
| トヨタとBMWは様々な方面において提携姿勢を強める |
各社による、生存をかけた独自戦略の展開そしてその行方に注目が集まる
電気自動車(EV)へのシフトが急がれる現代の自動車産業において、内燃機関(エンジン)の未来を切り拓くための極めて重要なプロジェクトがスタートした、というのが今回のニュース。
2026年7月15日、ドイツのBMWグループ、トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)、技術大手のボッシュ(Bosch)、そしてスペインのエネルギー大手レプソル(Repsol)の4社は、既存の車両とインフラをそのまま使用し、100%再生ガソリンのみで走行する共同実証実験(パイロットプロジェクト)をスペイン国内で開始したと発表しています。
このプロジェクトは欧州連合(EU)が推進する「2035年新車脱炭素化(EV一本化)」の方針に対し、既存のガソリン車やハイブリッド車(HEV)をそのまま活用して即座にCO2を削減できる「現実的かつ即効性のある選択肢」を示す非常に野心的な挑戦でもあり、ここでその内容を見てみましょう。
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この記事の要約
- 100%再生ガソリンの実走行: BMWとトヨタ(レクサス含む)の混成フリート約20台が、レプソル製100%再生可能ガソリン「Nexa 95」のみで6ヶ月間走行する実証実験を開始。
- インフラ・車両は「現行のまま」: エンジンの改造や給油設備の変更は一切不要。今ある資産をそのまま使って最大70%以上のCO2を削減。
- ボッシュのブロックチェーン技術: デジタル燃料追跡技術「デジタル・フューエル・ツイン」を投入し、製油所から消費まで再生可能燃料の使用を完全にデータ化・証明する。
- 「技術中立性」の証明: 2035年までに100%EV化を達成できないリスクを見据え、既存車・ハイブリッド車と環境燃料を組み合わせる「現実解」をEU政策決定者に提示する。

100%再生可能ガソリン実証実験「VEEF」とは
今回の実証実験の核となるのが、「VEEF(Vehicles running Exclusively on Eligible Fuels:適合燃料専用車両)」という概念で、これは特定の環境基準(RED規格など)を満たした100%代替燃料のみで走行する車両を指しており、将来的な規制の枠組みの中で「実質ゼロエミッション車」として認めさせるための布石ともいうべき存在です。
この実証実験は2026年7月より6ヶ月間にわたってスペインで実施され、以下の3つの主要目標に焦点を当てており・・・。
- 再生可能ガソリンの市場供給性: 一般の給油所(レプソルの既存ネットワーク)を利用し、安定した供給と給油プロセスを実証する。
- デジタル追跡と認証の確立: ボッシュの「デジタル・フューエル・ツイン(Digital Fuel Twin)」システムを用いて、燃料のライフサイクル全体を可視化。本当に再生可能燃料が使われたかを厳密に証明する。
- 既存フリートにおける運用検証: 特別な改造を施していない約20台のBMW、トヨタ、レクサス車両に給油し、日常的な運行データ(エンジン特性や燃費)を収集・検証する。

技術・仕様:「Nexa 95」と「デジタル・フューエル・ツイン」のスペック
プロジェクトの成功を支える、燃料、車両、そしてデジタル追跡技術の仕様は以下の通りとなっていて、簡単にいえば「再利用した石化燃料から生成したガソリン」ということになりそうですね。
100%再生可能ガソリン「Nexa 95」と実証実験のスペック
| 項目 | スペック・仕様 |
| 燃料名称 | Repsol Nexa 95(100%再生可能ガソリン) |
| 原材料 | 有機廃棄物、使用済み食用油、農業・林業残渣(EUのRED規制に準拠) |
| CO2削減効果 | 従来の化石燃料由来のガソリンと比較して70%以上のネットCO2削減(ディーゼル版のNexaは最大90%削減) |
| 車両互換性 | 特別な改造は不要。現在稼働しているすべてのガソリン車、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)に適合。 |
| 実証規模 | BMW、トヨタ、レクサスの車両による約20台の混成テストフリート |
| 実証期間 | 2026年7月から6ヶ月間 |
| 実施場所 | スペイン(欧州で唯一、公共の給油所で100%再生可能ガソリンを供給するインフラが整っているため) |
ボッシュの「デジタル・フューエル・ツイン」
今回、技術面で大きなブレイクスルーとなるのがボッシュの開発した「デジタル・フューエル・ツイン」。
これは、車両データ、ガソリンスタンドのデータ、そして給油カードのトランザクション(決済データ)を高度に紐づけ、特定の車両が「いつ、どこで、どれだけの再生可能燃料を給油し、消費したか」をリアルタイムで追跡・検証するシステムだといい、これによって燃料の不正な混入や偽装を防ぎ、規制当局が求める厳格なカーボンニュートラル基準を満たしていることを”デジタル的な履歴をもって”証明することが可能となるわけですね(再生燃料、代替燃料を使用して「規制を逃れた」としても、本当にそれらを使用しているかどうかを追求することがこれまでは困難であった)。

なぜEV一本化は「現実的ではない」のか?
現在、欧州(EU)の政策は電気自動車(EV)への移行に偏重しており、しかし、今回のプロジェクトに参画する自動車メーカー(つまりトヨタとBMW)は異なる現実を見据えていることが今回の発表によって明らかに。
2035年「EV 100%」への懐疑論
トヨタ・モーター・ヨーロッパのパスカ・ル・ルー副社長は、「移行が進むにつれ、2035年までに100%ゼロエミッション車(EV)にするという目標が完全に達成されないリスクが高まっている」と指摘しており、実際のところ欧州市場でもEVの普及ペースは鈍化傾向にあり、充電インフラの整備遅れや車両価格の高騰が課題となっています。
そこで、既存の強力な選択肢であるハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に100%再生可能ガソリンを組み合わせる方法こそが、最もコスト効率が良く、かつ即効性のある現実解(ブリッジ・テクノロジー)として台頭しているという状況が今回のプロジェクトの背景にあるのだと考えられます。
競合技術との比較
カーボンニュートラルを達成するアプローチとして、EVと再生可能燃料(VEEF)を比較すると以下のようになり・・・。
- 電気自動車(BEV):
- 長所: 走行時の排出ガスゼロ。
- 短所: 高価なバッテリー、充電インフラの整備に天文学的なコストと時間が必要、送電網(グリッド)への負荷。ガソリン車からに買い替えが必要であり、既存の数億台の内燃機関搭載車を即座に救うことはできない。
- 再生可能ガソリン(VEEF / e-Fuel等):
- 長所: 今走っているすべての車、すべてのガソリンスタンドがそのまま使える。 車両の乗り換えコストが不要。
- 短所: 現在の製造コストが化石燃料より高く、初期段階での安定供給力。

日本国内での動きと、一般オーナーが得られるメリット
今回のプロジェクトそして実験につき、「遠いヨーロッパでの話」と思ってしまいがちですが、この動きは日本の自動車オーナーにとっても極めて密接な関連があり・・・。
日本のスーパー耐久レースや独自開発との連動
日本のモータースポーツシーン(スーパー耐久など)において、トヨタやマツダ、スバルは以前から「様々なカーボンニュートラル燃料(CNF)」を実戦投入し、過酷な状況下でのエンジンへの影響や排ガス性能のデータを蓄積中。
今回のスペインでの実証実験は、これまでのレース活動で得られた知見を「一般公道、かつ複数のグローバルメーカー合同」という、より社会実装に近い形へとスケールアップさせたものです。
愛車に長く乗り続けたい人への「光」
この技術が確立され、法的に「VEEF」として認められれば、将来的にガソリン車の新車販売が規制されたとしても、ぼくらが今大切に乗っているスポーツカーや実用車、ハイブリッド車が「お払い箱」になることはなく、使い慣れたエンジン音やフィーリングを楽しみつつ、燃料を「再生ガソリン」に切り替えるだけで地球環境に配慮したインテリジェントなドライブが可能になる、ということに。

結論:内燃機関を救う「技術中立性」の証明へ
BMW、トヨタ、ボッシュ、レプソルという、各分野のトップランナーがタッグを組んだ今回の実証実験。
その真の狙いは、単なる技術検証を超えて、「欧州の環境政策に対する強力なロビー活動(データの提示)」にあり、それは共同にて以下の声明が出されていることからも理解が可能です。
「カーボンニュートラルへの道はEVだけではない。既存のインフラ、既存のハイブリッド車、そして100%再生可能燃料を組み合わせれば、今すぐにでも劇的なCO2削減を達成できる」
彼らが提出する実走行データは欧州の未来の自動車規制を「EV偏重」から「技術中立(あらゆる技術を公平に評価する姿勢)」へと引き戻す強力な武器となるはずで、お気に入りのエンジン車を愛し続ける未来は、技術者たちの執念、そしてこの一滴のグリーンなガソリンによって守られようとしている、というわけですね。
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参照:BMW











