| ある意味、ステランティスのCEO就任は「罰ゲーム」のようなものである |
現在のステランティスを立ち直らせることは非常に難しく、いったん「リセット」するよりほかはないのかも
さて、ステランティスの「初代かつ唯一の」CEO、カルロス・タバレス氏が昨日辞任したと発表。
(FCA=フィアット・クライスラーとPSA=プジョー・シトロエンが合併して誕生した)自動車業界の複合企業、そして世界第4位の自動車メーカーであるステランティスは昨今報じられる通りに厳しい状況にあるものの、この発表は依然として衝撃的です。
わずか2ヶ月前に発行された公式プレスリリースでは「カルロス・タバレスCEOが2026年初頭に5年契約を終了する」と述べられていたため、あと1年ちょっとの猶予があり、しかし「突如」として66歳のタバレス氏は即日辞任を決意したということに。
なお、ステランティスは「後任者の選定プロセスはすでに”順調に進んでいる”と発表しており、つまりはある程度同氏の辞任を把握していたということになりそうですが、2025年上半期に後任が発表されるまで、同社は(フィアット創業者一族の)ジョン・エルカン氏を委員長とする新しい臨時経営委員会を設置することとなるのだそう。※ジョン・エルカン氏は、ステランティスの会長兼執行役員、フェラーリの会長も務めている
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ステランティスとカルロス・タバレスCEOとの関係性は「良くはない」
カルロス・タバレス氏は最近、ステランティス内での問題を指摘することが多く、批判的な姿勢を見せており、とくにマセラティの販売不振の原因を劣悪なマーケティングと断じたことも。
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また、過剰在庫問題も抱えており、生産と需要の調整を通じてこの問題を解決しようとしていますが、実際に2024年には、多くのモデルが需要の低迷により生産停止が発表され、影響を受けたのは、フィアット500eのような小型車から、ダッジ・デュランゴのような大型車まで幅広く、マセラティ・グラントゥーリズモ/グランカブリオ、ジープ・グランドチェロキー、フィアット・パンダも含まれています。
アメリカでは、ジープの売上が年初から第3四半期までに8%減少し、ラムとダッジは24%、クライスラーは21%も落ち込み、アルファロメオもトナーレの発売があったにもかかわらず、10%の減少という状況に。
こういった状況を受け、今年9月、米国ステランティス全国ディーラー協議会はカルロス・タバレス氏に対し、ジープ、ラム、ダッジ、クライスラーの「急速な衰退」を非難する公開書簡を送付し、そこでは「市場「シェアの半減、株価の急落、工場閉鎖と解雇、投資家やサプライヤーによる訴訟」などに関し、同氏の責任を追求する内容となっています。
そして辞任の数週間前、カルロス・タバレス氏は、厳しい状況にあるブランドは絶滅から自力で立ち直るために数年が必要であること、あるいは売却も検討する必要があるとも述べ、傘下の14ブランドに対しては厳しいプレッシャーをかけたであろうことは想像に難くなく、これによるものかどうかは不明ではあるものの、サント・フィチリ氏がマセラティとアルファロメオのCEOに任命され、それまでCEOを努めていたダビデ・グラッソ氏とジャン=フィリップ・アンパラトゥ氏がそれぞれ退任し、ジャン=フィリップ・アンパラトゥ氏については、ヨーロッパ地域の最高執行責任者(COO)およびステランティスの商業部門であるプロ・ワンのCEOに任命されています。
現時点では新しいステランティスのCEOに誰が選任されるのかはわかりませんが、問題山積な企業であるだけに、この立て直しを引き受けようという人物はなかなか出てこないかもしれませんね。
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