中国のEVは言うほど欧州で売れてない？欧州の人々は中国製品に否定的、もし中国の自動車メーカーが欧州で販売を伸ばすならば「MG」のように欧州メーカーの買収が必要

｜　欧州の自動車市場が中国車で埋め尽くされるかのような報道もあるが、違う見方もあるようだ　｜

おそらくは今後、中国の自動車メーカーが欧州自動車メーカーを買収するのは「あり得る」シナリオだと思う

さて、欧州にて中国車が溢れかえっていると言われて久しい状況となっていますが、最新の調査結果によると、中国の自動車ブランドは欧州よりも発展途上国における方が遥かに高い、とのこと。

具体的な数字を見てみると、下のグラフの通り、欧州（一番左）よりもラテンアメリカや中東、アフリカ、東南アジア等のほうがずっと中国車のシェアが高く、かつそれらの地域の方が2021年（赤）よりも2022年（緑）における伸びが大きくなっています。

なぜ欧州よりも発展途上国のほうが中国車のシェアが大きいのか？

そこで気になるのが「なぜ発展途上国のほうが中国車のシェアが大きいのか」。

これにはいくつかの理由があり、まず発展途上国では「中国車に対する偏見がほとんどないこと」。

発展途上国では自動車に対して高い品質を求める人々が多くはなく、「程々の価格で、程々の品質であれば」とくに不満なくクルマを購入する傾向が強いと言われています。

さらには所得水準がそれほど高くはないので、「できるだけ安いクルマを求める」傾向が強く、よって欧州車や日本車よりもぐっと安い中国車を購入する人々が多いとも言われていますね。

なお、下のグラフは「ライバルブランドと中国車との価格差」ですが、もともとの価格差に加えて関税等の高低もあると見え（中国車に対する関税が低い）、たとえばベトナムのほうが「中国車はライバルよりも80％ほど安く」、南アフリカでは51％、イギリスでは37％ほど中国車のほうが安くなっているもよう。

正直なところ、ここまで価格差があるのであれば（ベトナムでは欧州車や日本車が400万円だとすると、中国車は80万円である）普通の人が中国車を選ぼうというのは当然のことかもしれません。

欧州の人々は中国車に対して偏見も

ただし欧州では日米欧の自動車メーカーと中国車との価格差が37％しかなく（それでもかなり差が大きい）、そして欧州の人々は中国製品に対して「安かろう悪かろう」という印象を持っているといい、つまりは中国車に対して否定的な見方をする人が多いのだそう。

よってこのくらいの価格差では安易に中国車を選ばない消費者も多いとされ、中国車がここから大きく欧州にてシェアを伸ばそうとした場合には「壁」があるといい、さらには関税が課されて欧州車と中国車との価格差が小さくなればなおのこと中国車にとって厳しい状況になることが予想されます。

そして今回、これら統計を発表したJATOのシニア・アナリスト、フェリペ・ムノス氏によれば、「中国の自動車メーカーが欧州でシェアを伸ばそうとするならば、欧米の自動車メーカーを買収するしかない」。

これは一見すると荒唐無稽な提案のようにも見えますが、現実的に成功している例があり、それは「上海汽車傘下のMG」。

現在のMGは中国の技術を使って中国で設計・製造された車でありながら、「MG」というほとんどのヨーロッパ人が耳にしたことのある英国ブランドのバッジを装着していることで「中国車」イメージが希薄になっているといい、ここ数年は車種の拡大に伴い急激にシェアを伸ばしていおり、2015年には75,000台しか販売がなかったものの、2022年には450,000台を販売するに至っているとのこと。

さらにロータスやボルボ、スマートも現在は中国の自動車メーカー（吉利汽車）傘下にあり、今後中国の自動車メーカーが「欧州はじめ、世界での販売を有利に進めるため」欧州の自動車メーカーを次々買収するという日がやってくるのかもしれません。

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参照：Jato