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なぜ自動車メーカーはニュルブルクリンクを目指すのか?「グリーンヘル=緑の地獄」で新型車を鍛え上げ、記録に挑戦する真の理由とは

ランボルギーニ・テメラリオのエンブレム
Life in the FAST LANE.

| いくつかの自動車メーカーは自前のテストコースがあるのに、なぜわざわざ「緑の地獄」へ向かうのか? |

ニュルブルクリンクには「ほかでは再現できない」いくつかの特徴を持っている

世界中の自動車メーカーは、自社で莫大な費用を投じて広大な秘密のテストコースを所有しています。

たとえばフォードはベルギーに「ロンメル・プルービング・グラウンド」を構え、トヨタはアメリカのアリゾナの砂漠の真ん中に巨大な試験場を持っています(愛知県の下山にもニュルブルクリンクの縮小版というべきサーキットを持っている)。

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それにもかかわらず、各自動車メーカーたちはサイケデリックなカモフラージュ柄のラップに身を包んだ開発車両(プロトタイプ)を積載車に載せ、ドイツの深い森の奥深くへと向かうという習慣を続けており、もちろん目指す場所は「ニュルブルクリンク」。

1968年に名ドライバーのジャッキー・スチュワートが「グリーン・ヘル(緑の地獄)」と名付けた、一般一般の人々も走れる世界屈指の超難関パブリックコースです。

クルマ好きなら誰もがその名を知る聖地ではありますが、「なぜ自社のプライベートコースだけでテストを完結させず、わざわざニュルで走らせる必要があるのか?」と考えてしまうのもまた事実。

その裏側には、理にかなったエンジニアリング上のロジックと強力なマーケティング戦略が隠されており、ここでその内容を見てみましょう。

ポルシェ911GT3のセンターロックY字スポークホイール
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この記事の要約

  • 独自のテストコースを持つ自動車メーカーがあえてニュルに試作車を持ち込む理由を考察
  • 超高低差300m・73のコーナーが世界中のあらゆる公道環境を1周で再現する
  • 「最速ラップタイム」の称号は売上に直結する最強のマーケティング武器になる
  • 開発コストの削減だけでなくEVの熱管理や新型サスペンションの弱点を炙り出す究極の実験場
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ニュルブルクリンクが「究極の試験場」として選ばれる3つの決定的な理由

自動車メーカーがニュルブルクリンク、特に北コース(ノルドシュライフェ:1周約20.8km)に執着する理由は、大きく分けて3つあり・・・。

1. 世界一過酷なレイアウトが「世界中の公道を1周で再現」する

砂漠での酷暑テストや北極圏での極寒テストは、気候の極限状態を知るためには有効です。しかし、クルマの「走る・曲がる・止まる」という動的性能を極限まで追い込むには、ニュルブルクリンクの右に出る場所がない、というのが実情です。

ニュルにはなんと73ものコーナー、アクセル全開が続く超ロングストレート、そして約300メートルもの高低差が1周の中に凝縮されていて、この高低差はニューヨークのクライスラービルの高さ、そして東京スカイツリーの半分にも匹敵し、世界の主要なプロ用レーシングコースの中で最も激しいアップダウンという事実が存在します。

ポルシェ タイカン ターボGT「マンタイキット」装着状態〜フロント(ブルー、走行)

Image:Porsche

2. 事実上の「共通ものさし」が生むマーケティング効果

ニュルブルクリンクでの「量産車最速ラップ記録」のニュースは、今や新型スポーツカーがデビューする際の定番となっていて、なぜニュルなのかと言えば、ここが「あらゆるメーカーが同じ条件で比較できる、共有のサーキットだから」、つまりスポーツカーの性能を測るモノサシとして機能しているから。

自社の秘密コースで「我が社のクルマは他のメーカーのクルマよりも速いです」と主張しても誰も信じませんが、ニュルで「〇分〇秒」という客観的な数字を出せば、それは世界共通の強烈なブランドの証明となり、このマーケティングにおけるハロー効果(後光効果)は日常の街乗り領域を遥かに超えた説得力を持つというわけですね。

よって、ポルシェやアウディは「新型車の発売前」にニュルブルクリンクでの「記録達成」を公表するケースが多く見られ、そして競合他社よりも自社のクルマが優れていると証明する場合にもニュルブルクリンクは「客観的な指標」として用いられることが通例となっています(近年だとマスタングとコルベットとの争い)。

シボレー・コルベット(C8)のエクステリア (イエロー、静止、ブレーキキャリパー)
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加えて、シャオミなど新興自動車メーカーがその技術力を示し、「老舗自動車メーカーに劣らない」ことをアピールしてセールスを有利に運ぶためにも使用されるケースが少なくはなく、「ニュルで何分何秒」「ニュルでライバルよりも速く走った」という事実は非常に大きな説得力を持っています。

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3. 車両の「耐久性」の弱点を一瞬で炙り出す

ニュルを1周走ることは、一般的な公道を数万キロ走ることに匹敵する負荷が車にかかると言われています。

エンジニアたちは、この過酷な環境をホリスティック(全体論的)に評価の場として活用していて、このコースを無事に走り切ることができたならば、「世界中の他のどんな環境でも通用しうる」という一般的かつ自動車業界的な認識も存在します。

ニュルブルクリンクのコース概要と過酷な環境

ニュルブルクリンク(北コース)がどれほど規格外のコースなのか、その概要を表にまとめると以下の通り。

項目スペック・詳細
全長(ノルドシュライフェ)12.943マイル(約20.8km)※GPコース合流時は約25km
コーナー数73(左コーナー:33 / 右コーナー:40)
高低差約300メートル
最大上り勾配18%(100m進むごとに18m高くなる激坂)
最大下り勾配11%(100m進むごとに11m低くなる激坂)
主なテスト目的サスペンション減衰力、ブレーキフェード、EVではバッテリーの熱管理、ボディ剛性
参加メーカー数常時40社以上の自動車関連企業が共同利用(インダストリープール)

現代の自動車開発におけるニュルの「真の費用対効果」

ここで一つの新しい知識(知見)を共有してみると、現代の自動車開発において、ニュルでのテストは「開発コストの削減」にも直結しています。

例えば、18%の上り坂を駆け上がる時、トランスミッションは悲鳴を上げ、冷却システムは限界まで働くことになりますが、逆に11%の急勾配を下りながらコーナリングする瞬間、ブレーキは一気に熱を持ち(ブレーキフェード現象)、最新の電気自動車(EV)であればバッテリーの熱管理システムが試されます。

これらを別々の試験場で個別に検証しようとすると、莫大な時間と渡航費、そして開発費用が飛んでゆくこととなり、しかしニュルブルクリンクならば「たった1周(約8分前後)走るだけ」で、足回り、パワートレイン、空力、冷却、電子制御のすべてに同時に限界負荷をかけることができるというわけですね。

40社以上の自動車メーカーがライバル関係を超え、このコースのテスト枠(インダストリープール)を共同でシェアし、お互いに枠を融通し合っているのは「これが最も効率的に弱点を プリプロダクション(量産前)の段階で修正できる、世界最高のコスパを持つ実験場」だからに他なりません。

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歴史と悲劇、そして「誰もが走れる公道」というユニークな一面

1927年に開場したニュルブルクリンクは数々の栄光と悲劇の舞台となってきたことでも知られていて、1976年にはニキ・ラウダの九死に一生を得る大クラッシュが発生し、これがノルドシュライフェでの最後のF1開催となっているのですが、最近でもレース中にドライバーのユハ・ミエッティネン選手が命を落とすなど、その危険性は現代でも変わっていません。

しかし、このコースの最も面白いところは、メーカーがテストを行うスリリングな聖地でありながら、「一般人も自分の愛車で走れる」という点です。

悪天候やレースの貸切日を除けば、暖かい季節のほぼ毎日、数時間は「ツーリスト・ドライブ(観光走行)」として一般に開放されていて、ドイツの道路交通法に適合し、最高速度が130km/h以上出るナンバー付き車両であれば、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのような量産車から、ミニバン、果ては観光バスまで、チケットを買えば誰でもメーカーの開発車両と同じコースを体験できるわけですね。

敷地内には、オフロードパーク、コンサート会場、ボウリング場、カート場、さらには結婚式場までもが併設されており、クルマ好きでなくても楽しめる巨大なエンターテインメント施設へと進化を遂げていて、今やファミリーやカップルで訪れる例も少なくはない、と言われています。

結論:ニュルブルクリンクは、自動車の未来を磨く「試験場」である

自動車メーカーがニュルブルクリンクに挑み続けるのは「スピードへの憧れ」や、派手なプロモーションのためだけではありません。

ここで鍛えられたサスペンションのセッティングや、熱に負けないブレーキ、へこたれないバッテリー技術は、巡り巡ってぼくらが普段乗るファミリーカーやSUVの「安全性」や「快適性」として、静かにしかし確実に還元されています。

次に新型車のプロトタイプのスパイショットを見たとき、あるいはニュルのタイムアタックのニュースを耳にしたときは、ぜひ思い出すといいのかもしれません。彼らはそこで、ぼくらが乗る未来のクルマの命を磨いているのだということを。

テスラのベアシャーシ
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参照:Jalopnik

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