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国際調査機関によれば、2023年は昨年比で+35%のEVが販売されるらしい。現在輸出されるEVの33%は中国から、そして2030年には世界で販売されるEVの40%が中国にて登録されるもよう

2023/04/30

GAC

| そうなると中国市場でのEVの「遅れ」は自動車メーカーにとって致命傷となりかねない |

ただし外国の自動車メーカーが、中国の自動車メーカーよりも(中国内で)競争力のあるEVを作ることは難しいだろう

さて、国際エネルギー機関(IEA)が提出したレポートによると「2023年のEV販売は前年比で35%増になる」「2025年あたりには小型・中型車におけるEVとガソリン車の価格が同じくらいになる」。

このIEAは、すべての人に安全で持続可能なエネルギーを提供することを目的に1974年に設立されており、各国政府と協力しつつ様々な活動を行っている公的機関。

よって電気、もしくはEVに特化した調査機関というわけではないものの、このレポートではいくつかの興味深い事実と予測に踏み込んでおり、ここでそれらについて軽く触れてみたいと思います。

2023年の全世界におけるEV販売は1400万台

まずは2023年のEV販売につき、IEAが毎年発行している「Global Electric Vehicle Outlook」の中において”前年比35%増しの1400万台”に達すると見積もっていますが、この根拠については2023年に導入されたアメリカのインフレ抑制法(の一部であるEV購入に関する補助金)、欧州(EU)の導入したFit for 55など政府の政策が大きく関係していると分析しており、これによってEVの普及が進むであろう、と推測しています。

ここで重要なのは「人々の環境意識が高まったから」EVの販売、そしてガソリン車からの転換が進むのではなく、あくまでも「(金銭的に)買いやすくなったから」としていること。

ただしまだまだEVは「誰にでも買える」選択肢ではなく、しかしIEAのエネルギー技術政策責任者であるティマール・グエル氏は、「我々の現在の予想では、2020年代半ばには北米と欧州市場において、小型・中型の電気自動車の価格が、ガソリン車と同等になると見ています」。

なお、現在の自動車市場において、売れているのは圧倒的に小型・中型車ですが(それは路上に出ればよく分かると思う)、現在小型・中型EVの価格はガソリン車に比較して非常に高く、たとえば現在販売されるEVの中では”かなり安い”とされるBYDのATTO3でも「440万円」。

atto3

正直言うと「誰がこの価格で買うの」というレベルではありますが、小型・中型EVが高価になってしまうのは「車両価格に占めるバッテリー価格の比率が高いから」。

一般的に小型・中型(というか、安価なクルマであればあるほど)に占めるパワートレインの価格は割高になり、大型車・高級車になればなるほど割安になってゆくのですが、それは「大型車や高級車は、様々な高級装備がついており、それらが車両コストに占める比率が高くなるため」相対的にパワートレインの占める価格割合が低くなってゆくわけですね。

テスラ

よって、大型車や高級車では、EVであろうとガソリン車であろうとそこまで大きな価格差はなく、しかし小型・中型車であれば大きく差がついてしまう、ということに。

ただ、IEAの予想では、小型車・中型車におけるEV/ガソリン車の価格が2025年くらいには「ほぼなくなる」とのことなので、そうなれば加速度的にEVへのシフトが進むことになりそうです(ルノーも同様の見解を示しているが、ルノーの場合には小型ガソリン車のコストが上がってゆくという予想を行っている)。

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EVへの転換は乗用車のみではない

そして今回IEAが主張しているのは「EVへの転換は乗用車のみではない」ということ。

EVは営業者、小型商用車、大型車、バスなどにも徐々に浸透しつつあると述べ、インドでは「2022年に登録された(主にタクシーや商用車に使用される)三輪自動車の半数以上が完全電気自動車であった」という事実も引き合いに出しています。

こういった「あらゆる方面からの」EVへの転換は石油業界に大きな影響を与えることになり、IEAの試算では「2030年には、(現在に比べ)1日あたり約500万バレルの石油を節約できる」。

さらにIEAの報告書では、中国が世界のEV市場を明らかにリードしており、電気自動車の中国国内販売比率が32%であることを強調し、業界の「フロントランナー」としての地位を固めていることにも触れています。

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加えて「2021年には25%であったのに対し、2022年には輸出される電気自動車の35%が中国からもたらされています。かつ欧州は、電気自動車とそのバッテリーの両方において、中国にとって最大の貿易相手国です。2022年、中国で製造され欧州市場で販売される電気自動車のシェアは、2021年の約11%から16%に増加しました」とも述べていますが、恐ろしいことに、ここからさらに中国は電気自動車の最大市場としての地位を維持し、2030年までに世界のEV総販売台数の40%を占めるとも。

一方で米国は10年後までに市場シェアが2倍の20%(各種政策によって増加するという予測)、欧州は現在の25%のシェアを維持(すでに多数の政策が実施済みであり、ここから大きく伸びる余地がない)すると予想しています。

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参照:IEA

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