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韓国サムスンがイベントにてソリッドステートバッテリー(全固体電池)を発表、2027年からレクサスに組み込むことで合意。しかしそこにある”落とし穴”とは

2024/08/02

韓国サムスンがイベントにてソリッドステートバッテリー(全固体電池)を発表、2027年からレクサスに組み込むことで合意。しかしそこにある”落とし穴”とは

| 現在のバッテリー充電設備はソリッドステートバッテリーに対応するように作られていない |

さらに全固体電池のコストは現在の標準的なバッテリーの3~4倍である

さて、現在EVの普及を妨げる問題は大きく3つあると言われていて、それは「車両価格の高さ」「航続距離の短さ」「充電インフラの貧弱さ」。

そしてこの問題を解決するのがソリッドステートバッテリー(全固体電池)だと目されれていますが、現在日産やBMWはじめ各自動車メーカー、さらには多くのバッテリー専業メーカーが最優先にてこの技術の実用化に取り組んでいるものの、いまだ実用化がなされていないのが現状です。

EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及
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サムスンが先陣を切ってソリッドステートバッテリーを実用化?

そこで今回報じられているのが「サムスンがEV用のソリッドステートバッテリーを発表した」というニュース。

サムスンは韓国ソウルにて開催されたSNEバッテリーデイ 2024 Expoにてこのバッテリー技術を披露したとされ、サムスンによれば「軽量化や、より安定した熱バランスによる安全性の向上など、このタイプの電池に関連するすべての利点がある」。

そして特筆すべきは、このサムスンの固体電池技術のエネルギー密度が1キログラムあたり約500ワット時だということで、これは今日のほとんどのEVに搭載されているバッテリーのエネルギー密度のほぼ2倍。

したがって、これが実用化されれば、1回の充電あたり約1,000kmの走行も「夢ではなくなる」わけですね。

サムスンのソリッドステートバッテリーはレクサスに搭載されると言われるが

実際のところ、サムスンは現在トヨタと協力して、将来のEVに固体電池技術を組み込もうとしており、トヨタとサムスンは「2027年にSS電池の量産を開始すること」に合意しているとも報じられ、レクサスのニューモデルがこの新しい技術の恩恵を受ける最初のクルマの1つになると見られています。

ただ、仮にこれが実用化できたとしても落とし穴がいくつか存在し、まずひとつは「充電インフラ」。

ソリッドステートバッテリーの「大容量」を満たすための充電施設が現時点ではほぼ存在せず、ソリッドステートバッテリーの(急速充電が可能という)メリットを最大限に活かすならば480kW、時には600kWの充電器が絶対に必要になるとされ、しかしこの速度を出せる急速充電器は(EV先進国である)中国にすらほとんどないのだそう。

よって、仮にソリッドステートバッテリーが車両に組み込まれ販売されたとしても、「満足に充電できず、長い時間(充電が完了するまで)待たねばならない」ことにもなりかねません。※かといって、全固体電池の普及をにらみ、先行投資にて高速充電器の設置が加速されるとも思えない

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そしてもうひとつの落とし穴が「コスト」の問題で、固体EVバッテリーの製造コストは、現在のEVに搭載されているリチウムイオンおよびLFPバッテリーよりもはるかに高く、具体的には約3〜4倍。

よって普及価格帯のEVにはとうてい搭載できず、おそらくそれが(トヨタが)トヨタではなくレクサスに最初に固体バッテリーを導入することを計画している理由なのだとも思われます。

つまり現時点では、全固体電池を活かせるインフラがなく、充電に時間がかかり、よって短い充電時間だと既存バッテリーと同様の走行距離しか実現できず、かつバッテリー単体でのコストが現在のバッテリーの3~4倍ということになり、よってソリッドステートバッテリーは上にあげた現在のEVの課題である「車両価格の高さ」「航続距離の短さ」「充電インフラの貧弱さ」を解決できず、結果的にはいま考えられているような”救世主”とはなりえないのかもしれませんね。

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参照:Notebook Check, PC Mag

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