>アウディ(Audi)

アウディCEO「SUV全盛期はもう終わるかもしれません。クーペ&オープンカーは必ず市場へと戻ってきます」。アウディはまだ隠し玉を持っているのかも

アウディA5カブリオレ(シルバー)〜フロント

Image:Audi

| ここ最近のアウディは「なにかをやってくれそうな」雰囲気満点である |

アウディが水面下で「かなりのレベルにて」スポーツカーの開発を進めているのは間違いない

自動車市場を見渡すと右も左もSUVやクロスオーバーばかり。

さらにアウディはTTを廃止し、コンセプトCの市販モデルやヌヴォラーリの投入を控えているものの、ライバルたるBMWやメルセデス・ベンツに比較すると「クーペ」「オープン」が存在しない期間が長く、かつフラッグシップスポーツがしばらく存在していないことから「M」「AMG」に比較してスポーツイメージが弱いのもまた事実。

さらにアウディは「A4」から「A5」への名称変更とラインナップ再編に伴って長年親しまれてきた主流のクーペおよびカブリオレの生産を終了しており、このまま「4座のクーペ / オープンが消え去るのでは」と考えていた人も多いのかもしれません。

しかしそんな「冬の時代」に一筋の光が差し込んだというのが今回のニュースであり、その光とはアウディの最高経営責任者(CEO)であるゲルノット・ドゥルナー(Gernot Döllner)氏が、海外メディアのインタビューにおいて「クーペとオープンカーは必ず市場に帰ってくる」と力強く予言したこと。

ここでアウディがこれらを一時的に廃止せざるを得なかった台所事情、そしてそれでもなお復活を確信する「エモーショナルな未来」について考えてみましょう。

アウディA5クーペ(グリーン)フロント

Image:Audi

この記事の要約(30秒チェック)

  • トレンドの逆転予言: アウディCEOが、現在絶滅の危機にあるクーペやカブリオレといったボディスタイルの将来的な復活を明言
  • 一時的撤退の理由: EVへの移行とハイブリッド・内燃機関の並行開発という「複数パワートレインの乱立」により、投資が分散しニッチな車種に資金を回せなかったため
  • 復活の鍵を握るモデル: すでに発表された1001馬力の限定ハイブリッドスーパーカー『ヌヴォラーリ』や、TT後継となるEVスポーツ『コンセプトC(市販名:C-Sport)』がその先陣を切る
  • 「RS」への波及期待: 新型RS 5セダンに続き、将来的には純粋な楽しさや自由の象徴としての「クーペ/オープン仕様のRS」の登場にも含みを持たせた

自動車メーカーを苦しめる「パワートレインの乱立」がニッチ車から「生息域を奪ってしまう」

ゲルノット・ドゥルナーCEOがドイツで開催されたラウンドテーブル(懇談会)で明かした本音は現在の自動車業界が直面している極めてリアルな構造改革の縮図であり、そもそもなぜアウディはあれほどまでにエレガントだったクーペやオープンカーを廃止しなければならなかったのか。

同氏はその理由を「投資の集中と選択」にあると説明します。

「世界の自動車産業は現在、過渡期における統合プロセスの中にあります。私たちは(電気だけでなく)複数のパワートレインを同時に扱わなければならず、限られた投資の可能性の中で、開発の焦点を絞り込む必要があるのです」

アウディA5カブリオレ(シルバー)〜サイド

Image:Audi

当初は業界全体が「完全EV化」へ向けて舵を切ったものの、市場の需要減退に伴いアウディを含む多くのメーカーが方針転換(ピボット)を余儀なくされているのが現実です。

結果として最先端のピュアEV(BEV)を開発する一方、既存のプラグインハイブリッド(PHEV)や最新のマイルドハイブリッド(MHEV)、さらにはユーロ7などの環境規制に対応したクリーンな内燃機関(ICE)を同時並行で刷新・維持しなければならないという、膨大な開発コストの泥沼に嵌っているというのがいまのアウディなのかもしれません。

こういった状況の中、限られた予算のなかでまずは販売ボリュームが見込めるSUVや実用的なセダン・アバント(ワゴン)の刷新を最優先せざるを得ず、結果として販売台数の少ないクーペやオープンカーといった「贅沢でニッチモデル」が一時的にラインナップから削られることになったというわけですね。

アウディA5クーペ(グリーン)リア

Image:Audi

アウディが描く未来のエモーショナルカー戦略

そして今回、ドゥルナーCEOは「現在は他の実用的なモデルが最優先である」と前置きしつつ、パワートレインの混乱が落ち着いた先にある未来について、非常にポジティブなビジョンを語ることに。

「将来のグローバル自動車市場では、再び非常にエモーショナル(感情に訴えかける)な製品が登場するようになると信じています。『C-Sport(コンセプトCの市販版)』はその一つです。また『RS』モデルも健在です。将来的には、それらのクーペバージョンやコンバーチブルバージョンも十分に考えられます」

御存知の通り、アウディはすでに次世代の機動力を活かしたエモーショナルなモデルとしてランボルギーニ・テメラリオの骨格をベースにした1,015馬力の限定V8ハイブリッドスーパーカー『ヌヴォラーリ(Nuvolari)』を発表しており、さらには往年の名車アウディTTの精神を受け継ぐ次世代スポーツEV『コンセプトC(市販予定名:C-Sport)』の開発を進めているところ。

そして驚くべきは、これらについて1年以内に市販化が可能なレベルにあるということで、つまり「数年前から」アウディは誰にも悟られずこれらのモデルの開発を進めていたということになり、となれば「まだほかにも開発中のモデルがある」と考えるのも自然な成り行きです。

アウディ コンセプトC(シルバー)のリア

Image:Audi

そして同士の発言はこれらトップエンドのスポーツカーだけでなく、ぼくらがかつて愛した「A5クーペ」や「A5カブリオレ」のような、手の届くプレミアムセグメントへの波及にも期待が持てるものであり、よって多くの人の注目と期待を集めているというわけですね。

アウディのエモーショナル・ラインナップロードマップ(予測含む)

そこで今後予想される「クーペ」あるいは「オープン」モデルは以下の通り(コンセプトCの市販版はタルガトップとなることが決まっている)。

  • ヌヴォラーリ(Nuvolari): ブランドの技術と情熱の頂点を示すハイブリッドスーパーカー(限定499台)
  • C-Sport(コンセプトC市販版): 生産終了した「TT」の穴を埋める、ミニマルデザインを採用した次世代スポーツEV
  • 未来のRSモデル拡張(予測): 新型「RS 5セダン」をベースにした、美しい2ドアクーペや、風を感じるカブリオレの復活

「スペックや速さ」だけではない、クーペ&オープンの持つ真の価値

現代の「RS」ラインナップ、特に最新の「RS 5セダン」などはドライバーを夢中にさせる素晴らしいパフォーマンスを誇っていて、しかし「クーペやオープンカーの本質は、単なる0-100km/h加速の数字やサーキットのラップタイムではない」のもまた事実。

かつての「A5クーペ」や初代「TT」がそうであったように、これらのボディスタイルは「そこに佇んでいるだけで美しいスタイリングの美学」でもあり、ルーフを開け放って風を感じながら走るという「自由の表現」そのものです。

実用性(後席の広さや荷室容量)という妥協を捨ててでも、自分のライフスタイルや美意識を貫くための乗り物――それこそが、SUVには絶対に真似のできないクーペ&オープンの絶対的な強みでもあり、それらを用意するということが「その自動車メーカーの余裕であり矜持」であるとも考えられるわけですね。

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のフロント

Image:Audi

なぜ多くのCEOが明言を避ける中で、アウディは見通しを語ったのか?

そこで他社(ライバル)の動向とドゥルナーCEOの発言の裏にある「メーカーのリアルな懐事情」という背景を深掘りしてみると・・・。

  • リップサービスで終わる「幻の復活劇」: 自動車業界では、CEOや役員が「あの名車を復活させたい」「スポーツカーを作りたい」とメディアに語ることは珍しくなく、例えばBMWにおける「M1」の復活の噂などは何年も囁かれているものの実現には至っておらず、しかしドゥルナーCEOの今回の発言が信頼に値するのは、「今は予算的に優先順位が低い」という厳しい現実を率直に認めた上で、それでも将来のポートフォリオ(製品計画)としてクーペ等の復活を視野に入れていると現実的なステップを語った点にある
  • そもそもアウディはスポーツカーに対してこれまで「シラを切っている」:そしてコンセプトC、そしてヌヴォラーリを発表するまで、アウディは「スポーツカーなど円がない存在」といった感じで完全にポーカーフェイスを貫いており、しかし実際には「水面下でこれらを開発していた」ことが明らかに。そしていまスポーツカーに対して言及したということは、アウディが水面下で進めてきた「スポーツカーラインアップ」の全容を公開する準備がととのったということなのだとも考えられる
  • 経済環境とユーザー心理のサイクル: 現在は世界的なインフレや経済の不透明感から、購入者側も「1台で何でもこなせる実用的なSUV」を選びがち。しかし自動車の歴史を振り返ると、市場が実用主義で埋め尽くされて退屈になった後には、必ずその反動として「個性的で美しい趣味のクルマ」への揺り戻しが起こっていて、アウディは複数パワートレインの開発に目処がついた数年後、市場が再び“美しさ”や“エモーショナル”を求めた瞬間に、即座にクーペやオープンカーを投入できるよう準備を行っているのだと思われる
アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のリア

Image:Audi

結論

アウディのトップが語った「クーペ&オープンカー復活の予言」は、効率主義と実用主義に押しつぶされそうになっていた自動車文化にとって、暗闇に灯る希望の光とも言えるもの。

EVシフトの混乱によって一時的に「すべての市場で売れる最大公約数のSUV」へ開発資金を集中させなければならなかったのは「企業として生き残るための合理的な決断」であり、しかしアウディは自動車の持つ「エモーショナルな力」を決して忘れてはいない、というのが今回明らかになった事実です。

『ヌヴォラーリ』や『C-Sport』といった特別なモデルから始まるアウディの新しい挑戦。パワートレインの激変期が収束に向かう頃、より洗練され、より自由で、私たちの心を震わせる美しい2ドアクーペやカブリオレが再び美しいエキゾーストノート(または近未来的なEVサウンド)を響かせてストリートに戻ってくる日を大いに期待して待ちたいと思います。

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のフロント
アウディ「ヌヴォラーリ」はすでにF1ドライバーによって極秘テスト済み。経営陣が明かす「技術的刷新」の全貌とは

Image:Audi | アウディはずいぶん前からこのヌヴォラーリのテストを行っていたようだ | すでにこのヌヴォラーリはコレクターズアイテムとしての成功を約束されたようなものである アウディは202 ...

続きを見る

合わせて読みたい、アウディ関連投稿

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のリア
アウディ「ヌヴォラーリ」は”ランボルギーニ テメラリオ”のクローンではない?さらに「R8」を名乗らなかったのは「R8を超越した存在だから」

Image:Audi | R8のようなランボルギーニのクローンではない。ライバルを震撼させる真の最高峰 | アウディはいったいいつの間にこんなクルマを用意していたのか 自動車業界が電動化への移行と内燃 ...

続きを見る

アウディ、新型スポーツカー「コンセプトC」を公開。次世代TTの予告、ポルシェとの深い関係性を持ちつつ市販化か
アウディ、新型スポーツカー「コンセプトC」を公開。次世代TTの予告、ポルシェとの深い関係性を持ちつつ市販化か

Audi | ミラノで公開された新型デザインスタディ「アウディ コンセプトC」 | そのデザインは「ローゼマイヤー」風 アウディが公式Facebookの“フライング”投稿を経て、新たなスポーツカーコン ...

続きを見る

アウディの新型スーパーカーコンセプト「ヌヴォラーリ」のリア
アウディ史上最強「1001馬力」ハイパーカー、ヌヴォラーリ発表。F1直系ハイブリッドに加え革新的クワトロを搭載

Image:Audi | 2027年からのデリバリーが決定済み、突如として発表されたR8の後継とも言うべきフラッグシップ | この1−2年のアウディは今までにない変化を見せてくれそうである アウディは ...

続きを見る

参照:CARBUZZ

->アウディ(Audi)
-, , , , ,