| 自動車業界の外にまで対象を広げると、職を失う人々はもっと多いはずだ |
さて、共同通信によると、ガソリン車がEVへと置き換えられることになれば、日本国内の部品メーカーの従業員300万人のうち「30万人が減る」という試算がある模様。
これについては以前から懸念として方々で報じられていたことではありますが、その理由としては「EVはパーツが少ないから」。
ガソリンエンジンだとエンジン本体の他、吸気系や排気系、冷却系、トランスミッションと言った構造が必須となるものの、EVであればこれらが「モーターとインバーター」へとシンプルに置き換わることに。
もちろんEVであっても冷却系やコントロールユニットは必要ではあるものの、これらはガソリンエンジンでもあっても必要なコンポーネントであるため、とにかくEVは構造が簡単でパーツ点数が少ないということになりますね。
なお、ぼくは4年近くBMW i3(EV)に乗っていましたが、ちょっとしたことから駆動系を見る機会があり、それを見たときの印象は「ラジコンカーと同じやん・・・」というもの。
そのためかBMW i3はほかのBMW(ガソリン車)に比較すると点検等のコストが極端に安く、それは点検項目がそもそも少なかったり、エンジンオイルなど油脂類の交換がそもそも不要であるため。
EVへのシフトによる影響はけっこう大きい
なお、一般にEVのパーツ点数は、ガソリン車に比較して30−40%少ないという話もあり、よってEVが普及すれば「自動車の価格が極端に安くなる」という意見もあるくらい。
ただし現在はEVの原価のうち60%ほどを占めると言われるバッテリー価格が下がらず、よってしばらくは「EVのほうがガソリン車よりも高価」な時代はまだまだ続きそうです。
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それはともかくとして、EVはパーツ点数が少なく、そのぶん生産業者の仕事が減るというのが今回の報道の趣旨ではありますが、もしかするとEV化はもっと影響が大きいのかもしれません。
自動車業界に関してであれば、ガソリンエンジン関連技術の開発がストップされるので、それに関わってきたエンジニアの仕事がなくなってしまうことに。
その方面で長い経験を持っている人達は今さら「エレクトリック関連へ」とシフトすることも難しいと思われます。
そしてエンジン関連パーツを製造してきた業者の仕事がなくなるのはもちろん、それらを輸送してきた業者の仕事もEVシフトに伴って減ることになり、もちろん工場において組み立てる人の数も少なくて済むことに。
さらにはガソリンスタンドの数も減ることになり、石油関連会社の業績も当然ながら悪化してリストラを余儀なくされ、これを輸送したり、ガソリンスタンド関連製品を製造していた会社の仕事もその分減ってしまいます。
EV化によって国の税収も減少
加えて、国がこれまでガソリンに貸してきた税金も減ることになり、国の税収も減少するため、この減少分を回収するためになんらかの増税がなされる可能性も(少なくとも購入の際の補助金は打ち切られると思われ、EVにかかわる自動車税も引き上げられる可能性が高い)。
もちろんEVシフトによって新たに生じる仕事もたくさんあって、EV用充電スタンドの製造や設置、もちろんバッテリーやモーターの製造も。
それらをプラスマイナスすれば、どのくらいの影響が国の収入や雇用に影響を与えるのかはわかりませんが、これらのインパクトは想像するよりも遥かに大きく、これが豊田章男社長が示した「EVシフトへの懸念」なのかもしれませんね。
なお、ぼくはこういった変化について反対しているわけではなく、「避けることが出来ない」とも考えており、よってこの流れを見据えて変化に対応してゆくしか無いだろう、とも考えています。
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参照:KYODO