクオリティ」を取り戻す方針を明らかにしています。

新型アウディA6のインテリア
Life in the FAST LANE.

この記事の要約

  • 液晶ディスプレイ依存からの脱却: 「走るタブレット」のような過剰な画面配置を改め、ディスプレイはより控えめで調和のとれたデザインへ移行。
  • 物理ボタン&ダイヤルの復活: ユーザーの不満を受け、ステアリングなどの静電容量式タッチスイッチを廃止。直感的にブラインド操作できる物理スイッチを復権。
  • 本物志向の素材(リアルマテリアル): 「金属に見えるものは本物の金属にする」という哲学を徹底。安価なピアノブラックを廃止し、本物のスレート(石材)やアルマイト加工アルミを採用。
  • 新世代コックピットの先駆け: 超限定ハイパーカー「ヌヴォラーリ」や、今後の市販EV・次期型A4にこの「美しい引き算のコックピット」が順次採用される。

アウディが「触る喜び」を再び重視する背景

アウディには”かつて”質感の高いダイヤルを回したときの「カチッ、カチッ」という極上のクリック感(いわゆる「アウディ・クリック」)、そして隙間のない完璧な建て付け精度で世界のインテリア・デザインをリードしていた時代が存在します。

しかし、近年の「デジタル化」の波に乗り、新型「A5」や「Q5」などでは、ステアリングに静電容量式のタッチセンサーを採用し、湾曲した巨大なスクリーンを配置するデザインへとシフトしており、これが「運転中に操作しづらい」「直感的ではない」「以前のような本物の高級感が薄れた」といった、ユーザーからの強い反発を招く結果となったというのが直近までの話であり、2026年3月にアウディの技術トップに就任したルーヴェン・モール氏(元ランボルギーニのCTO)はオーストラリアのメディア「GoAuto」の取材に対し、以下のように力強く語っています。

「私たちは、本物の素材(リアルマテリアル)に多大な注意を払うつもりです。金属に見える素材があるなら、それは本物の金属であるべきです。また、ボタンや回転式ダイヤルといった物理的な要素を残すこともアウディのDNAの一部だと信じています。そして、それらの一つひとつが、アウディ伝統のクラシカルなクリック感、タッチ、そして操作フィーリングを備えていなければなりません」

新型アウディQ3のインテリア
Life in the FAST LANE.

アウディ次世代インテリアの核となる「ザ・ラディカル・ネクスト」の特徴とスペック

アウディが掲げる新たなデザイン哲学「ザ・ラディカル・ネクスト(The Radical Next)」(別名:Strive for Clarity=明確さへの挑戦)は懐古主義の一環というよりも、デジタル技術を「主役」として誇張するのではなく、インテリアの「一部」として美しく調和させるという”極めて現代的な”引き算の美学です。

新デザイン言語がもたらすコックピットの進化点

進化項目従来のデジタル重視デザイン「ザ・ラディカル・ネクスト」による新アプローチ
ディスプレイダッシュボードを占領する巨大で「後付けiPad」のような液晶サイズを控えめにし、視界を遮らないよう低く、または水平に美しくインテグレート。
操作系ステアリングやコンソールに配置された、触圧の分かりにくいタッチ式パネル伝統的な物理ボタンおよびスクロールホイール(ダイヤル)の完全復活。
加飾素材傷や指紋が目立ちやすい「ピアノブラック(プラスチック)」の多用本物のアルマイト仕上げアルミニウム、天然のスレート(粘板岩・石材)など、質感の高い本物素材を採用。
デザインの方向性視覚的なハデさ、情報過多(デジタル・ドミナント)視覚的ノイズを極限まで削ぎ落としたアスレチック・ミニマリズム(幾何学的な純粋さ)
アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のインテリア

Image:Audi

新デザインを体現する、アウディの最新ポートフォリオ

この新しいインテリア哲学は、アウディの象徴的なモデルたちにステップ・バイ・ステップで導入されてゆくことになり・・・。

  • アウディ・ヌヴォラーリ(Audi Nuvolari):システム出力1,001馬力を誇る世界限定499台のハイブリッド・スーパーカー。そのスパルタンかつノイズのない超一級のインテリアにはピアノブラックが一切排除され、ステアリング上には機能的な物理スイッチが美しく整列することに
  • アウディ・コンセプトC(Concept C):タルガルーフを備えた次世代EVスポーツ(次期型TTを予感させる2シーターモデル)。無駄なラインを排除し、アルマイト仕上げが施されたアルミニウムを贅沢に使用したミニマルなコックピットを持ち、新デザイン言語のファースト・ステップを提示する
  • 今後の展開:マイナーチェンジを控える現行「Q7」などの一部モデルは既存の液晶路線を踏襲するものの、これが現行のデザイン路線を継承する最後期モデルとなり、2027年以降に登場予定の「コンセプトC」市販版、そしてフルモデルチェンジが期待される2028年型「A4」の後継モデルからこの「物理ボタン&上質素材」の本格的な復活が予定されている

この急激な方針転換は「デザイナーの交代」によるものが最も大きいのではと思われ、しかしこれまでアウディが貫いてきた「インフォテイメント画面とピアノブラック中心」からの”180度”ともいえる大転換の背景には「アウディの危機感」があることには間違いなく、それだけアウディが現状に対して「なんとかしないと」と考えているのだ、ということなのかもしれません。

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競合比較と市場での位置付け:世界に広がる「画面離れ」

アウディのこの方針転換は自動車業界全体で静かに、しかし確実に起こっている「アンチ・タッチスクリーン(画面回帰)」のトレンドと完全に一致しています。

現在、この「タッチ操作偏重への反省」を表明、または実際に物理ボタンを復権させているブランドは以下の通りとなっていて・・・。

  • メルセデス・ベンツ: 高級感の演出としてスクリーンを多用しつつも、ステアリングスイッチの使い勝手改善に着手。
  • ヒョンデ(現代自動車): 「タッチパネルは運転中に危険」として、主要機能の物理ボタン回帰を明言。
  • フォルクスワーゲン(アウディの親会社): 新型ゴルフなどで、不評だったステアリングのタッチ式スイッチを早々に物理ボタンへと戻す改修を実施。
  • フェラーリ: ステアリングのタッチパネル操作から、より確実なフィードバックのあるスイッチ類への再検討を推進。
メルセデス・ベンツのインテリア(MBUXスクリーン)
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自動車業界のネクスト・トレンド

車載インフォテインメントが高度化する一方、安全基準(ユーロNCAP等)でも「主要な機能(ウインカー、ハザード、ワイパー、エアコン等)は物理スイッチで行うべきであり、そうでなければ安全評価の最高レーティングを与えない」という方針が打ち出され始めているのがいまの状況。

ユーロNCAPの新基準によって「大型ディスプレイ」は影を潜める?「重要な機能のボタンやスイッチについて、個別の物理制御を備えねば安全性が低いと判断されます」
ユーロNCAPの新基準によって「大型ディスプレイ」は影を潜める?「重要な機能のボタンやスイッチについて、個別の物理制御を備えねば安全性が低いと判断されます」

| よく使う機能について、その呼出に時間がかかるようではたしかに安全性を損ねてしまう | いくつかの自動車メーカーにとって、この新しい方針は「頭が痛い」問題となるのかも さて、2026年に導入が予定さ ...

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アウディの決定はラグジュアリーな顧客体験の向上だけでなく、「安全性の担保」という実利的な市場要請に先手を打つものでもあり、これがアウディにとっての「起死回生の一撃」となることを願わんばかりですね。

結論:愛車との「対話」を取り戻す、アウディの賢明な選択

アウディが「液晶画面の引き算」と「物理ボタンの掛け算」を選択したことは、クルマを「効率的な移動手段」としてだけでなく、「五感で楽しむ愛車」として捉える世界中のドライバーにとって最大の朗報です。

金属に見えるプラスチックを配し、すべての操作を画面のメニュー階層の奥深くに隠す手法は、コスト削減や製造の効率化には寄与したかもしれません。しかし、アウディというプレミアムブランドに期待される「凝縮されたクラフトマンシップ」とは相反するものであったのもまた事実。

一度失いかけた「五感に響くクリック感」と「触れて心地よい本物の素材」への回帰。アウディが示すこの進路は、テクノロジーに溺れる現代のモビリティ社会において、人間中心のラグジュアリーとは何かを改めて問い直す、極めてスマートなマイルストーンとなる可能性を秘めています。

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Image:Audi

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