| エンジニアたちの「コルベットを速くしたい」という情熱には頭が下がる |
発表が近づく新型シボレー・コルベット(C8)。
すでにプロトタイプの画像が公開されたり、一部イベントに登場するなど盛り上がってきていますが、今回シボレー公式として「コルベットの過去」を振り返る動画が公開されることに。
なお、新型コルベット最大のトピックは「ミドシップ化されること」ですが、動画では過去のミドシップコルベットについて触れています。
ミドシップコルベットの計画は1960年代から存在した
「コルベット」そのものの歴史は1954年のC1世代まで遡ることができ、当時からコルベットは「フロントエンジン」。
そして最新のC8世代ではついにミドシップ化されるということになりますが、コルベットのミドシップ化についての歴史は古く、実は1960年代にこの計画がスタート。
当時この計画を主導したのは初代コルベットの主任エンジニアであった「Zora Arkus-Duntov(ゾーラ・アーカス・ダントフ)」氏で、それゆえC8世代のコルベットには「ZORA」の名が与えられるのでは、とずっと言われてきたわけですね。
「最初のミドシップコルベット」は1960年のCERV I?
動画では1960年に製造された、コルベット(C2)のリアサスペンションを持つミドシップレイアウトのCERV Iも登場。※CERV= Chevrolet Experimental Research Vehicle
これは見ての通りレーシングカーで、エンジンはもちろんV8、出力はスーパーチャージャーによる加給にて500馬力オーバーであったとされています。
おそらくその重量は非常に軽く、そしてドライバーエイドの類はまったくないと思われるために運転は困難を極めたと思われるものの、動画ではゾーラ・アンカス・ダントフ氏が豪快に車両をコントロールする様子も見られます。
同氏はコルベットのパフォーマンスアップに心血を注ぎ、1964年の時点でミドシップコルベットの試作車「XP 819」を作成(XPはエクスペリメンタルの略で、テスト用の車両によく用いられるコードネーム)。
さらに同1964年にはCERV IIを製作。
これはCERV Iに比べるといくぶん「自動車」に近いルックスを持っており、エンジンは6.2リッターV8(545馬力)。
0-60マイルはなんと2.8秒であったと言われ、現代だとランボルギーニ・アヴェンタドールSVJや、フェラーリF8トリブートなみのパフォーマンスということになりますね。
そして1970年にはXP 882が登場。
これはミドシップに加え、なんと「4WD」を持つコンセプトカー。
ニューヨーク・モーターショーにて発表され、ゾーラ・アンカス・ダントフ氏はこれを次期コルベットとして発売すべく上層部に進言したそうですが、コストの問題(高価過ぎる)ためにあえなく却下。
そして1990年にはCERV IIIも発表。
次期コルベットを想定して製作された車両で、エンジンは4.3リッターV8ツインターボ。
XP882同様の4WDに加えて4輪操舵を持ち、現代の最新スポーツカー同様の機構を持つ、ということになります。
コルベットのエンジニアは「コルベットのパフォーマンスアップ」に注力してきた
こうやって見ると、コルベットは誕生直後から「ミドシップ化」が検討され、1964年、1970年、1990年にも具体的な話が持ち上がっていたことがわかります。
この他にも1968年のXP 880アストロII、1972年のXP 895(ロータリエンジンを積んでいた)、1973年のXP 987GTといったミドシップスポーツの試作車が作られています。
いずれもエンジニアたちがイタリア製スーパースポーツに対抗すべく、その情熱を注いだプロトタイプではありますが、上層部からは「却下」され続けてきた、という歴史も。
しかし今回、ようやくコルベットはミドシップ化されることになり、こういった「提案と却下の歴史」「エンジニアたちの情熱」をシボレーが掘り起こしているところを見るに、シボレー上層部も「パフォーマンスアップのためにミドシップ化したかったが、経営的判断ではそれが許されなかった」という苦渋の決断を行ってきたものと見られます。
そして新型コルベットのプロトタイプにも ゾーラ・アンカス・ダントフ氏に敬意を表するメッセージをこっそり入れるなど、「ようやくやりたかったことが実現できた」という”60年越しの夢の実現”を全社あげて祝うという気持ちが伝わってきて、60年にわたるエンジニアたちの魂が込められたクルマ、それがC8世代のコルベとであると言えそうです。
それでは動画を見てみよう
こちらがコルベットのミドシップ化に対する悲願を綴った動画、「Breaking down The Next Generation Corvette Teaser | Chevrolet」。
VIA:Chevrolet