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メルセデス・ベンツのデザイン責任者「AIによるカーデザインはほぼ“駄作”ばかり」。さらなるAIの「問題点」を指摘する

メルセデス・ベンツ

| AIレンダリング氾濫で「ショーカーの特別感」が失われつつある |

AIを使うか使わないかではなく、「どこにどう活用するか」が課題である

近年、SNSを中心にAIによるカーデザインのレンダリング画像があふれ返っていて、ぼくらに周辺がそういった画像で埋め尽くされているのはご存知の通りですが、同じ問題に直面しているのがメルセデス・ベンツのチーフデザインオフィサー、ゴードン・ワグナー(Gorden Wagener)氏。

ワグナー氏は1997年からメルセデス・ベンツにてデザインを手がけており、IAAモビリティショー(ミュンヘン)にて複数のジャーナリストと懇談した際、AIによるデザインについても言及し、「AIはいい結果を生み出さない」とワグナー氏は率直に語っています。

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Image:Mercedes-Benz

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツのデザイナー「10年もすればデザイナーは不要になり、AIが我々に取って代わるでしょう。もちろん私よりもずっと安い給料で働く”後任”です」

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メルセデスもAIを導入したが「ブランドに特化した成果なし」

同氏によれば、メルセデスでも数年前からAIをデザイン工程に導入しているものの、目立った成果は得られていないとのこと。

「背景画像を生成するなど、デザイナーが自ら作成する手間を省く面では役立つが、それ以上ではない。AIが生み出すものの99%は本当に醜く、奇妙で、ブランド固有性が欠けている。面白いのはせいぜい1%だ」

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Image:Mercedes-Benz

本当の問題は「ショーカーのインパクト低下」

ワグナー氏がより深刻だと考えているのは、AIレンダリングが氾濫しているという現実で、人々が“非現実的なクルマの姿”に慣れすぎてしまっているため、これまで「ショーカー(コンセプトカー)でしか見られなかったような斬新なデザインが日常的に見られるようになった」ことを憂いているようですね(その結果、コンセプトカーに求められるハードルが上がったのだとも考えられる)。

「本来、ショーカーは人々に驚きや感動を与えるための存在。しかし、SNSで毎日のように“誇張されたAIカー”を目にしていると、いざ本物のコンセプトカーを発表しても特別感が薄れてしまう。インスタグラムを見ても『またこれか』と思うだけで、飽きてしまう。このAIの氾濫は本当に厄介だ」

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Image:Mercedes-Benz

メルセデス・ベンツが選んだ道:伝統と現実性

最近のメルセデス・ベンツがデザインにおいて(大きなグリルを採用しスリーポインテッドスターを押し出すなど)自社の伝統を強調する傾向を強めているのも、こうした状況が背景にあると考えられます。

実際のところ、新型電動SUV「GLC EQ」では、大胆かつ特徴的ながらも過剰ではない“再解釈されたグリルデザイン”を採用しており、同社が重視する中国市場におけるトレンドとも決別した「独自路線」を歩むこととしたもよう。

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Image:Mercedes-Benz

なお、現在は自動車メーカー各社がAIをデザインプロセスに取り入れていますが、AIは本質的にオリジナルを生み出せないため(ネット上にある情報を収集し、それらを分析し、指示に従った形で出色するのみなので)、本当に価値あるカーデザインを作り出すことは難しいのかもしれません。

よって、リアリティを追求する分野であればまだしも、クリエイティビティが要求されるジャンルでは「今のところ」AIが主流とはなり得ないのだと思われます(ただ、そう言っていられるのも今のうちかもしれない)。

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参照:Jalopnik

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