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【試乗:インプレッサ・スポーツ】COTYも納得、コスパ最強のベストバイ

2016/12/25

話題のインプレッサスポーツ2.0 i-Sに試乗。
スバルが久しぶりに開発した新型プラットフォームを採用した入魂のニューモデルですが、(ハイブリッドなど)やたらと先進装備を盛り込まず、基本性能を充実して価格を抑えた着実なクルマ作りが感じられる車。
燃費向上対策もアイドリングストップ、CVT、電動パワーステアリング、可変バルブタイミングといった感じで非常に地味(というか普通)でもあります。

スバルは昔からやたらと新しいことに手を出して研究開発費を使うことをしないメーカーで、自社の販売台数と顧客をよく理解した企業(つまりは背伸びをしない)。
そのため、いい意味で「堅実」な企業だと考えており、トヨタやホンダとは確実に異なるスタンスのメーカーでもありますね(マツダとも似ている)。

先進機能を開発するとその分お金もかかるわけで、しかしそれを消費者が必要とするかどうかはわからず、でも車の価格はその分高くなってしまうという現象も起こりうるわけですが、スバルはそう言った「メーカー側の独りよがり的な」技術開発をしない、ということですね(よって先進性の高い車が万人にとっていい車とは限らない)。

今回のインプレッサにしてもそれは同じで、新開発のグローバルプラットフォームを核に直4ボクサーエンジン、シンメトリカルAWD、無段変速トランスミッション、アイサイト(Ver.3)とスバル得意、かつ堅実な内容。

まずはスペックから見てみましょう。

IMPREZA SPORT 2.0i-S EyeSight

価格 2,592,000円
全長/全幅/全高 4460/1775/1480mm
車両重量 1350kg
燃料消費率リッター16.0キロ
エンジン 水平対向2リッター4気筒
出力 154馬力
トランスミッション CVT

実車の外観ですが、これはなかなかの格好良さ。
最近のスバルっぽいイカツさ、スタイリッシュさの同居するデザインであり、スバルは独自の境地を開いたと言って良さそうです。
画像だけを見るとちょっと繊細な印象を受ける新型インプレッサですが、実物はなかなかどうして堂々たる体躯。

ドアを開けて目に入るのは室内の質感の高さ。
インパネ、ステアリングホイール、センターコンソール、アルミペダルなど寝に入る部分の出来が非常によく、試乗への期待が高まりますね。

シートに腰を下ろしてシートベルトを締めますが、シートベルトアンカーの形状が秀逸で、適度な重さと握りやすさがあり、これは他の車には見られないポイント(ぼくはこういった部分が非常に気になる)。
高額な車でも薄っぺらいアンカーを採用する場合が多い中、ここもスバルの真面目さ(操作のしやすさを重視)が光る部分。

なおドア開口部についてサイドシルがかなり低く、乗降性の良さを考慮しているのも「真面目なクルマ作り」がうかがい知れるところです。

ドアを閉めると機密性が高いのか、かなり車内は静か(営業さんに聞いたところではウインドウが他のメーカーよりも厚めに作られており、寒冷地でも寒さを通しにくく静粛性にも一役買っている、とのこと。なお2リッターモデルはフロントグラスに遮音ガラスを採用)。
メーターパネル内のディスプレイは見やすく、ダッシュボード上にも大きなフルカラーディスプレイが装備され、全体的にユーザーフレンドリーになっています(マツダはディスプレイが小さく、見難いと感じることがある)。

視界も相当に広く、ピラーをドライバー視点で最適化したとされるとおり、フロント、サイド、リアすべてが見やすく、特にAピラーの細さは特筆もの。
ドアミラーの位置、三角窓も視界の良さを助けており、右左折時の死角はかなり少なそうです(一部の車はドアミラーがちょうど歩行者の姿を隠してしまう場合も)。

この辺り200万円台前半〜という価格を考えると驚くべきものがあり、この時点(外観、内装、インターフェース)ですでにかなりコストパフォーマンスが高いんじゃないかと実感。

ブレーキペダルを踏みエンジンをスタートさせますが、振動や騒音も感じられずに非常に静か。
そのままシフトレバーをDレンジに入れ、電気式パーキングブレーキを解除して車をスタートさせます。
クリープはやや強めで、力強さを感じさせるものですね。

ディーラーから出て歩道の段差を超えて車道に出ますが、「S」グレードはやや硬めのサスペンション、18インチサイズのタイヤ/ホイールを装着するものの当たりは非常に柔らかく、快適な印象。
走り出して幾つか段差を超えたりカーブを曲がってもその印象は変わらず、しかし車体は安定しており、不安さを全く感じさせない走りですね。

感心したのはブレーキで、これまでのカックンブレーキから踏力に応じてしっかり効くタイプに。
これまでのスバルというと、基本性能は高いのにステアリングホイール、ブレーキ、アクセルへの入力と車の反応とにちょっと差異があり、そこが「惜しい」と感じていたのですが、この新型インプレッサではそれが見事に解消。
この辺り相当に研究を重ねたんだろうなあ、ということがわかりますね。
パーツの多くを新設計したという2リッター4気筒エンジンも優れたフィーリングを持ち、トランスミッションとの相性も抜群。
2リッターとは思えない、息の長い力強い加速を見せてくれます(多くの日本車は出だしは速くとも、加速が続かない)。
新型インプレッサは相当にポテンシャルが高い車であり、じき登場するであろうWRX STIには相当に期待がかかりますね。

逆に気になったのはロック・トゥ・ロックがちょっと大きい(カタログ上は1:13)と感じたこと、加速時に直噴エンジンのインジェクター?の音がやや大きいと感じたこと。
前者は慣れにて解決されますし、後者は逆に通常時が静かすぎるためと思われ、よって両方共インプレッサの魅力をスポイルするものではないと考えています。

総合的に考えると、グローバルプラットフォームによる上質な乗り心地、AWDによる安定した走行性能、リッター16キロという(ガソリン車としては)優れた燃費、充実した安全性(アイサイト)、クラスを超えたインターフェース、上質な内装は非常に高く評価できるポイント。

さらには視界や乗降性など日常性を考慮した作りもスバルの真面目さを感じさせ、デザインのために何か(車としての本質を)を犠牲にしてはならないという考え方も伝わってきます。

そして一眼重要なのは「この価格でこれを実現した」ということで、スバルは車種が少なく、開発した技術をスバルのラインアップ間で使い回すこと、加えてハイブリッドや多段化デュアルクラッチなどに手を出さず、従来の技術を煮詰めることで開発コストを抑えたであろう戦略が最も評価できるとぼくは考えており、日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞も納得の一台ですね。

正直言うと、アウディやメルセデス・ベンツには及ばずとも、ブランドバリューを除けばBMWの1/2シリーズよりはいいんじゃないか、という印象です。

その他国産車(トヨタ、ホンダ、レクサス、日産、スバル、マツダなど)、輸入車(フェラーリ、ランボルギーニ、ロールスロイス、BMW、メルセデス・ベンツ、マクラーレンなど)の試乗記はこちらにまとめています。

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