
| ポルシェ911 GT3 RSと自転車を「同じ仕様」にするという究極の趣味 |
やはり気になるのはその「金額」ではあるが
スイスで自転車ショップ「Leon Bikes」を経営するLeon Baldinger氏。
今回、自身の愛車であるポルシェ911 GT3 RSとほぼ同じ世界観を持つ「完全オーダーメイドのカーボンファイバー製ロードバイク」を製作したとして話題に。
クルマと自転車。一見するとまったく異なる趣味に見えるものの、Baldinger氏にとっては「軽さ」「性能」「個性」「ディテールへのこだわり」という共通点で完全につながっているといい、そこでこの「こだわりの一台」を見てみましょう。
この記事の要約
- 911 GT3 RSと自転車を同じカラーでペイント
- ボディカラーはオリーブブラック
- ヴァイザッハパッケージを思わせるカーボンファイバーを随所に採用
- ブレーキキャリパーなどにはスピードイエローをアクセントとして使用
- 911 GT3 RSのディテールを自転車にも再現
- カーボン製ロードバイクの重量は約7kg
- なんと911 GT3 RSのルーフに自転車を積んで走ることも可能

ポルシェ911とともに始まったカーライフ
Leon Baldinger氏にとってポルシェは幼いころから身近な存在であり、生まれた直後、両親が病院から自宅へ連れて帰る際に使用したクルマがなんと父親のポルシェ911だったのだそう。
つまりBaldinger氏にとって911は「憧れのスポーツカー」ではなく「人生のスタート地点から存在していたクルマ」ということになるのですが、その一方で彼は両親からもうひとつの趣味も受け継ぐことになった、とも語っています。
それが今回の主役でもある自転車で、幼少期から自転車に親しみ、やがてダウンヒル・マウンテンバイクへと本格的に取り組むようになるのですが、その才能が高く評価され、ついにはスイスのユース代表チームに入るまでになったのだそう。
しかし残念なことに人生を大きく変える出来事が起こってしまい、それが「ダウンヒルバイク中に脊椎を骨折する」という痛ましい事故であり、幸いにも怪我から奇跡的に回復したものの、プロのマウンテンバイク選手になるという夢は断たれてしまいます。
「とても難しい時期だった」
そう振り返るBaldinger氏ですが、その経験が逆に、幼いころから好きだった自動車への情熱を再び呼び戻すきっかけになったといい、大きく同氏の人生を変えてゆくこととなるわけですね。

すべてを売却して「理想の自転車店」を開業
ただし当時はポルシェを購入できる状況ではなく、ここでBaldinger氏が下した大きな決断が「所有していた自転車、クルマ、そしてほぼすべての財産を売却する」というもので、その資金を使って自分の夢だった自転車ショップを開業し、そのショップこそがこのバイクを製作した「Leon Bikes」。
このLeon Bikesはただ自転車を販売するショップではないといい、Baldinger氏が目指したのは、クルマでいうならば「高級スポーツカーのスペシャリティショップ」のような存在。
こだわりを持つサイクリストのためのショップではありますが、開業したのは新型コロナウイルスのパンデミック真っただ中でもあり、自転車部品の調達すら難しい状況であったものの、それでも顧客が次第にLeon Bikesの存在を知るようになるとともにショップは順調に成長して現在では約12人のスタッフを抱えるまでになったと述べています。
911 GT3が「クルマと自転車をつなぐ存在」に
ビジネスが軌道に乗るとBaldinger氏は再びスポーツカーを所有するようになり、まずそこで購入したポルシェが911 GT3。
ここで重要なのが911 GT3を移動手段としてではなく、自転車と同じ思想を持つ機械として捉えていたことで、たとえばLeon Bikesでは、顧客が自転車を細部までカスタマイズでき、それはコンポーネントだけではなくフレームカラーまで自由に指定可能です。
アメリカやイタリアのペインターとも協力し、フレームメーカーの仕様を守りながら、かなり特殊なカラーリングにも対応しているといい、そのため、「自分のクルマと同じ色の自転車を作りたい」という注文も少なくはなく、実際、ポルシェの純正カラーを自転車に再現する顧客も存在するのだそう。

911 GT3 RSと同じ「Olive Black」を採用
そしていまやBaldinger氏自身の現在の愛車は911 GT3から911 GT3 RSへと進化していて、仕様としては「ボディカラーはオリーブブラック、さらにヴァイザッハパッケージによるカーボンファイバー製パーツ、そしてイエローのアクセント」。
Baldinger氏にとってはこれ以上ないほど自転車のデザインに落とし込みやすい仕様でもあって、そして同氏が「同じ仕様の」自転車を製作したのは当然の帰結でもあったというわけですね。
完成したカーボンロードバイクを見ると、そのこだわりに驚かされ・・・。
自転車に再現された911 GT3 RSのディテール
- カーボン製フレーム
- カーボン製フォーク
- 911 GT3 RSと同じオリーブブラック
- ダウンチューブに911 GT3 RSを連想させるモデル表記
- リアディレーラーハンガーなどの細部までカラーリング
- ブレーキレバーも統一感のある仕上げ
- ハンドルには911 GT3 RSのシート素材を思わせる素材を採用
- スピードイエローをアクセントカラーとして使用
- イエローのブレーキキャリパー
- カーボンセラミック系のブレーキディスク
- ステアリングホイールの12時位置のイエローマーカーまで自転車側に再現
特に面白いのが「911 GT3 RSのステアリングにある12時位置のイエローマーカー」で、これを自転車のカスタムペイントされたサイクルコンピューターにまで再現しているといい、ここまで来るともはや「クルマをイメージした自転車」という表現では足りず、911 GT3 RSの世界観を二輪車へ移植した作品と呼ぶほうが適切かもしれません。

911 GT3 RSに自転車を積むという大胆な使い方
そして、この2台の組み合わせをさらに面白くしているのが実際の使い方で、Baldinger氏は911 GT3 RSに吸盤式のマウントと自転車ラックを取り付け、自転車をルーフに積載しており、「911 GT3 RSにロードバイク」という概念的にも視覚的にもインパクトが強い組み合わせを実現しています。※ただし、911 GT3 RSには軽量化のための特殊なガラスなどが採用されているため、取り扱いには注意が必要とのこと
ポルシェ911 GT3 RSと自転車には意外な共通点がある
今回のストーリーを単なる「ポルシェオーナーの変わった趣味」として終わらせるのは、少しもったいないようにも思われ、というのも911 GT3 RSと高性能ロードバイクとの間には実は多くの共通点が存在するから。
| 項目 | 911 GT3 RS | 高性能ロードバイク |
|---|---|---|
| 軽量化 | 徹底した軽量設計 | カーボンフレームなど |
| カーボン | 多数のカーボンパーツ | フレーム・フォークなど |
| ブレーキ | 高性能ブレーキ | 軽量・高性能ブレーキ |
| 空力性能 | サーキットで重要 | 高速走行で重要 |
| カスタマイズ | ボディカラー、内外装など | フレーム、コンポーネント、塗装など |
| 個性 | オーナーごとの仕様 | オーナーごとの仕様 |
| 軽量化の目的 | ラップタイム短縮 | 加速・登坂性能向上 |
こうして比較すると、「クルマ好きが自転車にもハマる」理由が見えてくるかのようで、どちらも突き詰めていけば、単なる移動手段ではなく、機械そのものを楽しむ趣味になるというわけですね。

まとめ――「同じ色」にすること以上の意味
今回の911 GT3 RSとロードバイクの組み合わせが面白いのは、単に同じ色に塗ったからではなく、そこには、「好きなものを、とことん自分仕様にする」という思想が存在しているから。
クルマも自転車も、完成品を購入して終わりではない。
カラーを選び、素材を選び、細部を選び、自分だけの1台に仕上げる。
そして、それを実際に使って楽しむ。
これは現在の高性能スポーツカーや高級自転車に共通する、新しい「所有する楽しみ方」と言えるのかもしれません。
911 GT3 RSと約7kgのカーボンロードバイク。
4輪と2輪というまったく違う乗り物でありながら、「軽さ」「速さ」「美しさ」「個性」という価値観は驚くほど近い。
Baldinger氏の2台は、そのことを非常に分かりやすく見せてくれる存在です。
そして何より羨ましいのは、「今日はクルマにするか、自転車にするか?」という悩みを抱えながらも、結局は「両方楽しめる」ことに尽きるのではないか、とも考えています。
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参照:Porsche











