| おそらく走行中に充電はできず、充電するには停車するしかないものと思われる |
欧州の人々にとって、これは「他人事」ではないのかも
さて、ロシアがウクライナに侵攻して以来、様々な混乱が生じており、希少希土類・ガスといった資源の問題から、電力の問題など多岐にわたるケースが報告されています。
ロシアから輸出できなかったり、輸送ラインが絶たれたり理由は様々ではありますが、当のロシアやウクライナのみではなく、周辺国や世界中にも問題が波及しており、スイスやドイツは深刻な電力不足に見舞われていると報じられ、暖房にかかる温度設定、電気自動車の充電の制限など、直接生活に関わる事例も報告されているようですね。
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電力不足もここまで来たか。スイスで「EVの充電禁止」導入目前、欧州では「暖房は19度まで」「動画の閲覧は標準画質で」など厳しい制限が課されている。寒い冬になりそうだ
| こういった制限に対し、住人はそれでもやむなしと感じているのか、EV推進政策に不満を感じているのかはちょっと気になる | いずれにせよ、この状況が続くならば抜本的になんらかの対策が必要である さて、 ...
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ウクライナではEVの「ハイブリッド化」が進むかも
そこで今回ネット上で話題になっているのが一枚の画像で、これは「ウクライナにて、発電機を積んで走るテスラ」。
テスラはもちろんピュアエレクトリックカーなのですが、現在ウクライナでは送電網が非常に不安定になっていて、EVの充電が満足にできない状態となっており、そのために「自家発電できるよう」発電機を積んでいるものと思われます。
今回ウクライナ在住のツイッターユーザー、イゴール・スシュコ氏が投稿したこの画像のほか、米画像掲示板レディット上でも同様の(しかし別のテスラの)画像を見ることができるので、この「テスラに発電機を積む」というのはもはや珍しいことではなくなりつつあり、今後さらに電力が不足するようになれば「日常的な光景」となるのかもしれません。
この画像そして投稿からは「充電しながら走っている」かどうかの判断はできないものの、テスラは「走りながらの充電」にそもそも対応していないものと思われ、それに対応させようとなるとテスラのシステムをハックする必要がありそうです。
#Ukraine: Tesla that runs on electricity from a gasoline generator in #Kyiv. Here seen carrying its power supply. pic.twitter.com/MADESSQ6tz
— Igor Sushko (@igorsushko) December 28, 2022
ただ、この発電機(Konner & Sohnen社の、BASIC KS 2800 Cというモデルらしい)のガソリンタンクは15リットル、220V出力にて2.5kWを賄えるといい、仮に停車し、そこでこの発電機を回せば、時間はかかるものの”実用的な”航続可能距離ぶんの充電を行うことができるようで、もしかするとこのテスラオーナーは「出先でチョコチョコと充電できるよう」この発電機を積んでいるのかも。
もしそうだとすれば、現在ウクライナでは「ここまでしなくてはならないほど」電力事情が逼迫しているということになり、EVユーザーにとってはまさに降って湧いた災難ということになりそうですね。
「発電機でEVを充電」という発想は新しいものではないが
こういった「EVを発電機で充電する」というアイデアは珍しいものではなく、日産の「e-Power」、BMW i3、シボレー・ボルト、マツダMX-30などに(一部オプションで)レンジエクステンダーという発電機が積まれています。
これらについて、積まれるガソリンエンジンは純粋に発電のみに使用するもので、よってエンジンはドライブトレーンに接続されておらず「ただ回転して発電機として機能する」わけですが、わざわざクリーンなEVに、OC2を発生するガソリンエンジンを積む理由としては、「バッテリー容量を小さく収めて車両を軽量に、そして安価にできる」というメリットを重要視しているため。
ただ、近年ではバッテリー性能が向上しているのでレンジエクステンダーを積む必要がなくなったり、レンジエクステンダーを積むという行為がカーボンニュートラルに貢献しないという観点から、その多くが発電機の搭載を見送るようになっているようですね(ただしe-Powerは発電機ありきの機構なので、これを取り外すことはできない)。
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参照:Igor Sushko